まぁ短い話。趣味でもつぶやきでもなく、どっちかというと仕事の話。僕も42歳。普通この程度のことは自分で決断すべきことだと思うし、実際やってる人のが大多数だと思うのだけど、、、
商品の値入れについて。
「値入れ」とは、要は下代(仕入れ値)から、上代(売値)を決めることを指す。まぁ多少違うかも知れないけど概ねそういう感じのことを指す。
例えば50円で仕入れて100円で売れば、値入れ率は5掛けということになり、100円で仕入れたのに50円でしか売れなかったら大赤字ということになる。
もう少し細かい話をすると、
50円で仕入れる品は当然1個単位ではない。僕の扱う品で言えば、一番大きなロットのもので「電子ライター」などがあるが、これは1セット1000本単位だったりする。
※下代は50円じゃないですよ。念のため。
逆に1セット3枚とか、単品で購入可能なものもあったりするのだが、まぁたくさん買えば安くなるが、概ね衣料品に関してはセットが決まっている。つかあんまし細かくなかったな。まぁ今回僕が悩んでいるのは、その値入れについてだ。
ご存じの方も多いと思うが、昨今の為替の変動は著しく、問屋さんの出す値段も、毎年のように変動する。中には定番的に変わらない品もあるが、逆に大きく変わるものもある。
原油がガッツリ上がったりすると当然その次のシーズンの石油に絡む商品の値段もガッツリ上がったりする。ちなみに「石油に絡む商品」には、トイレットペーパーとかも含まれる。なんで「石油と紙が?」と思われるかも知れないが、取りあえず詳しいことはわからないまでも一点、
トイレットペーパーの運賃はメチャ高い
これだけは言える。クソかさばるので、大抵は「運賃はメーカー負担」だったりする一方で、そのロットは大きく(あんなデカイのに240個セットとか<1個12ロールね)、そりゃ運賃≒ガソリン代が上がれば値段も上がるよなぁという感じだ。
ただ、もちろん全てが全て値上がっていくわけではなく、例えば今まで中国で作っていたものを、ベトナムとかベトナムとかベトナムとか、、、まぁ僕が知らないだけなんだけど、他の外国で作るようになって、中国の人件費アップを吸収してあまりあるほど安くなったりすることもある。
さて問題です。みなさんは、
去年1000円だった品が、今年900円になったら、嬉しいですか?
ハイ答えは「嬉しい」ですね。わかります。では、
去年の1000円の品と、今年の900円の品が並んで置いてあったら、どちらを買いますか?
ハイ答えは「900円」ですね。新しくて安い、もう言うことないじゃないですか。当然でしょう。
では、去年の1000円に「欲しい色があり」、今年の900円に「欲しい色がない」場合、あなたはどちらを買いますか?特に「どうしても欲しい色」だった場合、、、
気持ちよく1000円の去年の品を買えますか?
これが、去年も今年も1000円に値付けされていて、どちらのパッケージも同じで、特に去年の品であることがわからないようなレベルの品であったなら、きっとあなたは迷わず「欲しい色の去年の品」を買うでしょう。特に他店の値段を熟知してなければ、きっと損したとも思わないはずです。
これが逆ならまだわかります。「去年の売れ残りが変な色ばかり」で、「今年のカラーが流行のもの」ならば、売れ残りが見切られて安くなってるのはむしろ当然と考えるでしょう。値段が今年高くなっているのも当然と考えるはずです。
でもそんなことばっかりでもないんだよな。
あるお客様は当然「少しでも安い方がいいに決まってる」と思われるでしょうが、同時にそれが「同じ品なのに複数の価格が存在する」ことになり、不信感やとまどいを引き起こす、「安心出来るお買い物」の対局にある場合、
どちらがお客様に対してフェアだと言えるのでしょうか。
当然店の利益を考えたら、高い方に合わせるのがよさそうと思われるかも知れませんが、競合他店が逆に安い方に合わせるかも知れません。だったら安い方に合わせればいいのかというと、結果粗利がどんどん下がってしまって、それはそれで困ってしまう。
常に入った値段に応じた価格を設定する
というのは、僕的にはとてもフェアだと思うし、例えば恒常的にタオルを大量にご注文下さる方などは、設定した値入れ率に則して、その時その時で「ウチが出来るベスト」な価格をご提案するようにしています。それこそが信頼に繋がると思うし、
上がった時だけそのままにする
のは、絶対おかしいと思うわけです。でも一方で、少しでも儲けられるところで儲けないと、、、というのも事実なわけで、地味に頭を悩ませているというわけなのです。
あともう一件こういうケースもあります。というか今日まさにあった話なのですが、
厄年のタオルを毎年ご注文下さってるお客様がいらっしゃるのですが、このタオル、一昨年から去年に掛けて、ガッツリ値段が下がりました。ネット通販の相場はわかりませんが、具体的には157円から121円に下がりました。
※特に一昨年は綿の値段が高騰していた時期だったこともあります。
そして今年も同じようにご注文頂いたわけですが、その時点では問屋さんから「今年も去年の値段で行けるかわからないですよ」と言われていて、お客様にもその旨をお伝えしていたわけです。「もしかしたらちょっと上がってしまうかも知れません」と。「中国の人件費や原油の高騰、為替の関係もあるし」みたいな。
※後者はお客様には言ってないけど、問屋さんにスゲェ言われる常套句。ホントかよ、と思うが、世間一般ではまぁホントなのでしょう。
その後問屋さんから、「去年の値段で何とかやりますわ」と返答があったので、お客様にその旨お伝えしたところ、「ありがとうございます(^^」と。お喜び頂いたわけです。高くなっても仕方ないと思っていたところに、据え置きのご連絡、そりゃ嬉しいでしょうそうでしょう。
しかし!
その直後に問屋さんからまた連絡があり、
どうやらもっと下げられると。
具体的には、プリントをする「版」の型代が、去年のとは「違うんだけどちょっとしか違わない」から、まるまる新しく起こすより安いと。でもって担当が、たまたま僕と親しかったこともあり、「今回だけ勢いで安くしてくれた」と。
さあこの不況の今、あなたが店主ならお客様にその値下げ分を100%還元できますか?
この場合のフェアは当然「する」でしょう。んなこたぁわかります。でもお客様は既に「前値で喜んで下さってる」わけです。そして今回値段が下がった分は、「去年注文していたから」&「僕が仲のいいバイヤーに注文したから」という、他店では付けいる隙がない状況。特に同じ問屋で同じルートを通って発注した場合、同じ値入れであっても去年の僕が提案した価格になるわけです。ちなみに去年の値入れは73掛け(73円で仕入れたものを100円で売るという掛率)。いろんな業種がありますから、この掛率を高いと見るか低いと見るかは微妙なところかも知れませんが、衣料品としては決して儲けすぎてはいないラインだと思います。
ああ去年よりちょっとだけ安くすればいいのか、いやいや去年と同じで出来るって一旦は言ってて、それを覆すのは逆に信用に欠けるのではないか、もしかして去年ももっと安く出来たのにしなかっただけ、なんて思われるんじゃないか、、、
いろんな気持ちが渦巻きます。
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ついでなのでもう一件仕事絡みの話をします。
学生衣料の中の体操服というのも、この時期とても重要なアイテムです。ただこれは、ネットで格安に買える制服と違い、地域密着の度合いが強く、僕らもそうですがメーカーさん、問屋さんもかなりの「利ざや」であったり、専門的にそれだけをやっているところも少なくありません。
ただ当然のことながら、同じような商品をより安く作る人が出て来れば、学校側や親御さんはそれを歓迎します。今まで3500円だった品が2500円になるというなら、それはもう手放しで嬉しいでしょう。嬉しいはずです。
値段がただ安くなるだけなら。
でも実際はそんな簡単な問題じゃないんですよね。なぜなら、
安い物が悪い物である可能性も低からずあるから。
以前切り替えた際には、それまでの体操服が3年着て全然なんともなかったのが、
2年で袖口や衿がボロボロになってしまう
という事態を引き起こしてしまいました。切り替える際には当然値段も安く(窓口になる小売店はウチのままでも、問屋さん、メーカーさんは「ぜひウチに!」と競争力のある価格を提案してくるから)なりますが、その結果、品質まで著しく落ちてしまったりすると、、、
買い換えが早く起こるので小売店としてはちょっと嬉しい<本音
でも、
ご兄弟がいらっしゃる方や、3年持たない品質はどうかという意見も当然出る
結果その体操服は、わずか3年で「品質向上」を余儀なくされました。たぶんコストも上がっているはずですし、粗悪品の在庫も全てメーカー処分で、価格は当然据え置きです。メーカーサイドから言えば、値入れをもう少し悪く(小売り店にも負担させる)させたい意向もあったでしょうが、この場合、「不完全な品」を提案した責任は、100%メーカーにあるので、なかなか声に出しては言えなかったというところでしょう。
ちなみに、この件に関しては、旧品のメーカーさんがかなり良心的な価格設定であったため、新商品に対して上代の値下げはほとんど起こらなかったのですが、別の学校のケースでは、この「値下げ」が大幅に為されることもあります。
ウチとしては当然売価が下がる=粗利額が下がるのでツライ
でも、
新しい体操服に切り替わることで、兄弟や友人からの使い回し等が起こりにくくなり、新たに買って貰える方が増える
とも言えます。まぁそれはこちらの都合なのですが、学校vs問屋、メーカーという構図を見ると、これとは別の視点が出てきます。
旧品のメーカーはボロ儲けしていたのではないか。
新商品を提案してきたメーカーに対し、旧品メーカーも当然価格をグッと抑えて「提案し直して」来ます。
だったら最初から安くしろよ、
という学校側の意見。ごもっとも。でも、思い出して下さい先ほどのタオルの話を。
一度は学校もその価格に納得しているわけです。
その前の体操服から変更する際、価格も品質も必要十分と判断してGOサインを出しているはずなのです。そういうものですから。
一旦決まった価格を理由もなく下げられるわけもないわけです。
でも、
戦うためにはそれも必要だったりもする。
結果、新しいメーカーの新しい体操服になり、価格も大幅に下がりました。決まった直後に「反射テープを付けてくれ」と学校に言われ、メーカーは、「価格据え置き」のまま、それを飲んでくれましたが、
それだってタダじゃないからね。
1個2個電気屋の店頭で値下げ交渉するのとはわけが違う。
まぁシェアが低いメーカーだから、ここを足がかりにこの地域の体操服をどんどん「取って行きたい」という意図もあったのかも知れないけどさ。
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ちなみに僕ら小売り店は、そうした「学生衣料戦争」に無関係かというと当然そんなことはないわけです。先ほども申しましたとおり、ネットで制服を格安で購入出来る昨今。誰もが誰も「着てから決めたい」を「より安く」より優先してくれるとは限りません。
お店は、「冬服ご成約の方に夏ズボンプレゼント」や、「とにかく安く」「金券プレゼント」「キャッシュバック」など、さまざまなプレミアムを提案してお客様獲得に命がけなのですが、自分が「1円でも安く買いたい」と価格.comを調べる一方で、お客様には「価格を最優先させないようにしたい」という二律背反的思考で動いたりもします。
学生衣料は決して安い買い物ではありません。制服、体操服、バッグ、帽子、給食用品、靴下、、、ウチは扱いませんが靴や体育館シューズも必要です。ネームを入れたりしっかり個別に採寸、発注、品渡しに至るまでミスは許されません。だからこそ、
それなりには儲けが欲しい。
凄くボロ儲けしたいわけじゃありませんが、価格競争でネットと戦う気はさらさらないわけです。売ったらそれっきり、なんて商売は、地域密着の店にはそもそも出来ませんから。
だから僕がやってる「販促=販売促進」は、非常に僕向きな、僕の武器を使った物だったりします。
ウチの店のダイレクトメールは、クソ長い。
A4コピー用紙5枚びっしりに、「今の学校のトレンドと規則」を書いて送ります。毎年店に来る「体験学習の子」に詳しく話を聞いたり、学校まで出向いて先生に聞いたり。校長が変わると校則そのものが変わることもありますし、2月にある入学説明会よりかなり前の11月にはお届けします。
特に僕が自信を持って武器にしているのは、「メーカー別の制服比較」です。テレビなどの家電にはおなじみの「ある、ない」の機能表示、、、ではなく、価格、スタイル、黒さなどのペンタグラムを独自に作ってご提案しています。個人的に視覚で総合評価が出来るから、ペンタグラムは大好きなんですが、最近あまり見かけなくなりましたね。どうしても個人の嗜好とかメーカーとのしがらみが出ちゃうからなのかも。
そんな手紙を「しっかり読んでもらう」ことで、恩を売るわけですね。もちろんそこで情報を得るだけで、買うのは他で、という方もいらっしゃるとは思います。でも、やっぱり安い買い物じゃないということは、同時に「安心感の占める割合」も大きいわけです。
ウチの店はホント今厳しい状態にありますけど、やっぱり「人対人」の部分で、少しでもお客様に歩み寄れるようにがんばりたいなぁとは思います。まぁだからこそ、
どっちがフェアなんだ!?
って話になるんですけどね。
つか誰だ!?短いなんて言ったヤツは。
・・・結局先ほどのタオル、100%ではないですが、値段を下げてご提案し直しました。つか今思えばその「お客様」は、毎回寄付をガッツリ集めている地元の厄年会なわけで、こういう時くらい儲けさせてもらっても全然罰は当たらなかったかなって感じではありましたね。
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