チョコレートの話
バレンタインの夜娘に「チョコを作る心構え」について、切々と語ってしまった。娘は将来「ショコラティエ」になりたいという(子供ライクではあろうが)夢があるらしく、たかがバレンタインと言えども、「それなりの気合い」で臨んでいたようだったのだけど、
戴いたチョコにキタンのない意見を言うのは、間違ってないだろうと思った次第。
とは言っても、多くの女子がそうであるように、「せっかく作った物にウダウダ文句を言われるのはまっぴら」というニオイも当然あるわけで、そこを上手く刺激しないように話すのは、それはそれで骨の折れる所業であったが、まぁ久々にガッツリ娘と話が出来たのは、まんざらでもなかった。
記憶力に支障があるので、何を話したのか曖昧この上ないのだけど、思い出すままに書いてみる。「話し合った」というよりは「僕がひとりでしゃべってた」ようなもんなので、ここに書くのは、
クリスの手作りチョコ観
というわけである。
まず一番強く伝えたかったことは、
手作りチョコも料理であり、料理は愛情である。
愛情とは、「食べる人のことを思う気持ち」。
女子がお菓子なりチョコなりを作る際、まず思うのは「かわいいと思われたい」とか「作りたい」ということであり、「美味しいと喜んで貰いたい」という感覚は実はかなり低い。
その最たる例が「クッキー」だ。
クッキーは女子が作るお菓子の代表とも言えるアイテムであり、かつそのハードルの低さから、入門用に最適なお菓子でもある。が、
クッキーほど男女間でバリューが違うものはない。
かわいい女子が作ってきてくれればそりゃ男子は「嬉しがる」に決まっているし、「美味しい?」と聞かれたら当然「めちゃ美味い!」というに決まっている。ただそれは、
味に美味いと言ってるわけではない。
シチュエーションと恋心と下心が「美味い」と言わせているだけで、実際女子間のクッキーのやりとりと男子とのそれは、
全く別の価値観で行われている
ということを理解せねばならない。特に娘に共感を得たのは、
あんたはコンビニでクッキー買う?
買わないのである。そもそも置いてない場合もある。クッキーなんて、
実は食べる側は何にも喜べない、「負のアイテム」なのだ。
素で美味しいのは「ミスターイトウのバタークッキー」くらいのもんなのだ。
※あくまで私見
あとぶっちゃけトリュフとかガトーショコラとかも個人的には×というか、「好んでバクバク食べるもんじゃないと思う」。そもそもクリスみたいなブサメンはバレンタインのなんたるかを語る資格などハナからなかったわけだけど、
美味しいものを食べることに関しては一家言ある。
娘にも問うてみた。
例えば友チョコを5人で持ち寄ったとき、自分のが一番みんなから美味しいって言われたら嬉しいよな?、と。
答えはYES。超YES。やっぱり「美味しいと思われたい」という気持ちはあるのだ。だったら、
美味しいチョコとはなんなのか、美味しくないチョコとはなんなのかを改めて自分に問うべきなのではないか、と。
例えばトリュフ6個入り500円のバレンタインライクなチョコと、一袋お徳用500円の「パイの実」。実際置いてあって手が出るのはどっちなのかって話。好きな子とかバレンタインとか抜きにして、単純に自分が食べたいのはどっちなのかって話。
超パイの実でしょ、ジッサイ。
そこでトリュフを手に取る様なヤツとは正直友達にはなれないと思うのワタシ。
娘がくれたチョコの中で一番美味しいかったのは、クマの型で作られたミルクチョコに、チョコクリスピーが砕いて入れてあったもの。ムクのチョコだと思っておそるおそる噛んだら、思いの外軽い食感がとても食べやすく、やわらかく、美味しかった。
次に食べたムクのホワイトチョコのヘビーなことと言ったら、、、
ホワイトチョコはそれ単体ではそもそも甘過ぎて、重すぎる。だから市販でも板チョコを覗いてほとんど「コーティングくらいにしか使われてない」わけで、大手お菓子メーカーだけでなく、いろんなコンビニスイーツを鑑みても、
数多くの試作品が作られる課程で、「ホワイトチョコの立ち位置」ってのが決まっている。
もっと言えば、クマのミルクチョコとホワイトチョコ、どちらも試食したのかって話。自分が食べてみて美味しいかどうか。
バレンタインのチョコって本命義理チョコ友チョコに限らず、試食とかしてなさそうじゃね?
「美味しいものを食べて貰おう」という「喜んで貰おう(美味しいことを)」という気持ちがあるなら、例えば塩や醤油の「塩梅」を加減するように、味見をするのは当然のこと。プロだって小さじにすくって加減を見るのに、素人が味見なく美味しいバランスに仕上げられるわけがないんだよね。
特に女子が。
そう言うところが漠然とだけど、パティシエに男性が多い理由な気もする。女子はとかく自己完結しまいがちな面が強いというか。もちろん単なる僕の私見に過ぎない可能性も高いけど。
※ちなみにこのくだりは娘も概ね同意だった。
クマのチョコが美味しいと言っても、「じゃあチョコクリスピーのバランスをもっと増やしてみたらどうだろう」って考えて欲しいんだよね。倍にしたらどうか、むしろチョコよりチョコクリスピーが多かったらどうか。
見た目が悪くなるだろうけど。
※チョコクリスピーがまだらだから。
でもそう言うときこそ、外側にコーティングすればいいと思う。まぁ中がかなり甘い分、外はホワイトよりもビターの方が合いそうな気もするけど。
で、結果クマチョコ3個でもいいんじゃね?美味しいなら。
友達が、例えば男子がチョコを貰って食べるとする。そこで「お、コレ美味い」ってなった場合、もし近くに友達がいたら、「ソレ」を食べたいと思うと思うんだよね。
どれもがどれも最高に美味いなら別に選択肢があってもいいとは思うけど、
そこまでのエネルギーも情熱もなかなか得難いとも思うのだ。ひとつ、とにかく自分が自信を持って美味しいと思えるチョコを仕上げて、それをあげてみたらどうなの?と。
個人的には、ガーナや明治ミルクチョコレートをベースにするのは悪くないと思うけど、やっぱりムクで作ると重いから、
中にシフォンケーキとか、ビスケットとか、それこそクッキーとかを入れて、アンコのようにしたらいいんじゃないかと思った。なんなら食パンだっていいと思う。食パンをトーストにしたものを角切りにして、そこにバターを塗って(チョコが染みこまないように)入れるだけで、
かなり美味しそうな気がする。軽い食感とバランスで。
チョコからは離れるけど、砂糖を使ったお菓子、「そのまんまレモン」にも思うことがあった。当時パートさんに「これと似たの作れる?」と作ってもらった「似たそのまんまレモン」の、
残念だったこと、、、。
例えばレモンにはハチミツと相場が決まっている。だけど、「トマトに砂糖」という発想はそれまでの僕にはなかった。
マルハニチロのトマトゼリーは、「砂糖漬けトマト」を使っている。
メープルシロップはハチミツよりもクセが弱くて、嫌いじゃないけど、でもただケンタッキーのビスケットやホットケーキに掛けて食べるだけが「メープルの生き様」であろうか。きっと違うと思う。トマトにもレモンにももしかしたら砂糖やハチミツ以上に合うかも知れない。
今日、1日遅れのバレンタインということで、かみさんがチョコフォンデュをやってくれたのだけど、
普通にトーストが最高だった。
トーストに湯煎したチョコを付けて食うだけで、「これ以上のチョコレート菓子はそうそうないだろ」というレベルに達してしまう。食パンはそれよりかなり落ちる。バナナはやや落ちる。イチゴはそこからより落ちるし(つかイチゴってパワーがありすぎてチョコをつけるくらいじゃバランスが取れないんだよな)、ネーブルは個人的には論外だった。ブツはなかったけど、たぶんリッツとかも普通に美味しかっただろうと思う。
ここで学ぶのは、「トーストのカリッとした歯触り+トロっとしたチョコのハーモニー」と、「バナナのちょっぴり冷たい+チョコのちょっぴり暖かいハーモニー」。
回転寿司だって「シャリは人肌、ネタは冷たく」の方が美味しいと思うわけで、「固さと温度」は美味しさに大きく影響する。今日パートさんのひとりが、「娘に貰ったチョコが美味しかった。レンジでチンして食べるヤツだったのだけど、、、」と言った。
そりゃ美味しいだろうと思った。
その一手間を掛けることで、「0が100になりうる」。美味しく食べて貰うために為すべきことがあるなら、それは成さなければならない。
美味しいものを食べるというのは「道」だと思うから。
・・・
そんな話をひとしきりした翌日に、今日のチョコフォンデュだったので、しみじみ「美味しいなぁ」と思うことが出来たって話。
あ、あともうひとつあった。よく手作りのお菓子とかに振りかける銀色の丸いツブあるじゃん?「アラザン」って言うらしんだけど、あれは正直、
世の中に不要なもののひとつ
だと思うんだよね。今回のバレンタインに戴いたものの中に、それが付いてたのがあったのだけど、
絶対不味い。
柔らかな食感を台無しにする「ガリッ」とした歯ごたえ。アサリの中に砂が入ってたような、卵焼きの中にカラが入ってたようなそんな感じ。そんな「不純物」を好んで入れるという感覚・・・。
食べる人のことを少しでも考えたら、絶対入れないと思う。
明らかに「作り手が入れたい、掛けたいから」。
娘にも大いに同意してもらえた。「自分が美味しいと思えないもの」を手作り感を出すためとか、見た目が良くなる(実はちっともよくなってないのだが)と思って使うのは、もはやある種のイジメというか踏み絵みたいなもんじゃないかとすら思うんだよな。
ワタシのこと好きなら、美味しいでしょ?
怖い怖い。チョコばかり食べて口が甘ったるくていけねぇ。ここらでせんべいが一枚怖い・・・。お後がよろしいようで。
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