デジタルとアナログ
著作権関係の問題が今ひとつクリアになりきらない感のある地上波のデジタル化。ネットを使った双方向性や情報量の増加、画質向上などのメリットを掲げる一方で「ライトワンス」、録画出来てもコピーは出来ないとか携帯ガジェットでの再生にも大きなハードルを課していたりする。中には「3回まで出来るようにしよう」という話も目にする。
たとえCM一本、ラジオ10秒、4コママンガひとつ作るのにもコストは必ず掛かる。それが357億円も掛かる映画となれば、その違法流出や共有は当然死活問題だし、画質劣化のないダビングもDVD市販時に大きく売り上げに影響するだろう。それはわかる。
「権利を守るために便利を縛る」
一昔前であれば、放送メディアはすべからく宣伝する力を内包していたが、今ではそれらが大きく弱まっている。HDDレコーダーに録画されたドラマは、ボタン一つでCMを飛ばしながら見ることが出来るし、Youtubeの例を挙げるまでもなくユーザーがより強力な「取捨選択権」を得てきている。どこかでコストを回収しなければならない。
未来の話をするのが大好きな僕なので、こっからは想像を絡めつつ適当なことを書いていく。
「超驚録」というソフトの名前は何度かここでも書いているのでご存じの方も多いと思うが、特別な外部機器なしでPCから出る音ならどんな音でもキャプチャ録音してしまうなかなかに凄いソフトだ(以前はフリーウェアだったけど今はシェアウェア)。例えばそれがCDであっても、インターネットラジオやストリーミング放送であっても、DVDの1シーン、キャプチャボードを介したテレビ放送であっても、PCのスピーカーから出る音なら何でも録音出来る。ゲーム音楽のイントロをクイズにする際使ったってのを覚えてる人もいるかも知れない。
当然のことながら「音」の情報量は「動画」のそれを遙かに下回る。しかし人がその映像を見る時、何かしらのインフラを通して伝わってくるのは間違いないのだ。テレビでもラジオでも光ファイバだろうと超高解像度モニターだろうと情報は転送速度内であればどこにでも流すことが出来るはず。あるゲームのサービスでは、PCのスペックが小さくともコントローラーの入力と映像をやりとりすることでサーバー側にゲーム本体を置き、プレイヤーはそれを意識せずに遊ぶことを可能にしているものもある。
要はその速度の問題だ。
パソコン通信がただの音声「ピーガガガガー」というとても「情報の伝達」と呼ぶには心細い方法で産声を上げた頃、その転送速度は120bps(僕の曖昧な記憶)くらいだったような気がする。
※間違ってたらごめんなさい。
1秒間に半角英数字を120文字転送することが精一杯の速度(もちろん損失も多大にあるから実際はもっとずっと遅いのだが)。いわゆるMP3のポピュラーな音質のもの(1曲4mbほどだと思うが)を転送するとしたら9時間以上掛かる速度。一枚のエロ画像が1ラインずつゆっくりゆっくり表示されるジレンマを経験したことがある人もいるかも知れない。そんなPC9801時代のポピュラーなモデムの転送速度は2400bpsくらいだっただろうか。
時代が移りISDNになると、最大で128000bps=128kbpsという数値が出てきた。表示上は4mbの曲を約30秒で転送出来る速度だが、僕の知る限りの実測値はISDNで7~10kbpsくらい。まぁ現実はそんなもんだったが、それでも14400bpsのアナログモデムと比べたら遙かに早かった。1曲4分の曲を7分ほどで転送する速度だ。
※あくまで速度指標で書いてるだけで、実際にやったわけじゃないです。当時はmp3という圧縮規格すらなかったしね。
今の光ブロードバンドは早いところで実測30mbpsくらいは出るんだろうか。
※速度計測サイトじゃないよ、あくまで相手もいるベストエフォート環境での話。
我が家ではせいぜい5mbpsが最高くらいだったと思うが、それでも4分の曲でも1秒掛からずに転送することが可能になるレベルだ。この技術革新を「進化が速い」と言えるかどうかはともかく、遅かった頃を知っている自分にしてみれば「ぶっちゃけかなり速い」とは間違いなく言える。
今NTTがCMやってる次世代の光ブロードバンドがどの程度の速度をもたらしてくれるのか、正直今の僕には想像も出来ない。がしかし動画のシームレスな転送を可能にする日が来るのはまず間違いあるまい。そしてPCのスペックも同じように向上してゆき、きっといつの日か
PCで出力する映像を全て録画出来るソフト
が出てくるのは間違いないと思う。当初はきっと解像度が320×240じゃなきゃダメとか画質が悪いとかあるだろうけど、それだってきっと5年と経たずにHDクオリティまで録画可能にしてしまうんじゃないか。
もちろん家電メーカーは反発するだろう
それに「非合法」の烙印を押される可能性も高い。しかし人間は次々と便利なものを作り生活をより快適に豊かにすることへ向かって生きてきた。今更「録画は出来ません」が通じるとは思えない。
先日スパイダーマンを見に行ったときも相変わらず海賊版撲滅キャンペーンのCMが打たれていた。画面をビデオに収めてそれをDVDに焼き、売る。公衆監視の中ならそれを抑止することも不可能じゃないだろうしかし、一般の家庭ではどうか。ハンディカムでテレビ画面を録画することを不可能にするような手段はあるのか?
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今のCDや音楽業界の景気ってどうなんだろう。一時違法コピーが全ての諸悪の根元としてコピーコントロールCDが作られたのに、結局はiPodがそれを駆逐するかのごとく「正義をたぐり寄せた」形になった(ような気がしただけ?)。携帯で音楽を配信する。ダウンロードする。気軽で便利なそのお店はたぶんかなりたくさんのお客さんに愛され、にぎわっているだろう。それによって権利を有するアーティストにも多かれ少なかれ日銭が入るような気もする。
確かに路面店には圧倒的不利で厳しい流れだと思う。自分がCD専門店の店主だったらと思うとゾッとする。でも書籍にしてもCDにしても自分たちだけが定価販売を当たり前に許され、価格競争のし烈さを傍観してきたのも事実。ゲームなんて1年もせずに価格が10分の1に落ちてしまうものだってあるのに。
PDAや液晶の性能がどんどん進歩していったら、きっと書籍の多くが必要性を見失っていく気もする。有機ELという技術はどうやら薄さもかなりのものらしく、雑誌並の厚さ紙並の軽さで、持ち運べる端末が出てくる未来もあるだろうと思う。ネットテレビが浸透する課程にキーボードはきっと存在しない。キーボードやマウスのないパソコンはタッチパネルの大画面液晶さえあればほとんどのことは足りる。新しい液晶テレビの枠幅が1cmを切るのだってそう先のことじゃないだろうし、強度面ですら「曲がる液晶」の技術は既にかなり進んでいるという。
クルクルと丸めてバッグに入れ、広げてスイッチを入れれば新聞もテレビも見られるようなガジェットが生まれる。もしかしたら首に巻くチョーカーのようなものに電波でデータを飛ばし、骨伝達で音楽を聴く=外部に漏れないスタイルも生まれるかも知れない。
※そう言う意味ではDSの後継機なんかはどんな形で出てくるのか非常に楽しみ。
そうなってくるといよいよどこでお金を落として貰うのかってことになるのだが、あんましみんなが考えなかった視点の一つとして、テレビや映画などのメディアに掛かるコストが大幅に見直される可能性ってないんだろうか。毎年芸能人は海外でお正月を過ごしたりするし、テレビに出てる連中が同じ服装で出てきたりはしない。
※お笑い芸人とかは別。
要は金巡りがいい業界なのだ。貧乏人のひがみと受け取って貰っても構わないけど、たぶん今の10分の1のコストでもテレビの運営自体は可能だと思う。広告収入が激減し、払うべき物が払えないテレビ局は潰れる前に「出る方」をきっと考えるはずだ。何も高いお金を掛けた有名俳優やタレントが出ている番組だけが視聴率が取れるワケじゃない。
みなさんは「ギャオ」を見たことあるだろうか。インターネットでCM込みのストリーミング動画放送をするギャオは広告宣伝費がその運営基盤を支えている。しかし当初こそおもしろがってみたこともあったが、ここ数ヶ月僕は一度もギャオを見ていない。新PCのお気に入りにも入っていない。要するに僕にとってギャオは見るに値しないのだ。
おいおい、それじゃあさっきと言ってることが違うくないか?お金を掛けなくても見たくなるような番組が作れるはずじゃなかったのか。
僕がギャオが嫌いなのはその内容というよりむしろCMのウザさにある。特に一番最初再生してすぐ見せられるCMは正直あり得ないと思う。だってどんなテレビ番組だって最初CMから入ったりはしない。
でも一方で可能性が面白いと思う側面もある。今の技術ではわからないが、ネットの双方向性とセールスのリンクする窓口に動画コンテンツを据える可能性として、
※一回の中年オヤジの戯れ言なのでまぁテキトーに読み進めてもらいたいけど(^^;
動画内で使われているものをリアルタイムで購入、広告出来るようなシステムはどうか。
「あのTシャツかわいい」と思って画面をクリックすればそのメーカーや購入方法、もっと言えばアマゾンにリンクしたっていいし、美味しそうだと思えばレシピを表示しつつそのレシピに使われる材料や道具の直販サイトに飛んでもいい。いやむしろそこまでコストの流れがシビアになる頃の未来では、1クリックで価格が表示され、2クリックで承認するようなスマートさかもしれないし、画面をクリックした時点でその座標と商品データが蓄積され、価格ドットコムのような人気商品ランキングに計上され、普通に路面店での売り上げに貢献する可能性の方が現実的かも知れない。
※「のだめ」に使われたピアノ柄バッグだって、ドラマ見てる時(もしくは見終わった後)リスト表示されて簡単に購入出来るとしたらかなりの売り上げ増になったと思うし。
技術の進歩が様々なデータ転送の速度を向上させるのなら、そうしたマーチャンダイジングはある意味必然のような気すらしてくる。ドラマやニュース、バラエティにそうしたディティールを掘り下げる商業コンテンツを織り込むことが事実上不可能なら、ぶっちゃけCMでもいい。化粧品のCMを集めたYoutubeのようなサムネイルから自分の好みの女の子動画を再生させ、それに使われたシャンプーやら化粧水やら服やら靴、もっと言えば出てるタレントの写真集やCD、出演したDVDや最近ハマっていることやらが全て購入可能というのは不可能じゃないんじゃないか。ジャンクスポーツ見て浅尾美和がかわいいと思ってクリックしたら写真集とDVDが出てるとなったら、たぶんものすごい流通変動が起こる気がする。
メーカーをクロスすることからくる経費分配の難しさはあるだろうが、弱者がどんどん淘汰され、強者はこぞって協力する世の中。ありえなくはないと思うんだけどな。一つ一つはコストが掛かるように見えて「無駄がなくなる」見方も出来ると思うし、「経費を10分の1にしてもコンテンツを回す」必要に迫られる未来があるとするなら、こういうどん欲な販売方法は絶対模索されると思うんだけどな。
ゲームだって発売予定のゲームがザッと表示され、クリックひとつで体験版をダウンロード&プレイ。気に入ったら丸ごと落とすなり、機能制限を解除するなりすればいい。たんなる従量制や定額制じゃない課金システムの流れもきっとどんどん加速していって、セカンドライフのようなRMTがむしろ当たり前になり、有志によるゲームのポータルサイトの運営やユーザーの評価がそのまま本当の広告として経費が割かれる=売れた分に支払われるようなアフィリエイトの目指す形に向かっていくんじゃないかとも思うのだ。
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2011年のアナログ放送停止は現時点ではまだ予定でしかない。それまでの4年間で政府からその為に莫大な予算が投じられ、一家に一台のチューナーが配られたりするかも知れないし、全てのデジタル放送がネット配信される様になるかも知れないし、どこかの誰かがデジタル放送をほぼリアルタイムでエンコードしつつ電波に乗せてくれるかも知れない。でも一つだけ確かなことは、
テレビは無くならない
ということだ。新PCになってまたも毎日のようにいろんな番組を録画しては見る。やっぱりテレビは面白いし、凄いのだ。適当なこと言ってしまうが、別に焦って地デジチューナーとか買う必要はないと思う。テレビがなくなって困るのはむしろ見る側じゃなくて作る側だと思うから。
※参考文献:週間アスキー
※もし間違いとかあったらゴメンナサイ。っていうかたぶんかなりある予感。
※もしかんに障るような記述があったら申し訳ない。勢いで書いてしまいましたのでなにとぞお許しを。
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コメント
難しいでもわかるような気がする
いぜんこんな話を聞いた事があるたくさんの情報社会になっていって
記録するものが紙からどんどん進化していってフロッピーになり
ハードディスクになりRAMになりCDになりDVD・・・・・・
そのように進化していって核戦争もしくは巨大な隕石の落下
などで世界が焼け野原になってすべての記録が焼けてなくなって
しまって最後に残ったのが原始人が岩に掘った文字。
それを聞いたときデジタルというものは有って無いようなものの
ような気がしましたよ
いまは便利なんだけど昔は昔でそれでよかったんですよね(笑)
投稿: macn | 2007年5月 7日 (月) 22時32分
なるほどねぇ。まぁ岩に掘った文字は核戦争後でも残る可能性は高そうですね。でも僕なんかだとその話から「有って無いようなもの」という感想ではなくて、
ナスカの地上絵とかってそうした経緯で滅んだ文明の名残とか最後のメッセージ手段とかだったのかなぁ
とか思ってしまいました(^^;。まぁ何が便利で何が大切なのかなんて、確かにそれまで生きてきた背景が決めることですよね。
投稿: クリス | 2007年5月 8日 (火) 01時22分