風が強く吹いている
僕は基本邦画は見ない。ジュブナイルやリターナー、ゴジラみたいなSF以外は、どんな話題作でもそうそう心を動かされることはない。
なぜかはわからない。お金があまり掛けられてなさそうだと思うのか、テレビドラマとあまり変わらなそうだと思うのか。まぁテレビドラマだってそうそう見ないから、基本日本人の俳優が演じる物語にあまり魅力を感じないのだと思う。
ただ、たまに、ごく希に、「これは見たいかも」と思う作品に巡り会うことがある。週刊アスキーの広告に見つけた「風が強く吹いている」。箱根駅伝を舞台にしたフィクション。主演は小出恵介。僕にとっては「のだめのマスミちゃん」。もちろん他にもいっぱい出てるけど(ルーキーズとか)、割と実直なまじめが似合う若手だ。僕はこれだけの情報で、この1ページの広告で、
この作品がスポ根であることを嗅ぎとった。
ドラマはさほどでもないが、スポ根漫画は大好きだ。でも「お涙ちょうだい」な展開が好きなわけではない。熱く燃えるような情熱と根性がほとばしるシチュエーションが大好きなのだ。
きっと本当の駅伝や、その他多くのスポーツを本気で嗜む人にしてみれば、こうした架空の物語は甘っちょろく見えると思う。現実はそんなにドラマみたいに上手く行くものじゃないと。僕もそれはそう思う。でもそこ(リアル)に込められたドラマを僕たちが知るすべはない。たとえ外面だけでも、わかりやすく、伏線を張って、文字通りドラマ仕立てで見せてくれる人がいなきゃ、素人の僕に「本物の魅力」は伝わらない。
スポ根はそれを橋渡ししてくれていると、僕は思う。
現実はそんなに甘くないだろうけど、その「かけら」を取り出すだけで、こうも感動的なドラマに仕上がる。だからスポ根が大好き。一生懸命にやれば必ず報われるなんてことは絶対ない。でも、一生懸命にやってる姿は(たとえそれがドラマでありフィクションであったとしても)、素人の僕には十分伝わる。
作品の最後に、彼らは目標を達成するが、正直そんなものはどうでもいいと思った。みんな一生懸命で、みんな精一杯で、真剣で、夢中に一つのことを追いかけたこと、そのことが「かっこいい」のであって、その結果は結果でしかない。
登場人物のメイン10人はとても漫画チックでアクが強く、わずか2時間の映画の中でよく描き分けられているなぁと思った。だからどの区間も、どんな練習も、導入から序盤の流れも安心して見ていられた。
嫌なヤツもいない。シューズに画鋲入れたりしない。成るべくして為る伏線と、役者たちの好演があるだけだ。とてもまとまりが良く、最初から最後までまったく飽きさせない。手に汗握るシーンも多いし、かっこいい、見とれてしまう場面も少なくない。
SFでもコメディでもないド直球の「スポ根映画」。最初にチラシを見てピンときたのは間違いじゃなかった。★★★★。
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