ザ・ウォーカー
デンゼル・ワシントンが「ある本」を持ってひたすら歩いて行く話。その本が何なのか、彼の目的が何なのか、時代は核戦争の後だったと思う・・・。
知っているのはそれだけ。
彼以外にも人間がいるのか、動物はいるのか、ガソリンは?水は?
わかっている知識がほとんどなく、内容もまたモヤが掛かっている。そんな状況で見始めたのだけど、
プレゼンの割に中身は薄かった
と言うのが正直な感想。
知識に間違いはなく、「わからないこと」も含めて期待通りに物語は進んでいった。途中途中で「マッドマックス」テイストの展開があるのも、色味が抑えられ、終始セピア色に染まる世界も。
今この作品を見ようとする人は少ないだろう。この作品や、「I AM LEGEND」のような荒廃とした世界観に魅せられる人は少なく無いかも知れないが、物語の骨子が不鮮明なまま、いつまでもみんなの記憶に残り続けるのは難しい。「こういう映画だった」と語り語られ続けるタイプでない以上、情報は拡散しづらいし、またそれはこの映画を見るにおいて障害にもなってしまう。まるで全編がミステリーの解答のように、「作品には言えないことが多く、見た人は伝えられないことが多い」。
だから必然的に「ネタバレなし」ではこの作品を伝えにくい、もしくは伝えられないということになる。冒頭のあらすじ以外には、何一つわからないままの方が楽しめるし、でもそれでは感想として、批評として成立しない。
だから、僕は結構日を置いて視聴し、容赦ないネタバレを踏まえた感想を書くことにした。今ならもう「バラすなよ」と言われることもあるまい。
ちなみに評価は★★。そんなに面白い映画でもなかったからってのもあるけどさ。
・・・
ぶっちゃけこんな風に引っ張るほどのプロットではなかった。男は西へ「神様に導かれて」、この世界では「最後の一冊」と言われた「聖書」を運ぶ。ラスト5分で明かされる「西」には昔の世界を伝える為の設備や、たくさんの本があったわけだが、
「面白そうに見せる予告」を絶妙に仕上げた作品
だったというのが正直なところだ。
男はひとりで徒歩で西を目指すが、世界には車もバイクも(数は少ないながら)残っている。素性は知れないが、ナイフや銃を巧みに扱い、暴徒どもに屈しないアクションも見せるし、ヒロインも強く凛々しく魅力的だ。
が、
「神様に導かれて」というところがどうにもうさんくさい。これは物語の中で、「純然たる真実」として扱われるが、
※結果的には「神に護られている」というコメント通りになるので。
クリスチャンでもなければ、熱心なキリスト教徒が近くにもいない自分の境遇では、どうしてもそこに「オカルティックな茶番」を見てしまう。ならばもっとスーパーマンでもよかったんじゃないか、とか、ゴールにあるものが「印刷機を持った普通の人間」じゃなく、もっと大それた、SFチックなものの方が締まりが良かったのではないかと思えてしまう。
絵作りは終始色彩が抑えられ、かつアーティスティックで、「監督がちょっと自己陶酔してる」きらいがある。「無言で語る」シーンも多く、そう言った面でもどこか宗教っぽさを感じる。
こういった世界は、つっこみどころを探せばきりがないが、それでも見てる時は気になってしまう。「子供がいる」「老人がいる」「ガソリンが尽きない」「飲み水がある」「若い女がひとりで歩ける」「銃弾が切れない」「鳥や獣がいる」・・・。一番気になったのは、序盤で主人公を罠にはめようとした女が、(かなり移動してきた先でも)再び登場したこと。
お前はどうやってここまで来たんだ!?
仮に移動手段を持っていたとしても、
なぜ移動しようと思ったんだ!?
わけがわからない。
結局のところ、先に書いたように、「予告が面白そう」である作品だったというのが一番正鵠を射ている気がする。僕がクリスチャンだったら感想も変わったかも知れないけど、そうじゃないのでこれが精一杯だ。
ちなみに一番面白いというか「よかった」のは、序盤も序盤で「オレに手を出したらその手を無くすぞ」というセリフとその実践。
ウットリ・・・。
あと声優が大塚康夫(スネーク)だったのもよかったね。ピッタリすぎて思わず笑顔になったよ。
| 固定リンク
コメント