未来少年コナン
オフの友人とひとしきりオススメアニメの話で盛り上がり、僕がトップをねらえ!および2を力説したあと、「コナンは見てないんだよねぇ」と呟いたかと思えば、
「はぁ!?」
素っ頓狂な叫び声が半径5ブロックに鳴り響く。「5ブロック」がどの程度の広さかは知らないが。「オレ的ナンバー1アニメなんですけど!」「カリオストロで面白かったシーンが欲しいところで出る」「コブラや万丈みたいな人間離れした強さがたまらない」等々ヤツのターン。
でも結局いつ見ようとしてもなんかテンションが上がらないというか、メカもないし、なんか平和的というか、
ドラマ性が希薄な印象が拭いきれず、
漫画のワンピース同様、チャレンジはするものの、継続して見続けられた試しがない。
30分持たなかった作品だった。
でも、最近のネタでも書いたけど、価値観ってのは歳と共に移りゆく物。以前楽しめなかったツボがハマったり、以前泣けなかったシーンで号泣するかも知れない。ジジイ化はわがままと飽きっぽさを冗長させる一方で、ひとりの同世代の人間が「最高」と称する作品が「最低であるわけはない」。貸してくれるというので腰を据えて見ることにした。
ちなみに本放送は1978年。僕が小学2年の頃であり、ガンダムの本放送とほぼ同時期だったが、当時「テレビキチガイ」と親父に称されるほどアニメや特撮が大好きだった僕がスルーした数少ない作品だったりする。監督のネームバリューも皆無であったし、
※未来少年コナンは宮崎駿初監督作品。
NHKのアニメという点でもテンションは低めだった。
※ちなみにあと番組のキャプテンフューチャーもそれほどフックする内容ではなかったが、その次のニルスのふしぎな旅はガッチリ僕のハートを掴んだりした。でもって次の名犬ジョリィでまたこの枠から離れ、その次の太陽の子エステバンで再燃焼という、上がったり下がったりの激しいNHKアニメだったんだよな。
開幕早々「近未来2008年」という言葉にクラっとする。核ミサイル以上の威力を持つ兵器によって、地球は絶滅の危機を迎えたが、生き残った人類もいて、コナンはそこで生まれたひとり。別に「超人類」でも「ニュータイプ」でも「遺伝子操作されたクモに刺された」りしたわけでもない普通の男の子。
全然余談だけど、今回の電話で「コナン」というキーワードが出た際、お互いが全く「他のコナン」を対象としていなかったのがちょっと愉快だったな。名探偵コナンくんでもなければコナン・ザ・グレートでもコナン・ドイルでもない。まぁ話の流れでナディアだとかエステバンだとかから出たから、当然と言えば当然だったのかも知れないけど。
余談だけど、名探偵コナンを見る度に、自分が歳を取ったことを痛感する。他のどのアニメ、アンパンマンだろうとドラえもんだろうとしんちゃんだろうと感じないが、名探偵の方のコナンだけはダメだ。心の底からつまらない。娘が見ていても琴線に触れるどころか「琴まで2光年くらいある」感じ。でもファンは多い。凄く多い。オレ的世界七不思議のひとつ。しまじろうとかにこにこぷんの方がマシなくらいだ。
閑話休題。
再生を始めてまず自分の記憶が強く揺り起こされた。僕がコナンを見なかった理由。フックしなかったワケは、、、
主題歌が超ダセェ。
もうダサ過ぎてダサ過ぎて常日頃ため息を全くつかない僕ですら、「はぁ~」って感じになるレベル。牧歌的というか子供向けというか、例えて言うなら、
おばあちゃんがくれるお菓子みたいな歌。
オレが求めてるのはコレじゃないんだよな~みたいな。アニソンにはトリトンとかジムボタン、バビル二世などイカス曲に枚挙いとまなしだった分、著しくここでテンションは下がり、
ジムシィのデザインにも失速感が加速。失速感なのに加速とはこれいかに。
コナンにも言えるんだけど、「りりしさ」が薄い。カリオストロのルパンとほぼ同時期で、かつ作監も同じ大塚康生だけに、似た表情はいっぱい出てくるのだけど、自分の中にあるルパンが「ポスターのりりしい表情」である一方で、コナンの方はお世辞にもかっこいいとは言い難い「まるでじゃりんこチエ」のような顔。
※ある意味トトロの「めい」の顔にも通じるんだけど。
※ちなみにじゃりんこチエの作監も大塚康生。でも僕は大塚康生の躍動感ある絵自体は大好き。「カッコイイ顔がかっこ悪くなってるところ」だけがどうにもこうにも・・・。
また、ひとしきり勧められた「コナンの強さ」に関しても、
これでは僕は満足できない。
そもそも「普通の人間」設定なのだから、鉄格子を引きちぎったり飛行機から落ちても死ななかったりが「ない」のは当然なのかも知れないけど、それでもなんつか、
弱い・・・。
顔に青タンが出来たり、簡単に捕まって閉じこめられたり、「強いという先入観」があった分よりその弱さが際だってしまった感じ。でも、
5話までガマンして見てくれ
と言われたので、がんばってそこまで見続けたところ、
ようやっと面白くなってきた。
主題歌はオールスルーでコナンの強さにも幻想はなくなった。表情に抵抗がある場面も少なくなかったし、「イヤなヤツ」も出てくる。
でも、話はズンズン面白くなっていく。
空飛ぶゆうれい船のようなレトロなタッチの世界は居心地が良く、「のこされ島」に始まり、凪、嵐、バラクーダ号の船内、夢の島からの近未来都市インダストリア・・・。場面のメリハリがよく出ていて、確かにメカの魅力は薄かったが、「この先どうなるのか」というタイミングで「次回へ続く」のがイヤらしくも上手い。
悪の根元レプカやその手下モンスリーだけでなく、「一見人が良さそう」なダイス船長が意外と自己中心的で嫌なヤツだったり、でも一方でその部下ドンゴロスがイイ感じにイイヤツにシフトしていく感じは嫌いじゃない。ジムシィのルックスは今でもあんまし好きじゃないけど、時折、、、っていうかわりと頻繁にこぼす、
「コナンいいなぁ、、」
※ラナと仲良くしてる二人を見てボソっと、、、
のセリフは、何とも言えない哀愁と共感を誘い、テレビのこちらで思わずニヤリとしてしまう。「だよな~」と。
また、ラナがコナンにここまでゾッコンラブだったのも嬉しい誤算。昔の牧歌的アニメ、宮崎駿参加作品としてハイジが挙げられるけど、ぶっちゃけハイジとペーターにラブ要素は皆無だったと思うわけで、
よもやキスシーンまであるとはっ!
吐血!って感じである。いや、鼻血っ!って感じである。
とにかく主人公がヒロインから好かれまくってるというのは、見ていて本当に良い塩梅で、そこを大きなモチベーターにして話数をどんどん重ねていく。
緩急の落差が強めで、平和なときはとことん平和で平凡な一方、天変地異並の大異変も「しょっちゅう起こる」<ちょっと言い過ぎ。ただ正直言うと、
1秒長ぇよ!
と言いたくなったシーンがかなり多いのがスゲェ残念。でも、ジムシィのイイヤツさ加減、ダイスの敵から味方にシフトしていく感じ、怖くて悪くて嫌なレプカがいいようにあしらわれる感じなど、
溜飲が下がるシーンがどんどん増えていく感じは、本当に悪くない。
現在12話まで見ているが、今後どう話が展開していくのか見当も付かないし、正直楽しみになっている自分もいる。重ねて言うけど、
ダメな部分は確かに、それも明確にある。
が、それと同時に「予想外によかったところ」もあった。
今のハイテンポ高密度のアニメに毒されてしまった今ゆえに、この作品に散見される負の印象が作品全体の「僕の」評価を下げてしまうのは、残念ではあるが致し方ない。当時リアルタイムで毎週楽しみに見ていればまたその印象は全く違った物になっていたのかも知れないが、
現時点でのクリス評価は、差引★★☆というところ。
もっともこれでも見る前は「★くらいしか価値を見いだせなかった」ことを思えば、かなり評価が上向いては来ているんだけどさ。つかコナン、もっと強くてもよかったと思うんですよ。ボク的には。
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映画や5、6話のショートストーリーと違って、2クール(26話)や4クールのアニメを見るのは、なかなかに体力を使うというか、見始めることへの抵抗感が強い。決断が要るというか、、、。まぁ最初から「1話だけ見よう」として見始めるのならまださほど抵抗もないのだけど、本作のように、
最後まで見てから判断して欲しい
的なものは、ホントハードルが高い。もしかしたらスゲェツライ時間の方が長いかも知れないわけだし。
でも幸いにしてコナンはほどなく「テンションが上向いていった」。「5話=2時間超」を「ほどなく」と言えるかどうかはともかくだけど。
ただ、序盤見ていて感じたのは、
ナディアとの強い相似性。
設定そのものは時代も違うし、ヒロインのキャラクターも主人公のバイタリティも登場人物のバランス
※悪者とか特に。
も全然違うのだけど、元は海外の物語が原作にあり、それを日本の、それも掛け値なしにトップクラスのクリエイターがかなり自由にアレンジを加えて産み落としたことが、結果として「似た印象」に繋がったのかも知れない。
つってもナディアの方が20年以上もあとの作品な分、テンポや密度は遙かに高くなっているけど。
つか今ナディアのウィキペ見たら「元々は宮崎駿がNHKに用意した企画」で、その後方やラピュタに、方やナディアになったというのだから、DNA的に相似性はあって然るべきだったのかも知れないな。
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