中村あゆみ
仕入れに行くのに何か音楽でも持って行こうと適当に古いアルバムを物色していたら、中学3年の頃友達から入れてもらった「Be True」という中村あゆみのアルバムが見つかった。既に一線から退いてかなり立つ彼女のことを覚えている人は少ないだろうし、覚えている人がいたとしてもそれはカップヌードルのCMソングだった「翼の折れたエンジェル」程度だろう。まぁ中には僕のように結構聴き込んでいた方もいるかも知れないが。
懐かしいアルバムというのはその曲をどれほど深く何度も聴いていたかによって時を経たあとの印象が変わる。わずかな間でもその曲とともに大きなイベントがあったとか、女の子から勧められたとか、あるゲームをやっている間ずっとオートリバースでかけ続けていたという理由で心の深層に強く刷り込まれたものは、久しぶりに聴いたとき、ただ懐かしいという以上の思いが掘り起こされる。
「あのときはこうだった」
映像が瞬間的にフラッシュバックされ、交わされた会話、温度、ニオイと僕の身長から見えた景色、先生、校舎、教室・・・。
たかが数曲に封じ込まれた数え切れない事象が、パンドラの箱を開けたかのごとく一気に心に広まっていく。
でも僕はすぐに聴くのをやめた。
なんだか怖くなったというのはソレっぽい理由だけど真実じゃない。ホントは「もったいなくなった」のだ。大切な曲と思い出が爆発する感覚をこんな時間に明日は仕入れなのに、あっさりと流してはダメだ。これだけの爆発力を得るまでにはどれだけ時間が掛かるか知れない。特に僕のように昔の曲でも平気でガンガン聴いている人間には、ここまで熟成が進んだ状態でお耳に掛かることなど本当に稀なことなのだ。
明日仕入れに行く電車の中、目を閉じてじっくり聴こうと思う。
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