内観の話
出張の夜ホテルの棚を見るとなんだかよくわからない本が数冊並んでいる。いつもなら気にもとめないのだが、「興味がおありの方にはフロントでカセットも貸し出しております」との貼り紙に惹かれ、思わずページをめくってみる。文字ばかりの本を読む、それもエロでもファンタジーでもない本を読むのは何とも久しぶりな気がする。
その本は要は自己啓発のたぐいで、「内観」という一種のメンタルケアについてのものだった。うろ覚えだがかいつまんで書くとこんな感じだ。
※全部読んだワケじゃないので僕が曲解している可能性も高い。ご了承を。
世俗から遮断された自分一人仕切られた空間で、ある時ある相手との関係を思い返す。最初は小学校3年生の頃、母親がしてくれたこと、母親にしてあげたこと、迷惑を掛けたことを掘り返していく。1、2時間集中してそのことばかりを考えていると、すっかり忘れ去っていたことが徐々に出てくる。
時折先生がその話を聞きに来てくれて、次は4年生、5年生、中学、高校といろんな時のいろんな相手を思い返す。一面では聞いてくれる人がいるということが思い出す気持ちを後押しすることとなり、起床から就寝まで数日間規則正しい生活をしながらただ自分と向き合うことだけに集中すると、今まで考えもしなかった視点を見つけたり、人と接する態度に大きな影響が出たりするらしい。
おもむろに自分が思い返してみようとしたけど、正直短時間で雑音と雑念の多い今の環境では、それほど深いところまでは見えてこなかった。
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この訓練は特に人間関係にトラブルを起こしがちな営業の方や、中間管理職の方に効果的な感じがする一方で、短時間で掘り起こされた記憶には短期間の効果しか得られないのではないかという懸念もある。また、人間は忘れてしまう生き物。思い返しておくべき大切な心と同時に、忘れたい過去までが発掘されることも少なくないのではないかとも思う。
しかし、
一部の例外を除いて、人はみな同じ速度で歳をとっていく。誰しもが親に飯を食わせてもらい、誰しもが一人で立てるようになり、誰かを支え誰かに支えられている。それだけの高い密度で送る人生は第三者から理解されうるはずはない。が、自分で自分を理解することはきっと可能なんだと思う。覚えておかなきゃならないこと、忘れたいこと、今できること、、、
曲解を恐れず、僕の嫌いな2ちゃん用語でこの本を端的に顕すとするなら、
「まぁ餅つけ」
というところなんだろうな。
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