インセプション
今日明日と久々の連休なので、昨夜はこれでもかとAKBの話を書き、今朝はあまり深くない眠りから覚めて、映画を一本見ようと決断した。
雨戸を閉めると部屋は真っ暗になる。見える光はPCのダイオード数個だけだ。雨戸の密閉率は高く、蛍光灯の豆球を消すともはや今が昼なのか夜なのかもわからなくなる。
現実から距離を置くのに好都合なことに、かみさんも今朝僕が階下に降りるのと同時に、かみさんのお袋さんとどこかへ出かけていった。家には僕ひとり。誰にジャマされることもない。
何がどういうトリガーでどういう映画が見たくなるのかはわからない。気分がハレているからと言ってコメディが見たくなると言うモノでもないだろうし、失恋しているからと言ってハートフルなヒューマンドラマが見たくなると言うモノでもない。
今朝は何となくサスペンスが見たくなった。
目はしっかりと覚めていたし、頭痛や腹痛などの身体的トラブルもない。空腹も尿意もジャマするものもない状態でしか、「頭を使うドラマ」は見られない。
ちなみに僕はサスペンスがそれほど好きではない。記憶にある洋画は「ソードフィッシュ」「セルラー」「フェイスオフ」くらいで、どれも人づてに「面白いから見ろ」と言われた作品ばかりだ。
インセプションは誰にも勧められていない。
わかっているのはこの映画がCMで見たような「スペクタクルがウリの映画ではない」こと。「脳内に入り込んでアイデアを盗んだり植え付けたりする」こと。主役がレオナルド・ディカプリオで、渡辺謙がそこそこの役で出ていることくらい。忘れていて思い出したこととしては、監督が「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン監督だということ。とても難解な映画だということだ。
正直言って僕は日本人の標準からすれば結構な本数映画を見ている方だとは思うが、決して理解力に優れているわけではない。テレビのミステリーを見ていても、かみさんがとうの昔に気付いたトリックやオチに、全く気付かずにラストを迎えることもあるし、意識下であまり先読みをしないようにしようとする傾向も強い。作り手が構築した世界をより深く楽しむのに、、、少なくとも僕が好んでみる映画レベルの難度であれば、余計な詮索はむしろない方がいいほどなのだ。
だがこの作品はそういう「簡単な映画」ではない。
最初から自分の視点を見失わないように、二転三転どころか、五転六転する世界をしっかり把握し続ける努力を怠らずに見ていなければ、頭の中は「?」がジャングルの洞窟に積もるコウモリの糞のように山盛りになってしまう。
ぶっちゃけ今さらこの映画の感想やネタバレを書いたところで、見ている人は既に見ているし、これから見ようという人も少ないと思うから、割と気軽に結末やら展開やらを書いても(僕的には)平気だと思うのだが、
ぶっちゃけにぶっちゃけ、大したことはなかった。
評価にすれば★くらいで、0点ではないが、カタルシスも面白みもない。見ている間は自分を見失わないように必死になっただけで、結末まで見ても「投げっぱなしの疑問」が残るだけのマスターベーション。全て理解して解説付きで教えて貰えば、それなりに感心することも出てくるとは思うが、
あまりにエンターテイメントとして弱い。
変に思うかも知れないが、このテーマで描くなら、途中のカーチェイスや壮大な「世界崩壊」シーン、銃撃戦なんかは、ジャマ以外の何物でもないと思った。ああいった派手なバルーンで集客しなければ、制作費を回収出来ないというのなら、それに沿ったライトな物語を用意するべきだと思うし、逆にきっちり話で見せるなら、もっと描くべきディティールはあったはずだと思う。これは僕が理解力に欠ける点を差し引いても譲れない感想だ。
それと、見終わって感じたのは、監督に対する「ジャパニメーション」の影響力。特に「押井守」の影響だ。プロットとして夢を扱うところ、世界が崩壊する演出は「うる星やつらビューティフルドリーマー」を彷彿とさせるし、物語の「不透明さ」は近年の氏の作風の代名詞のように思える。渡辺謙および、冒頭で日本語のセリフを用意しているのも、日本に対する思い入れの顕れじゃないかと思う。
だから余計に僕みたいに「今の押井守」や「いわゆるジャパニメーション」と呼ばれる作品が気にくわない人間には面白くない。
図らずも世界レベルで評価される方向性と、僕の価値基準が大きく乖離していることを露呈させる結果になったが、まぁそれはしょうがいない。僕の好みは単純でわかりやすいお金を掛けた映画なのだから。だったら何でこの映画を見ようと思ったのかって?
さっき書いた通り、「スペクタクルではない」ことは知っていたけど、「サスペンスでもない」ことは知らなかったんだよね。
どちらかと言えばインセプションは「ヒューマンドラマ」に近い。派手なVFXと豪華な俳優と、鳴り物入りの風呂敷を広げてはいるが、内側はその物語性にある。たぶんノーラン監督や昨今の押井守作品が好きな人なら、僕とは全く違う感想になると思う。
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