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2006年5月 2日 (火)

剣と刀の話

コンピュータゲームに慣れ親しんだ僕たちが「武器」と言われて一番最初に思い浮かべるものは何だろう。昔からのコアなゲームファンであれば、瞬間的に「武器=WEAPON=ムラマサ」という三段論法が成立してしまうかもしれないが、ドラクエやゼルダでRPGの洗礼を受けた多くの人たちにとって、武器=剣なのではないだろうか。

だが実のところ西洋ファンタジーにおける「剣(ソード)」の現物を目にする機会はほとんどない。テレビの時代劇を例に挙げるまでもなく、ロードオブザリングが登場するまでの長い間、劇中で刀ではない、剣がフィーチャーされる時代背景、世界観というのは非常に狭く小さなパイだった。
※正直僕の記憶では「ウィロー」でマドマーティガンが流麗な剣さばきを見せたことくらいしかない。ネバーエンディングストーリーのアトレーユは剣を持っていたっけ?ダーククリスタルでは剣よりマペットの印象の方が強いよね?

SFでもほとんどの武器は当たり前のように銃だった。まぁ実際には鮮烈な印象で僕らの前に姿を現したスターウォーズ(もしくはその影響大のガンダム)においてのライトセーバーがあるからそうは思わないかもしれないが、それはあくまで特別な存在で、「銃に勝る剣」という設定はまさに発明と呼べる着眼だったのだ。
※もしもSWがなかったら、剣の存在意義そのものが根底から揺らぎ、ことによったらその後D&Dに育てられたファンタジーの歴史そのものにも大きな影響を及ぼしたのではないかとすら思う。

僕の曖昧な知識では、日本刀は斬るための武器だが、西洋刀=剣は主に殴るための武器だと聞いたことがある。刺すためならばフェンシングで使われるようなレイピアが童話時代からもポピュラーであるし、ナイフも「刺す」ための武器だとマンガでも何度か取り上げられている。要するに剣は「刃」を鍛え上げた武器ではない。しかしどのような劇中であれ、剣は気持ちよく敵を切り裂いている。実はここにファンタジーの妙味があると僕は思う。

結局のところ、モンスターハンターに使われているような大きな剣や幅の広い片手剣全般で

 敵が斬れるわけがない

のだ。しかしゲームの中ではことによると真っ二つにするがごとくの切れ味をみせる。これはつまり「斬れそうな武器」であることより「気持ちよく斬れる結果」が非常に重要で、結果さえ充足していれば見た目は派手な方が良い、という論法が成立しているように思う。

そうしたとき、日本刀の鋭利ではあるが個性を打ち出しにくい見た目は

 ゲームには不向き

ということになる。だってホントに斬れる必要はないんだもの。データさえ整っていれば事実は無意味なんだもの。

そうして僕たちは「銅の剣」や「鉄のやり」、「マスターソード」を手に馴染ませてきた。「ドラゴンスレイヤー」という名前であれば、その剣はドラゴンに対して有効でなくてはならない。「エクスカリバー」という名前であれば、その剣はもはや素晴らしく強くて然るべきだ。

先日行ったラグナシアという遊園地の中で、ロトの剣ばりの西洋刀のフェイクがディスプレイしてあった。宝石をあつらえた握り手、左右対称の刃、まっすぐに伸びたそのシルエットは確かにゲームで僕らが使うそれに酷似していた。

 でも全く斬れそうじゃない

むしろ100円均一で売っているような「これ以上ない安物」の包丁の方がずっと斬れそうである。
でも僕はその剣をかっこいいと思った。握って振り回してみたいと思った。日本刀を振り回したいとかワラ人形を一刀両断にしたいと思ったことはない。僕の中で、剣は既に刀にあらず。心のふるさとは戦国時代ではなく、アレフガルドなのだ。

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コメント

剣や刀の話は結構好きなBlueTasuです。こんばんわ。

そうですね、西洋というのは日本よりずっと防具が発達している国ですから、剣は「斬る」ではなく、「力任せにぶっ叩いて斬る」ということに主眼がおかれているんですね。
だから剣は頑丈でなければいけなかった。
モンハンの大剣のように、あんな幅の広い剣も実在してるんですよ。
ただどうしても重くなるので、剣身の中央に溝を入れるデザインが多かったのです。
だから天空の剣やドラゴンキラーの形状も、現実にあったんでしょうね。

中世の後期になるとますます鎧が発達しちゃったので、隙間を突く、剣先が細い、つまりレイピアが主流になったそうです。
同時に後期では、戦棍、戦斧なんかも使われるようになってますね。

ちなみに中世における騎士の戦い方ですが、まずランスで突撃をかまし、それでも相手が落馬しなければ長剣で斬りあい、落馬させたら短剣で顔や喉を切ってトドメを刺したそうです。
斬る、という用途で剣を使われているのは、短剣くらいで、斬ることだけの機能を持った曲刀、サーベルが登場するのは中世でも16世紀以降。
これはもう中世とは呼べないですね。

……やばい、すごい勢いで話がずれていく。

えと、つまり私が言いたかったことは……。
聞いた話では、中世の剣とはつまり、「叩き斬る」ためのものだということです。
クリスさんは片手剣や両手剣は「斬れるわけがない」と仰ってますが、「叩き斬る」ことはできそうですか?

叩き斬る=勢い良く斬る

と辞書ではあります。
つまり中世の剣の切れ味とは、いかに人間の筋力を剣にのせやすくするか、ということに主眼がおかれているのではないかと、私は推測するのですが……。

モンハンでは、ランスに「叩き」属性と「斬」属性の両方が備わっていて、尻尾を「斬ったり」、ヤオザミの甲羅を「叩き割ったり」することができます。
で、大剣は「斬」属性しかないのです。
片手剣はともかく、大剣も両属性があるべきだ!
と思うのですが、どうでしょうかね?

投稿: BlueTasu | 2006年5月 2日 (火) 15時04分

非常に短いレスで恐縮ですが、大変面白く読ませて頂きました。確かに大剣には叩き属性があってもいいですね。ランスはイメージとしてアイアンランスのような「とがった円錐」型が浮かびやすいですが、ランス=ヤリですからね、実際は「なぎなた」のように棒の先に剣がついたものもニュアンスとして含まれたのではないでしょうか。それによって「斬属性」も加味していったのではないかなぁと。でも見た目だけなら、どう見ても「突き」専門ですよね?

自分が西洋の剣に切れ味がない、と感じたのは、昔見た真田広之の映画の中で、凄くマッチョな敵役の男が、ガンガンと自分に剣を当て、「どうだ斬れないだろう!」とすごむシーンがあったのです。でもその直後に日本刀で一刀両断にされてしまう。

 ああ、西洋刀は斬れが悪いんだな

とね。それとギロチンってあるじゃないですか。あれもかなり高所から落としますよね?あれってきっと「重みと加速度がなければ斬れない」からだと思うんですよね。要するに「刃」の部分の技術に難があるというか、、、。でもアーミーナイフみたいな「斬る」というより「切る」属性の武器に関してはしっかり系譜があって切れ味もある印象ですから、一概に西洋での刀がみな斬れないということはないんでしょうね。

まぁテレビで「本当に斬れそうな西洋刀」を一度も見たことがないってのもポイントかも知れません(笑。でもって本物の日本刀で「切れ味が悪そう」に見えたものもないですね。ナイフは西洋にもあるけど、刀は日本の文化。剣は西洋の文化だけど、武器としての決定打はむしろ弓や投石の方がアイデンティティがあったんじゃないかなぁ。あとヤリとか。

投稿: クリス | 2006年5月 2日 (火) 22時15分

クリスさんが忙しいとわかりつつも、レスしてしまうBlueTasuです、こんばんわ。

>槍
槍は、「先端に硬く鋭いものがついた棒状の武器」 のことを全て槍と呼んでました。
でも穂先に刃をつけて、切れるようにした槍も世界に広く見られますね。
だからモンハンでも斬、叩属性があっても問題はないです。
西洋では、幅のある刃を備えた「グレイヴ」や、先端が鉤状になっていて、相手を引っ掛けることができる、「ビル」という槍もあります。

>日本刀
日本人の刀に対する愛着が育んだ、わが国独特の文化とも言えます。
ここまで刀剣に愛着を示す部族は、世界にもほとんど類を見ません。
で、話によくでる村正ですが、何故妖刀と呼ばれるに至ったか、知ってますか?
知っていればスルーしてください、面倒な話なので(^^;)
よろしいでしょうか?

村正は室町時代に、正宗の弟子でしたが、破門されてしまいました。
でも村正は伊勢で多くの刀剣を造りました。
で、時代はちょっと過ぎて、徳川家康の祖父が家康の勘違いから切り殺されてしまう事件が起こります。
このとき、祖父の命を奪った刀が、村正でした。
さらに、家康の父が暗殺されかけたことがあるのですが、その下手人が持っていた刀が村正なのです。
こういう事件があったので、村正は 「徳川家禁忌の刀」 として持つことを禁じられたそうです。
これが妖刀・村正と言われるきっかけで、私などに言わせれば、偶然じゃん! と思うのですが……。
余談ですが、幕末に討幕派の浪士がこぞって村正を欲しがったそうな。

……ほんと、どうでもいい話ですね。

>ギロチン
これはクリスさんのご指摘通り、実際切れ味がかなり悪かったそうです。
でもギロチンが死刑執行具として使われだしたのは16世紀中ごろの、ハリファックス断頭台 が最初だったと思います。
だから中世とは関係ないんですけどね。
ちなみにハリファックス断頭台は、元々犯罪抑止用に建てられたのが最初です。
だから、無駄に大きいのは人心を威圧するためでもあったといえます。
実際にこれで死刑は行われているんですけどね。
詳しく知りたければハリファックス断頭台でググってくださいな。

>弓
弓が戦争の決定打となったのは間違いなく、クリスさんの仰る通りです。
投石器は色々ありますが、やはり攻城戦で威力を発揮したという点では同様です。

特に弓の中でも、石弓は中世ヨーロッパで産まれ、中世初期のイタリア (だったと思う) の発明品です。
巻き上げ装置にクォレルと呼ばれる矢をセットし、引き金を引くだけで撃つことができる、モンハンのボウガンの原型はこれですね。
巻き上げ式なので破壊力抜群で、騎士が装備するプレートメイルですら貫いたと言われてます。
あまりの破壊力に、これは 「キリスト教徒が使うには残酷すぎる武器だ」 とローマ法王が使用を禁止したこともあるほどだそうです。
でも十字軍遠征のとき、サラセン軍相手に 「異教徒狩り」 と称して 「キリスト教徒が使うには残酷すぎる武器」 を使用してかなりの血を流したし、100年戦争のときは、フランス軍の石弓 vs イギリス軍のロングボウ部隊 の争いでもありました。
実は騎士って名前の華々しさとは裏腹に、戦争では足手まといだったんですよね……。
一騎打ちが主流ですので集団戦だとからっきしだし。

……うわ、思いっきり無駄知識満載のレスになっちゃった。
剣と刀の話からかなーり逸れてしまった。
消すには忍びないし、これっきりにしますのでご容赦を……。

投稿: BlueTasu | 2006年5月 2日 (火) 23時38分

ばんわです。ホントレスが短くなって申し訳ない。つか「長文失礼」ならぬ「短文失礼」ですね(^^)。

>引っかけることができる、「ビル」

これは存じ上げませんでした。ゲーム中で攻撃力のありそうな、武器としての使い方がしづらく、かといって「フック」としての用途であればゼルダのフックショット
※源流はヒットラーの復活=トップシークレットでしょうか。
の方が既に広く認知されてしまったからでしょうね。でも棒の先に「鎌」が付いてるような武器なら、実際の攻撃力は結構、、、あ、でもやっぱそれなら諸刃にして突き刺すことも可能にした方がより多用途に使えていいのかな。

>ムラマサの話

へ~って話ですねぇ。勉強になりました。僕はなんか別のルーツを遙か昔に記憶したような気がしますが、どちらかと言えばそれはオカルティックなモノだった気がします。もしかしたら諸説あるのかもしれませんね。

>ギロチンや弓の推測

なんか適当に書いたのが当たってると言われると嬉しいモノですね(^^)。石弓の実物を見たことはありませんが、イメージだけでもかなり痛そう(^^;)。銃より作るのは容易そうですが、あまり僕ら日本人の中に認知されていないのは、何か問題があったんでしょうかね。残忍であるということだけで言うなら、銃だってそうですし、意外と精度が低いとか石弓が作られてから銃が発明されるまでの期間が短かったのかも・・・。


>無駄知識満載

これは全然OKですヨ。でもついて行けない話題だとどうしてもレスが物足りなくなっちゃうかも(^^;)。

投稿: クリス | 2006年5月 3日 (水) 21時41分

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