出不精の恐怖
僕は正直世間のことにうとい。自分の興味がある事象に対しては人一倍前のめりになれるタチだが、政治とか経済とかにはとんと興味がない。つか小売業を営んでいる上で無関係ではないのだが、それでもなかなか自分から首を突っ込んでいったりはしない。
だが、このところの不況は正直かなり深刻で、「この値段この品なら絶対安いし、売れるはず」のものが売れなかったりする。客数が下がったり客単価が下がったりしているから売上が悪くなるわけだが、今日読んだコラムになるほどと思う一文があった。
「客数が下がっているのは、他店に取られているか、お客様ご自身のお買い物頻度が下がっているかどちらかだ」
確かに他店に取られていると痛感した時期もあったし、事実そうだと思える側面もあるが、このところの状況をふと鑑みるに、後者の影響も(これまではあまり重視してなかったが)結構大きい気がしてきた。
そのコラムにおいては「買い控え」と表現していたが、それならばむしろ「仕方ない」と言えなくもない。お金がない、もしくは収入が減った事や株価、政治不信などによる「現金を持っていないと不安」からくる買い控えならば、正直どうしようもない。1000円しか持ってない人に1001円の物を売ろうとしても買うわけはないのだ。
だが、僕はむしろこれは「買い控え」ではないのではないかと感じた。
みなさんは最近でも以前通りに趣味の物を買いに行ったりしてます?もしくは買う目的がないのに店に行ったりします?別にゲームに限らず、プラモでもいいし、家電でも文房具でもなんなら雑誌でもいいです。コンビニでもいい。
車で出かける頻度は明らかに低下してる
と思うのは僕だけでしょうか。
今は以前と思えばガソリンは全然安くなりました。最寄り店で一番安いところだと110円くらいかな?170円を超えていたのがウソのような額ですが、実際1.7倍というのは確かに大きかった。5000円である程度入っていたのが8500円掛かるわけですから、そりゃ確かにデカい。出かけるのもなんだかもったいない気がしてくる。「ガソリン代を気にするのに十分な価格差」であったと思います。
でも今は違うじゃないですか。
いくら不況だろうと株価が下がろうと、とりあえずまじめに働いてさえいれば手元に入ってくるお金にそれほど大きな差はないはずだと思う。少なくともその間にリストラされたり契約が切れたりということがなければ、お財布に占める「自由になるお金」は激減してないはずだと思う。
なのに買い物に行かなくなってる。
ガソリンが引き金だったとは思うけど、それを差し引いても「別に行かなくてもいいかな」という気持ちが芽生えてきている。これまであったものを使えばいいとか、家でゴロゴロしてた方が楽だとか、アマゾンで買ってもいいかな、とか、いろんな理由を付けて出不精になっていく。つか本屋とかほとんど毎日のように行ってた頃がまるでウソのようだし、無目的で家電やコンピュータを覗いていた日がホントに遙か遠くに思えるほど、最近の自分は「引きこもり化」している。
一方では確かに他に買いたい物があるから、というお題目もないではない。だがそれ以上に「見るだけ」の楽しさ、「買い物に行く」という行動そのものの魅力低下が恐ろしい。知らず知らずのうちに「仕方ない買い物」だけが生き残り、「楽しい買い物」「衝動買い」が悪として認識されてしまうようになる。食べ物は仕方ない。寒くて着る物がないなら仕方ない。靴に穴が空いたから仕方ない・・・。
仕方ないと思わせないようにするには、それに負けない「楽しさ」を提案するしかない。
気持ちよく買い物をして貰う。楽しい時間を過ごして貰う。笑顔で帰って貰う。言葉一つでお客様の気持ちは動く。今がネガティブキャンペーン中であっても、過去からずっとそれがつづいているわけでも今後ずっと続いていくわけでもないはず。くだらない話でもいい。何かお客様が「来て良かったな」と思えるような、ガソリンを気にしないで買い物に来たくなるような、もっと言えば「買わなくても覗きにきたくなるような」一言を投げかけたい。
僕「お客さん、今日虹が出てたんですよ」
お客様「そうなの~その頃ちょうど店の中にいたのかしら、見られなくて残念だわ」
僕「あ、これもしよかったら見て貰えます?」
お客様「あらまホントだ!キレイな虹ね。よく撮ったわねぇ!」
僕「くだらないことに時間使わせちゃってスミマセン」
お客様「いえいえ見られてよかったわ(^^」
雨で売上はさんざんだったけど、なんか大事なところを再確認した気がした。お客様に来てもらえないのはしょうがない。でも来て頂いたお客様にはぜひまた来てもらえるよう努力しなくちゃと思う。前を向いて生きなくてはと思うのだよ。いやマジで。
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