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2014年8月15日 (金)

よつばとを読み返す

あずまきよひこ原作のほのぼの日常マンガ。そんな説明はまず不要だろうが、あえて書いてみる。
当然のように全巻持っているが、中には2冊買ってしまった巻も。でもあえてそれを誰かにあげたり売ったりせず、本棚に並べてみるのもある意味よつばっぽいと思ったりする。
全巻通して読み返して気付いたのは、このマンガが一見日常のスナップのように見えて、その実ファンタジーだということだ。確かに海外で小さな子供を拾ってくることや、お隣に美人の三姉妹がいること、在宅の仕事で全くお金に困っていない&著しく子供の面倒見がいいよつばの父親など、普通ではありえないシチュエーションも多い。が、僕がそう感じたのは、
 多めに差しこまれた風景描写や、さもありがちな日常の出来事をあえて深く掘り下げている点。
「こういうことってあるあるだよね」と言わんばかりの親しみやすさと、相反するイベント密度。海に行き、プールに行き、キャンプに行き、、、いろんなところに出かけて、そのそれぞれが濃度の高い思い出を紡ぐ。
 実際ここまでの「良い思い出」は紡げない。
 ※不可能じゃないだろうけど。
でも、距離感が近い描写が、それを身近に感じさせ、錯覚させる。藤子F不二雄とは違うアプローチからの「すこしふしぎ」がよつばとには詰まっている。というか、「ふしぎ」ではなく、「しあわせ」や「おもしろい」なのかも。まぁそれだと「SF」にはならないけど。
キャラクターの立て方は、前作あずまんが大王の時から他とは一線を画するものがあったが、本作はそれすらも凌駕する。イヤなヤツはひとりもいないし、嫉妬やねたみと言った負の感情もほとんど出てこない。男女間の色恋沙汰に絡むシチュエーションもわずかながらあっていいエッセンスとなっているし、子供からお年寄りまで、ルックスが良いのも僕好みだ。もう見た目からして性格が悪そうなキャラはいない。
あずまんが大王の時にはあえて見せないようにしていた(と思われる)男性キャラもしっかり書いていく一方で、メインヒロインであるところの風香に男のニオイがほとんどしない安心感も地味に重要だ。ロリコンターゲットのマンガではないが、男性が潜在的に持つ独占欲のようなものに触れないように、深く配慮されているなぁとも思う。エロくないけどエロく、エロいけどエロくない。ある意味宮崎駿が描くヒロインにも通じる不偏さみたいなものも感じる。
※フィオと風香は、冷静に見ると共通点は多い気がする。年齢、表情、性格、プロポーションも。知識や能力は違うけど、それは重要ではないし。
あと、単純に画力の高さも重要なポイントだと思う。当時はそれほど感じなかったけど、建物や風景画のデッサン力は、いわゆる4コマ日常系のマンガ家のそれとは比べものにならない。「魂はディティールに宿る」とはどこの誰の言葉だか忘れてしまったけど、気持ちをそっちに向けてページを凝視すると、
 あだち充や庵野秀明に通じる凄みが、一枚の風景からにじみ出てくるよう。
なじみ深いエピソードと、必要充分な画力、魅力的なキャラクターと、巧みなセリフ回し。よつばとの繰り返し繰り返し楽しんで読める「再読性」の高さは、冷静に考えてみれば当然のことだったのかも知れない。
余談だけど、その昔どこぞの外国人が、「日本の漫画やアニメは素晴らしい。が、幼児が出てくるものだけは例外だ」みたいなことを言っていたのを、よつばとを読む度に思い返す。
 このマンガのことじゃねぇだろうな。
もしそうだったとしたら、無理矢理にでも読ませたいといつもいつも思う。よつばとは傑作だけど、世間の評価はそれに追いついてないとも思うんだよな。よつばと★★★★☆。

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