LEGOTECHNIC~その4~
3週に渡って出品された激レアLEGO祭りが無事郵送され終幕を迎えた。LEGOを嗜む人だったら、1978年当時から2000年前後までの一つのシリーズアイテムのほぼ全て、それもほとんどが未開封で出品されることの凄さというのは理解出来ると思うけど、だからと言って合計で7万円近い出費をすることが果たして正解だったのかというのは意見の分かれるところかも知れない。
僕がレゴに初めて触れたのは、物心も付かない2歳とか3歳とかの頃だと思う。当時の我が家はそれなりに裕福だったし、父方にも母方にも初孫だった僕は、結構なプレゼントを周囲から戴いたと思われる(1972年頃だからタイヤが出始めの頃じゃないかと想像)。
LEGOはダイヤブロックと比べ、その品質に圧倒的な差があった。具体的に言えば、
ダイヤブロックは歯で噛んで外そうとすると割れるけど、LEGOは割れずに歯形が付く。
ユルユルになったりガチガチになったりすることがほとんどなくて、ただのプラスチックだったダイヤブロックが細かな傷でどんどんつや消しになっていくのに、LEGOはいつまでも輝きを失わなかった。ピカピカだった。
それでも周囲には魅力的なものがたくさんある。ミクロマンや仮面ライダーやウルトラマンやビックリマンシール(ヘッドロココとかスーパーゼウスとかじゃなく、画びょうとかハエとかの「まるで本物みたいでビックリ」というビックリマンシール)、スーパーカー消しゴムには魂の7割5分くらい持ってかれた覚えがある。
そしてふと気付くと、「LEGOがない!」。大きな細長くて浅いダンボールに入れてあった大量のLEGOが我が家のどこを探しても見つからない。
「親戚の○○くんにあげたよ」
「え~!」と第一声をこぼすものの、その直後に「ま、そういうもんかな」とも思った。遊ばなくなって随分経ってたし。でも○○くんLEGOの良さに気付いてくれるかな、ダイヤブロックと一緒にしちゃわないといいけど。タイヤとか4つないと車にならないんだよ・・・そんなことを思った気がする。今でもそうだけど、僕は割と物に対するこだわりがあったから、結構大事にしてたんだよね。
そこから二十年以上して僕はLEGOTECHNICと出会うんだけど、その話はまぁ以前したからとりあえずはしょる。ただ重要なのは、今回出品された物の多くが、
その失われたリンクを繋げるもの
だったってこと。正直僕のお小遣いは今回の出品でかなり底辺に近づいた。トライがギリ買えるくらいしか残ってない気もする。届いた品物を見ても、「これで7万円!?」という人の方が遙かに多いだろう。
でもこれは、このLEGOは、「7万円で買ったけど7万円で買えるものじゃない」。
世の中にはいろんな古美術がある。絵画や焼き物、彫刻、コイン、建物だってアンティークなものは価格的な価値を超えた存在意義がある。このLEGOは中島誠之介や北原照久に見せても、大した価値を見いだしては貰えないかも知れない。もっと言うと、僕本人ですら10年後に振り返ったとき、「こんなの買ってる場合じゃなかったな」と後悔するかも知れない。
でも今の僕にはプライスレスな価値があるのだ。
最初に出品されてたのを見つけたとき、そのまま見なかったことにしてゲームをやったり、映画に行ったりしていれば、こんな出費はなかったし、手に入ることもなかった。知らなければ買いようがないし、誰も僕にこれを買えなんて一言も言ってない。でも、僕はそうしなかった。
こんなチャンスは一生の間にそう何度もあることじゃないのを知っていたから。
レゴにはコレクターとビルダーというくくりがある。文字通り集めるのが好きな奴と、作るのが好きな奴。後者に関してはパーツ単位での売り買いも盛んなレゴだから、お金さえあれば某ヤマトを組み上げるほど大量なパーツを揃えることも不可能じゃない。だが、前者はお金だけで何とかならない圧倒的な壁がある。たとえば数千万、数億円を掛けて、自分が欲しいレゴを集めるためだけにゴールデンタイムの番組を借り切るような普通じゃないことが出来る人ならいざ知らず、いや、それでも30年前からのレゴを未開封で手に入れるのはそうそうたやすい事じゃない。衛星放送を使って世界レベルで募集すれば、それでも何個かは現れるだろうけど、
7万円以上掛かるのは間違いない。
※まぁ僕が手に入れたのは正確には20年ほど前までのものだけど。
だから今回僕が手の届かない額まで跳ね上がってしまったアイテムでも、買えた人は凄く幸せだったと思うんだよね。歴史の証人になれた、みたいな。
フォークリフトトランスポーターは33000円の予算を見積もりつつ結果として2万円で買えた。他に中くらいのモトクロスと、近未来のポリスカーを買った。それぞれ5000円と3000円くらいだったかな。
何を持ってその価値があるとするかは、ひとそれぞれだ。今回落札したレゴには今使われているパーツは「一緒に遊ぼうとすれば遊べるけど」ほとんど入ってない。ライトやモーターもないし、タイヤだって小さい。大きさもそれほど大きくはない。それでもその機構に、そのデザインに、僕の心を「LEGOに呼び戻した魅力」が詰まっている。何十年も経て店頭で見かけたあの日、
「え?これがレゴなの!??」
と目を疑い、30分以上その場から立ち去れなかった僕の心を鷲づかみにした魅力が詰まっている。
しばらくは質素倹約が義務づけられたけど、やっぱり後悔はない。買ってする後悔と買わずにする後悔。多くの先人は言う、「やってする後悔の方がいい」と。僕もそう思う。
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コメント
こんばんわ。10年くらい前に集めたTechnicのコレクション、引越しのときに懐かしく思ったので、Technicで検索したらこの記事に導かれました!
フォークリフトトランスポーターも持ってますよ。
いま#8888から始まるアセンブリの本なんか荷造りのときにじっくり見入ってしまいました!!
投稿: ryu@hk | 2010年7月12日 (月) 02時14分
はじめまして ryu@hkさん、クリスです。コメントどもです。最初の遭遇は僕もかなり前でしたが、定期的にというか、何となくフックするアイテムがあって盛り上がる日が来るという感じですね。ただ、最近のリフトアーム満載なモデルは僕みたいに頭の悪い人間には応用しづらいというか、なんでビームがなくなっちゃった(完全に絶滅ではないですが)んだろうって思って仕方ないです。単純にコスト的なものだったら悲しいですが。
投稿: クリス | 2010年7月17日 (土) 04時13分