アニメブーム
先日早朝から日本沈没を見てふと思い返した。
「こんな時間に映画見たことってあったっけ・・・」
7時台に映画館に足を運ぶためには隣町へ始発の電車に乗らなければならない。友達数人と待ち合わせをし、まだ暗い駅に遠足なみの準備をして集まる。999やヤマトから火が点いた空前のアニメブームは、ガンダムのみならず、ドラえもん、風の谷のナウシカ、幻魔大戦など数々のヒット作を生み出した。今日はそんな映画にまつわる思い出話をしてみたいと思う。
●ルパン三世 カリオストロの城
親戚のお兄さんに連れられて広小路通りから小さな路地へ入ると、薄暗く狭い入り口があり、最初「これが映画館なの?」って思った。狭いのは入り口だけじゃなく、暗く細い階段を下りた先の館内も教室に毛が生えたような程度しかない。スクリーンもウサギの額ほどの小さなサイズの映画館でカリオストロは上映されていた。入り口に貼ってあったポスターは有名なクラリスを抱えたルパン。パンフレットといくつかのお菓子しか置いてないカウンターを抜け扉を開くと、そこに見えたのは、
人の壁
スクリーンに対してコの字型に立ち見で埋め尽くされた客席。場面は丁度タイトルが表示される頃だったと思う。凄い熱気。凄い人。時間は夕方だったと思う。お客さんの中には子供の姿は見えず、ただただ大人たちに埋もれるような空気の中で最高の作品に夢中になった。それまで見ていた長靴をはいた猫の東映マンガまつり、ゴジラの東宝マンガまつりとは全く違う「子供心に子供だましじゃない面白さ」に心から魅せられた。
僕はその後も文化会館や公民館などで催事的に上映されるたびにカリオストロを見に行き、都合4回くらい見たような気がする。最後なんて朝から入って夜まで3回くらいずっと見てた気がする。
初めてそれがテレビで放映された時のことも良く覚えている。当時は当然のようにビデオもなく、ライン入力でつなげる端子もなく、イヤホンをマイクにつなげる発想もなく、ただただ単純にラジカセをテレビに近づけ、息を殺し、インコや掛け時計の音と一緒に録音した。途中思わず笑ってしまう場面ではマイクがそれを拾ってしまって自己嫌悪になったり、何度も何度も繰り返し聞いていたから一言一句セリフを覚えてしまったり。
※後に友人とそのカセットを聞いた際、友人もほぼ全て覚えていて二人で一緒にセリフを言いまくったのもいい思い出。
カリオストロはヒーローロボットやギャグじゃないアニメの原体験であり、魂を奪われるに足る傑作だったと今でも思う。
余談だけどこの作品ほど細かなディティールまで愛されまくった作品はそうないと思うよね。もう30年も前の作品なのに、何度も何度もすっごくたくさんの人に見てもらって、関連商品が今でもリリースされるんだもの。相応に力の入った作画だったとは思うけど、CGとかコンピュータとかじゃない手作りの職人技は、たかがアニメでも歴史に名を刻むことが出来るって思うな。大塚康雄さんも何かで書いてたよ。こんなに長く愛され続ける作品を作ることが出来たことの幸せについて。
●うる星やつら オンリーユー
当時隣町の豊橋西武デパートの6階にある映画館で上映されたこの作品は、マンガから入ってテレビシリーズも大好きだった僕は「行かなきゃ死ぬ」くらいハイレベルな訴求力を持っていた。さすがに公開初日は学校があるから行けないまでもそのすぐ翌日日曜は当然のように始発でGO!デパート自体はまだ開店して無くて、脇にある階段を映画館まで上っていくのだけれど、いざ当日そこへ向かうと、、、
既に建物の外に人がいる!
狭い階段だからそれほどの人数がいたとは思わないけど、ずっと数珠繋ぎになった行列がぐるぐると回るように1階近くまで伸びていて、今や遅しと開演を待つ人の熱気に包まれていた。
ただ、作品自体は正直普通で(^^;、むしろ押井守作品である2作目の方が見る前の気合いからして全然格上だったのだが、その時は案外誰も外に並んでいなかったりして結構微妙なもんだなぁと思った記憶もあったりするんだな。
●ザブングルグラフィティ
作品の持つ力と当時の流行に押された流れとのバランスが最も「取れていなかった」と感じた作品。前売り券の予約で貰える銀メッキ加工されたトラッド11や同時上映のSDダグラムは確かにプラモっ子の僕には凄く訴求したし、ガンダムの勢い覚めやらぬサンライズ作品ということもあって初速の速さは絶大だったにも関わらず、上映された映画館ではカリオストロの時に使われたところに比肩するほどの小さなトコロ。それがどんな事態を引き起こしたかというと、、、
始発で行ったにもかかわらず、既に1回目の上映が始まっていてなおかつ入り口から人があふれてる!
これをゆゆしき事態と呼ばずしてなんとするというほどの熱量。つか映画自体はご存じの方も多いと思うけど、そう大したことはなかったね。まぁMIOが歌う映画オンリーの主題歌「GET IT」は良かったけどね。
●幻魔大戦
大友克洋が誰なのか、角川のアニメというのがどの程度のものなのか、江守徹の名前も知らない僕だったけど、作品は本当に素晴らしかった。説得力のある原画に最高クラスのカラーコーディネイトされた彩色。僕はアニメは結構「色」が重要だと思っていて、いくら絵が上手くても色のバランスが今ひとつだとイマイチ乗り切れなかったりするのだけど、とにかく幻魔大戦の色味は本当に最高で、見ていて凄く安心出来るクオリティに統一されていた。
映画館は中堅所で上映されたのだけど、とにかくその頃になるとグッズもかなりいろんなものがリリースされていて、欲しい物を手に入れる為にそこはもはや戦場と呼べるような状況だったのも覚えてる。2階席から売店に顔を出すと人の渦が階下に渦巻いていて、「こりゃぁ死人が出るな」などとうそぶいたり。
ただ、結局パンフしか買えず、後日どうしても欲しくてでも売り切れで買えなかったベガの下敷きを持ってた友達が凄くすご~く!羨ましかったのを覚えてる。みんなも覚えてない?横たわるベガの下敷き・・・。って誰に言ってるの?僕は。
●クラッシャージョウ
先ほど少しだけ色の話をしたけど、とにかく僕は安彦良和先生の色遣いが大好きで、ポスターは言うに及ばずちょっとしたカット一つとってもカラーが添えてある物にはついついウットリしてしまう。
色彩感覚というのは天性のものだと僕は思う。カラーコーディネイターとかソレ系の専門学校なんかもきっとあると思うし、誰でもわかりやすくオーソドックスな組み合わせならば毎日おしゃれして出かける女の子なら誰でも意識してかつ実践出来ているとも思う。
しかし、アニメ、それも長編のものを作る上では、一つだけ素晴らしい組み合わせで一枚の絵を作り上げればいいわけじゃない。物語の骨子に沿った色調の展開はドラマ的にも絵的にもメリハリが求められる。僕個人の印象かもしれないが、カリオストロにしてもトトロにしてもイメージカラーというのがどうしても出てくる。前者ならポスターやルパンのジャケットの青色。後者ならトトロや自然を喚起するナチュラルカラーだ。
しかし安彦先生の作画する作品の多くは、そのカラーに偏りがない。中間色を絶妙に使ったカットは一枚の絵としても十分成立しつつ作品全体でも多彩さを失わない。
ジョウはそんな先生の力量が初監督作品としていかんなく発揮された名作。前編通して音楽もいいし、当時は「これ以上のオリジナル作品はない!」と一人で熱くなってた記憶があるな。
ちなみに今見るとメリハリはあるんだけど個々のカットが少し増長に感じてしまって、古くささを禁じ得ない作品に見えてしまったりします。これは僕を含めた時代の流れってやつなので、いかんともしがたいところですね。
●機動戦士ガンダム
上映が始まるまでは売店に入れない、その上通路まで人が埋め尽くし、周囲は立ち見で階段すら座ってみてる人でいっぱいになって、パンフ買う為に僕は2階席から飛び降りて売店に行った記憶があったりするほどの強烈な作品。つか今ガンダムが盛り上がってると思ってる方の多くは、既にファースト世代ではないのかも知れないけど、本当に「めぐりあい宇宙」が公開されたときの盛り上がりは常軌を逸していた。大体朝からぎゅうぎゅう詰めで当然のように公開時間が早まってかつ上映回数も増やしているにも関わらず、全然人が減らない。そりゃそうだ僕だって2回通り見た。
※念のため注釈すると、当時は別に指定席というのがなく、見ていたければ丸一日見てることも出来たりしたわけです。
ポスターなんかは始発で行っても売り切れてるような感覚だったし、
※正確には「ポスター売り場が見えなかった」ので確認出来なかったけど、上映が始まってから買いに行ったら当然のように欲しかった大河原邦男先生のポスターはなかった。
ちなみにポスターはやっぱりメカが描かれた物が自分的にマストアイテムで、それまで一度も貼ったことがなかったのに、ガンダムだけはペタペタと貼ってた記憶がある。
←つかネットってスゲェね。ヤフオクでお気に入りだった1枚が出品されてたよ。2500円で1入札入ってた。これホントかっこよくて好きだったんだよなぁ。二作目の時に前売りで貰えたヤツだね。
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ブームってのはホントいろんなところで現れては消えていってるから、きっと僕が知らないところでもすっごく熱かったものとかもあるに違いない。知識も思い入れもない人間にしてみれば「なんでそんなものに・・・」と思うようなものでも、内側にいる人間にとっては何よりもかけがえのない、何よりも自分を楽しませてくれるものだったりするに違いない。
エヴァやときメモ、たまごっちとかもそうかな。ブームに乗りきれなかった作品も多いけど、ポケモン、ハイパーヨーヨー、Wiiみたいにたまたま上手く乗ることが出来たものもある。きっと全てに言えることだと思うんだけど、
熱くなれるならそれは本当に幸せ
なことだと思う。こないだパートさんの娘がi-podを持っていたので何が入ってるの?と聞くと、命より大事なものが入ってるという。それは何ぞやと訊ねたら、
「テニプリ」
音楽だけで2ギガ以上のテニスの王子様が入ってるi-pod。ここで「理解出来ない」と言うのは凄く簡単。でももし何かのきっかけでその琴線に触れることが出来るなら、きっとそれはスゲェ楽しくてスゲェ幸せなことなんだろうって思うんだよな。いや別に今の僕は触れたいとは思わないんだけど?(^^;。
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