100点の美味しさ
美味い物を食べると人は言葉をなくす、みたいなことを目耳にしますが、いやいやどうして。
自分の中の記録がこうもあっさりと抜かれる日が来るとは。
仕事場でパートさんから、
「美味しいよ~!」
と言われてもらったポンカンひとつ。大きさは直径6~7cmほどで、いわゆるみかんの標準的なサイズ。気温もあってかかなり冷たく、最初は食べるのをためらうほど&「美味しい」なんて最初からハードルを上げて大丈夫か?とも思いつつ皮に爪を入れると、
プシュッと飛沫が舞う。
左手が一瞬にして水気を帯び、ポンカンの甘い香りが立ちこめる。
中の実を半分に分け、伊集院のラジオを聞きながら一口。
※ちなみにこのラジオは仕事場では普通のことなので念のため。サボってたわけじゃないよ。
「!?」
一瞬脳が思考を停止する。そしてその直後に、
「甘い!そして美味い!!」
頭の中を高速回転でページが回る。あの時ホテルのバイキングで食べたリンゴは美味かった。あの時車の中で食べた梨も美味かった。最高に美味しい桃はやはり果物のチャンピオンだと思う。巨峰は安定感があっていい。スイカも超絶美味いヤツってあるけど、数年に1つあるかないかだよな・・・。
こ、このポンカンの美味さは、、、いや、、、もしかして、、、まさか、、、
最上位!?
ラジオを止め、目をつぶり、二ふさ目を口に運ぶ。厚すぎず薄すぎない薄皮。ひとつぶひとつぶからはじけるように流れ出る汁。冷たさもこれ以上望めぬほど適温で、
こ、これは、、、この味は、、、ひ、100点だ!!!
魂の叫びが事務所にこだまする。
・・・
美味しい物ってのは生きていれば何度か巡り会う。中には「美味しいよ」と言われて食べるものもあるし、何気ない物に感動することもなくはない。それが肉で魚であれ。
だが、果物の美味さというのは、ワインに価値の差があるように、つまりは天然の奇跡だ。同じ畑、同じ季節、同じ木からなら常に同じ味の実が出来ると言うことはない(ある程度はあるだろうけど)。食べるときの腹具合もあるだろうし、直前に何かを口にしているかどうかでも全く味は変わる。「本当に美味しい」と思っても、どこかに「それ以上があるかも」と思わせるのだ。だから僕は食べ物にはほとんどというか、数十年に一度、へたしたら過去一度も100点を出したことはなかった。
だが、いくら考えてもこれ以上の味は想像出来ない!
目をつぶり、ひと噛みひと噛みを確かめるように味わう。高級焼き肉や最高の中トロは、きっと今後の人生でも食べるチャンスはきっと来る。でもこのポンカンのこの味は、たぶん、きっと今だけの奇跡・・・。
不味い物を黒とし、様々な美味しさに色を付けていったとき、例えば肉なら真っ赤、トロならピンク、果物はそれぞれの原色に近い鮮やかな彩りが頂点になるとしたら、このポンカンは、
最も美しいオレンジ色が、感動と興奮によって光り輝くスーパーサイヤ人になったかのようだった。
何かでお礼をしなければ。家族にも食べさせてあげたい。でも感動がわからないヤツには食わせたくない。もはや、
芸術的な味だった。
当然★★★★★。2012年食べ物部門の1位だ。
PS.ちなみにこのポンカンの出所は、養蜂場のプロポリスなんちゃらを毎年何十万円分も買ってるという方が、無料で送ってくれている物らしい。僕の勝手な想像だけど、たぶん市場にはそれほど出回らない、ごく一部の人達の物なんじゃないかと思った。普通に買ったミカンがこのレベルというのは、博士からもらったポケモンが色違いみたいなもんだ。まずあり得ない。
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