七人の侍
コレと言って書くこともないというか、仕入れから帰ってきて結構時間もあったし、体調も悪くなかったので、気合いを入れて見てみた。3時間の長編黒澤映画。
ひとことで「3時間」と言っても、「七人の侍」の3時間は本当に長い。
・オープニングもエンディングもない
・全体的に早口
・カット数も多くテンポも早い
もうビッシリ詰まった3時間というか、ぶっちゃけ、
「あと30分くらいかな?」
と思ったのが1時間20分経った(残り1時間40分)の時点だったほど。まぁ長い映画だった。
つか勧めてくれたnoriくんとバブシカさんには申し訳ないけど、最初に一刀両断感想を書いてしまうと、
隠し砦の三悪人の方が面白かった。
その理由の内訳は、
1.ヒロインがかわいい 4割
2.設定がわかりやすい 2割
3.暗い場面が少ない 3割
4.短い 1割
こんな感じ。どうしても僕の中の黒澤映画がこの二本であるがゆえに比較しながらの感想になってしまうのだけど、やはり隠し砦のヒロインのかわいさは別格。最近キムタクのドラマに出てるリン・チーリンがレッドクリフに出た時以来のドキドキだったというか、「プリンセスとはかくあるべき」というくらい魅力的で、
この1点でかなり及第点
だった
※もちろん人それぞれにウェイトを置くポイントは違うのでしょうが。
隠し砦と、ほとんど女性らしい女性が出ない七人の侍では確かに分の悪い勝負だったとも言えるけど、まぁ仕方ない。
二つ目はちょっとこの言い方だと語弊があるかな。七人の侍も7人7様の個性と設定と活躍の場があり、文字にしてしまえば「野武士に襲われる村人が7人の侍を雇ってそれを撃退する」と言ってしまえば単純ではあるのだけど、
・どこから攻めてくるとか
・7人分の設定の紹介とか
→これはテレビドラマなどの続き物だったら効果的だったろうに、とは思う。
・そもそも野武士ってのは何なのか
など今ひとつよくわからなかった。こないだ「マリオギャラクシー2」に関する「社長が訊く」
http://www.nintendo.co.jp/wii/interview/sb4j/vol1/index.html
でも宮本、岩田ご両人が語っていたけど、
「共感」
というのはとても大きかったと思う。冷静に考えれば七人の侍も「奥さんを奪われた」「一人娘を侍に取られたくない」「臆病者」「長老」「おばば」など、何人かの「個」はいるのだけど、隠し砦のシンプルな「ヒーロー」「ヒロイン」「小心者(兼お笑い担当)」と比べると、尺の長さも手伝って、今ひとつ不透明な感じがした。「七」はキリが良い数字ではあったかも知れないし、実際40騎の野武士を相手にするのにリアリティを持たせる必要性もわかるが、
見ていて「なんか大変」って印象の方が先に出てしまった。
地味に「金を隠し持って移動する」というシーケンスに僕が魅力を感じたってのも大きいかも知れない。
意外と大きいのは3つ目「暗い場面」について。
やっぱり戦(いくさ)だから、要所要所で人が死んでいくのも当然ではあるのだけど、それ以前に「百姓の情けなさ」
※必要なのは十分わかった上で
が自分には凄く見ていて辛かった。我慢に我慢して飛ばさなかったけど、
スゲェ飛ばしたいと思う時点で既にマイナス
とも思うんだよね。僕はわがままで独りよがりなガキなので、暗くて弱い人間が出てくるとそれだけでスゲェイライラしてしまうのです。それが黒澤映画だろうと。
※「隠し砦」の百姓二人組にも感じなくはなかったけど、意図的に「小さく」それも頻繁に描かれていたので、七人の侍とはニュアンスが違った気がする。「笑える」と「笑えない」の違いというか。
長さに関しても、「ここはもう少し削ってもいいんじゃないの?」と感じたシーンがいくつもあった。っていうかこれは「こういう理由で不可欠なんだよ」と言われればそうなのかも知れないけど、とりあえず僕が見ていた感じでは「いらなくない?」って思ったところも多く、2時間半にスタッフロールとかも入れて押し込めたんじゃないかという気がした。好みもあるけど。
-----------
当時のエンターテインメントとしては、たぶん桁外れに「大物」だったのもわかるし、最後の歌を歌いながら田植えをするシーンなど、スターウォーズのエピソードI、とVIのラストを凄く喚起させて、「ああ影響力があったんだなぁ」と思うコトしきりなのだけど、
※剣豪とかめちゃめちゃシブかったし、「薪割り流」の人の柔和さ、若侍の弱さ、三船敏郎の剛胆な主役クラスの活躍とか、いいところも凄く多いけど
何を言ってるかわからないところも1割くらいあったし、
※日本語字幕が欲しかった。マジで。
モノクロであることを「活かした」印象の絵はあまり(僕の記憶には)残らなかった。
「七人」というフレーズにそこはかとなく「7つの獲物(長剣や短剣、双剣、槍、弓とか)」を期待してしまった自分もいたし、やはり事前の「面白いから見れ!」という重プレスで期待が過剰になってしまった点も否めない。全く期待せずに見ていたらまた感想は変わったかも知れないと思うし。
クリス的には★★くらい。巻き戻してもう一度見たくなるシーンはなかったし、
※隠し砦は何カ所かヒロイン関係であった。
パートさんにオススメできるかってぇと、やっぱちょっと微妙だと思う。「ミーハーな魅力」には欠けると思うんだよね。「安っぽい良さ」というか。
・・・
書き忘れてたけど、見ていてこれを見た外国人はきっと、
ファンタジーだと思うんだろうな
って思った。「遠い遠い遙か彼方の銀河系で」の出来事と、この時代劇の世界は、ぶっちゃけあんまし変わらないんだろうな、と。僕らがハリーや指輪物語に感じるようなもんでさ。
| 固定リンク
コメント
ありゃ、好みに合いませんでしたか。
ヒロインの重要度を出されると黒澤映画でお奨め出来るものはほぼ皆無になってしまいますね。
「羅生門」の京マチ子くらいしかカワイイ女優はいませんし、内容はドス黒いからクリスさんの趣味に合わないだろうなあ。
日本の美しい女優と云う意味では「溝口健二」監督をお奨めします。「雨月物語」「近松物語」などが有名です。
戦中戦後の一流女優の殆どが溝口組から輩出されていると云っても過言ではないほどです。
最後にもう一作品だけ黒澤映画を推して置きます。
「天国と地獄」と云う推理サスペンス物なのですが、現代劇なので設定的には見やすいのではないかと思います。リマスター版であれば映像もかなり綺麗ですよ(^^)
投稿: バブシカ | 2010年6月 2日 (水) 05時57分
チーッス!クリスですまいど。全然関係ない話ですが、昨日久々にパソコンと向かい合って結構グッタリしました(^^;。僕らくらいの年代になるとなかなか設定とか構成とかが煩わしくなると言うか、いつまでもXPを使い続けるわけにもいかないんだろうけど、そうも言ってられないというか、、、つか前世代のアプリをずっと引き継ぐのって難しいんですかね。ゲーム機より縛りが甘いような気もするんだけど、、、。
七人の侍は、正直期待過剰になってた感も否めないんですよね。モノクロ黒澤映画2作目だし(僕の中で)、面白いか面白くないか以前に、「ヒロインだけはかわいい」という最低の期待感で観た隠し砦とは観る前のスタンスに大きく開きがあったというか、案外こちらを先に見ていたらそれはそれでまた感想が変わったんじゃないかとも思うんです。それこそオードリーのローマの休日みたいに「前情報なし」であるメリットみたいな。
あと発言には書きませんでしたが、「人を斬るときの効果音」が全くないのは、正直ちょっと違和感がありましたね。「あ、今、殺した、、、の?」みたいな、どこかスッキリしきれない感じというか。
僕は北野武監督の映画を一本も見ていないのですが、氏の作品も正直僕の中では黒澤作品と同列だったりします。なんか、こうアカデミー賞を取るような作品に僕が好きなのはない、みたいな、むしろ外人に訴求すんじゃねぇの?どうせオレは安っぽい人間だよ、、、みたいな。
どうしようもないクズ作品はともかく、それなりに多くの人に受け入れられた作品であっても、やっぱり合う合わないというか、相性みたいなのはあるし、もっと言えばそれ以上に「タイミング」は重要だよな、と思った次第です。スゲェ余談ですが、そういう考え方からすると、僕らの世代はことコンピュータゲームに関して「ほぼベスト」な時代を生きることが出来たと思いますけどね(^^。あとアニメもかな。
投稿: クリス | 2010年6月 4日 (金) 20時49分
こんばんはクリスさん、
七人の侍なら間違いないと思ってたけど、
それほどでもなかったのね。
まぁ食べ物と一緒で好みの問題だから。
そうそうめちゃめちゃ期待した映画ってなぜかつまらなく感じたりするんだよね。
「アイアンマン2」
は、期待するなと言われても、もう勝手に膨れ上がりまくり、
大丈夫かぁ?
投稿: nori | 2010年6月 4日 (金) 22時32分
ちーすnoriくん、クリスです。レスが遅れて申し訳ない。今晩のネタを見て貰えばわかると思いますが、
全力でヱヴァと格闘してましたっ!
今回のネタは間違いなくダントツで過去最長最強です。僕自身通しで読み返すのを躊躇うほど長いです。nori君はヱヴァ破を何回か見に行ってたと思いますし、
※DVDやブルーレイも買ったかな?
このネタはきっと楽しんでもらえると思います。ところどころに世代ネタも入れていますし。
で、七人の侍の話に戻りますが、
まぁおあり過ぎだって(^^;
見る前から面白い面白いと言われ過ぎちゃって、心を逃がす隙がなかったというか、正直日本語が聞き取りにくかったのもかなり大きいですね。面白くないわけではないのだけど、、、。
アイアンマン2は期待しちゃダメですよ(^^;。僕のアンテナにはどうも地雷のにおいが関知されています。ロバートはちょっと調子に乗りやすいタイプな気もしますし、監督も一気に祭り上げられまくった感がありますから。気持ちを抑えて見に行くのがちょうどいいくらいじゃないでしょうか。
投稿: クリス | 2010年6月 9日 (水) 23時06分