川瀬巴水
テレビは時として心に触れる物を見せてくれる。そしてネットはその想いを受け止める広さと深さがある。
昨日の鑑定団で版画の川瀬巴水の作品が取り上げられていた。僕は氏のことを全く知らなかったが、床屋の客として巴水が訪れとても親しくしていた店主に作品を贈り他の客からもとても素晴らしいと喜ばれたというエピソードと共に紹介された作品群は、ひと目見て心を奪われた。
絵の持つ力というのは、音楽と比べて理解しづらいものだとも思う。幼稚園小学校、テレビ、ラジオ、お店に行けば必ず何かしらのメロディが奏でられている環境と違い、絵画というのはよほどのことがない限り鑑賞したり堪能したりという機会はない。正直言って僕も子供の頃からアニメや特撮、映画が好きでなければ、さほどその背景(そのまま絵という意味もあり、世界観という意味でも)に思いをはせることもなかった。
ただそれでも子供心に図工や美術で描いた絵を褒められれば嬉しかったし、親戚に画家がいることがより身近に美術品を感じさせることにもなっていた。
川瀬巴水の絵は時に「写真そのまま」であり、美術品としての独創性に欠けると揶揄されることがあったという。精緻にして克明な作品性はパッと見確かにその面も感じさせる。しかし、先日のマット画にも言えるが、写実的な絵だからと言ってそこに何も物語が織り込まれないわけではない。
氏の作品は多くに「水」が描かれている。流のある川であったり、降りしきる雨や雪、海や湖、時には水たまりであったりもする。そしてそこに映る光とゆらぎが作品に無限の奥行きを与えていると思う。「時が切り取られる」感じ。
全部で10枚ほどの作品は、80万の自己評価が鑑定後220万円になっていた。特に絶筆は1枚100万円の評価を得た。正直今まで一度も絵を買いたいと思ったことのない僕でさえ、「5万くらいなら買ってもいいかなぁ」と思えるような作品ばかりで、素人である紳助すらもいつになくまじめな購入への姿勢を見せていた。
それほど川瀬巴水の作品はわかりやすいのだ。
富士山であったり川辺であったり雪の積もったお寺であったり、日本のいろんな場所、いろんな季節の切り取られた絶景が、本当にわかりやすいすばらしさをもって語りかけてくる。そんな作品たち。
番組が終わるのを待たずに、僕はすぐさまネットを開いて「川瀬巴水」でイメージ検索した。すると瞬く間に画面を小さな切手のような絵が埋め尽くす。正直解像度のせいでその良さが伝わりきらないものもあるだろうけど、僕的には本当に久しぶりに琴線に触れた「日本の風景画」。みなさんに少しでも伝わればいいな。
濃淡のある緑と薄朱色の花、女性の青い着物と白い肌。遠近法で手前の物を大きくそして精細に描くことでシンプルな構図なのに凄く迫力がある。こんなの飾ってあったら思わず目を引くと思う。
雪がスゲェ。舞い散る雪の密度で風さえも見える。全体的に白や赤系統の色を使っているのに漆黒の闇夜の寒さが際だって伝わってくる。時節はいつ頃だろう。たぶん正月が過ぎて年始の喧噪も収まった2月の頭あたりだろうか。本物だったらたぶん本気で1時間くらい見ていられそう。
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元の解像度が荒いのでどうしても作品の持つ最も伝えたい部分もブレてしまう気がするのが残念だけど、個人的には水面に負けず劣らず白い雲と青い空の表現が面白い。実際にその場所からこんな景色を見てみたいという気にさせる一枚。夏なのに涼やかな感じがするのは僕だけかな。
とっても好きな一枚。っていうか今回は見つけた中でも好きなモノばかりを転載させてもらったんだけど、その中でも特に水が凄くいい。なんでこんなに透明感があるのか不思議。ガラスみたい。木の家に映る影や木の葉のざわめきが聞こえてきそうな中心の木、空、雲、人全てがいい感じ。毎日見ていても飽きないんじゃないかって気がする。つか、僕個人としては、ゴッホとかよりずっと好きだし価値がある気がするな。
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雨の強さが凄く伝わってくる一枚。石垣と同系色の空が寂しさを誘う。風になびく木々の色調も抑えられていて、真ん中の小さな女性がとても映える。足もとの水に濡れた地面が、この時の雨の多さを物語る。本物が見たいなぁ。どうやってこんなの版画にしてるんだろうって思う。
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これも好きな一枚。この色目はきっと朝もやだろうね。夜明け前後の時間シンと静まりかえった水面にキーコキーコってかじの音だけが聞こえてる感じ。なんだか今日だけは鳥の声もあまり聞こえないような。絵なんだから音がないのは当たり前なはずなのに、「無音以上に静か」な感じがする。密かに手前の草がスゲェ細かいのもいい。
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こちらはうって変わって日が沈んだあと満月が顔を出した頃かな。月明かりの下で橋の欄干がはっきりと見えたんだろうって思う。水の表現がとにかくいい感じ。雲一つない天気も水面のゆらめきと好対照でいい感じ。
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氏の作品にはあまり華やかなものは少ないようだけど、これはピンクの桜かな、建物に落ちる影の濃淡の強さも相まって、全体的にとても派手な印象を受ける。中学校や高校でこのくらいの写生が出来ると、きっと楽しくてしょうがなくなるんだろうなって思う。いや、まぁとても描けないんですけどね。
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氏の作品にはいっぱい富士山が出てくるんだけど、これはそんな富士山の中でも静かな闇を感じさせる一枚。木や橋や草が凄く写実的なのに、山やそこに掛かる雲は妙に抽象的な感じがして、霊的なコントラストを与えてくれる。僕はこっち側の人間って感じがする。
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| 密かに鳥や野菜の表現もいい感じ。解像度が低いのを引き延ばしているから全体的に印象がブレまくりなのが残念だけど、こういう立体物をしっかり描ききるのは結構たいへんというか、遠近感に関する勉強と修練を積んでるからこれだけ奥行きが出るんだろうって思う。立体なんだよね。絵が。
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青が深く、流による波紋がとても綺麗。雨が降っていて風の音も聞こえるんだけど、川の流れはまだ強さや水かさが増してるでもない。きっとこれは夕立なんだろうね。そそくさと帰る町民の足もはやい。
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これはもう直球富士山。水が澄んでいて湖底が少し透けて見える感じと気持ちのいい青空。時刻はそうだなぁ10時55分くらいかな。日差しもそんなに強くないけど、秋や冬というよりは3、、いや4月上旬くらい、11、、いや8日くらいのちょっと暖かさが増してきたって感じの時節かな。
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さっきとうって変わって凄く冷たく荒い海。色調が抑えられ、華やかさのかけらもない。でも波そのものはそれほど高いわけではなく、どちらかというと岩の強さが描かれている感じ。こういう影を強く感じさせる描画は結構好みです。
たぶん氏の作品の中でもかなり有名な物の一つだと思われる。なんだかトトロをイメージさせるような木と闇とまあるい月。鑑定団でも出てたけど、民家の灯りと月の丸さが全体的に暗さより暖かさを感じさせる仕上がりにしてる。いい絵だなぁ。ホント。
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割とシンプルな秋の宿場町を感じさせる絵。富士山の雪も結構下の方まで伸びていて、時刻はまだ早いうちなのかな。ちょっぴり寒くなってきて草履を履く足も冷えるなぁって感じだ。
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最後はかなり引き延ばしてるんだけど、とにかく夕焼けが映る水面があんまり綺麗だったのでチョイス。これだけ明るい色を配置すると結構浮いちゃうと思うんだけど、しっかりと周りを描ききることで川が川以上には自己主張してないのがいい。あれは電線かな。時代は結構最近なのかも知れないね。三丁目?
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ネットで落ちてる絵の多くはあまり解像度が高くなくて、よく見ないと分からない。よく見たら荒いというものが多い。だから正直今回も150~300%くらい拡大して荒さも目立つかわりに全体的な印象だけでも伝わりやすくなるようにしたつもり。つかウチのブログ読んでる人のどれだけにこの絵がフックするのか定かではないのだけど、とりあえず僕にはかなり訴求したので思わずほとばしってみた次第だ。あんましピンとこないかな?
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