夢から出た想像~その2~
楽しかったし、友達に褒めて貰ったので続きを書くことにした。続きと言っても死んじゃった後の話ではもちろんなく、前回の途中から分岐。自己満足指数は前回の方が高いので、「前みたいな話が読みたい、けど前より落ちる」覚悟がある人に読んで欲しい。娘の評判は、、、
あんまり僕がしつこく読ませては微調整を繰り返すので、
「飽きた」
って言われた。
せっかくだから冒頭からちゃんと書いた。前半はほとんど同じ。
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1985年9月。僕が中学三年の時の話。
・・・
一番最初に目覚めたのは僕だった。見回すとクラス全員が倒れている。ある者は机で居眠りしてるように、ある者は窓際で横になって、、。あわてて隣の女子を起こそうと視点を動かすと、ゾクリとした悪寒がする。
・・・なんだ、、あれ、、、
廊下のガラスが真っ黒く塗りつぶされ、、、いや、開いてるところも黒い。出入り口も黒い。
ハッとして振り向くと、、、
外も黒い!まるで教室が「丸ごと箱詰めされた」かのような、世界から拒絶されたかのような闇に包まれてる。黒、黒、黒、、、。
幸い教室の電気は点いてて、息苦しさはない。
とりあえずみんなを起こし、今がどういう状況なのか考える。教室から漏れる光が廊下を照らすこともなく、その先がどうなっているか、こちら側からは何も分からない。
重力は普通にあり、みんな立って歩くことが出来る時点で、この場所が宇宙ではないと想定するが、突飛な飛躍として「地球とは別の惑星かも」と言い出すヤツが出てくる。
教室にある電話の受話器を上げても、当然職員室で出る様子はない。というか発信音も聞こえない。当然この時代に携帯やスマホを持っている人間はいない。
食べ物もトイレもないこの闇に包まれた教室で、まず何が出来るか。何をすべきか。
一番最初に考えるのは、「この外がどうなっているか」だ。そう言いながら廊下に一歩踏み出そうとする友人を僕が制する。
どうなってるかわからないんだぞ!?
「廊下」になる地面があるのか、「生物が存在しうる空間」があるのかもわからない。手をかざしただけで、
教室から出た部分が消滅してしまうかも知れない。
この教室の外に「何があるか」「何もないのか」はわからないのだ。
まずほうきを使って、廊下側の床を叩こうとしてみる。ほうきを出した後、一回元に戻してみる。
ほうきの先はあるのか。床は叩けるのか。
ほうきは無事。だが教室と廊下の境目の闇は、まるで黒く染まったバケツに入れるように、全く先が見えなくなる。ひっぱっても「すすけたり」はしていないし、特に熱くも冷たくもない。
床は感触として確かにある。が、「音がしない」。思いっきり振り下ろしても、音もなくほうきはある角度で止まる。跳ねるような挙動もなく、衝撃全てが地面に吸い寄せられるような感覚。あきらかにいつもの廊下とは違う。
何か投げてみよう。
友人の一人が言うやいなや、消しゴムを「廊下だったところ」に向けて思いっきり投げつけてみる。廊下の向こう側の窓が開いていたかどうかは覚えていないが、角度的に「壁があったであろう場所」に向けて投げてみた。もしそこに「そのままの形で廊下があるなら」消しゴムは跳ね返るはず。もちろん角度が合わなければ「教室に跳ね戻ってくる」ことはないが、こういうのは割と投げた時に手応えみたいなものがあるもんだ。
消しゴムはスッと闇に溶けるように消え、それっきり。
じゃこっちはどうだろうと、校庭側の窓に向かって、今度は少し大きな定規を、ブーメランのように僕が投げてみることにした。
風切り音が教室の中から外に出た瞬間に「フッ」と途絶える。
「ヒュンヒュン」と教室の中では聞こえていた音が、闇に飲まれた瞬間に消えた。
・・・オレ、しょんべん行きたくなった。
男友達の一人が言う。教室にはトイレはない。食料がないことも大きいが、目の前にあるのは尿意だ。
どっちにする?
こっち。
校庭側を指さす友人。
男子に囲いになってもらって、そいつが窓から立ちションをする。
もはやここまで来ると、みんなの想像は裏切られない。
おしっこはそのまま闇に消えるだけ。
「すぐ飛び出したら、しょんべんまみれになるかもな」
冗談交じりに他の友人が言うが、誰も笑わない。根拠はないが、
しょんべんまみれにならない気しかしない。
「いつまでこうしていてもしょうがない。誰か手を出してみる気があるヤツいる?」
委員長がみんなに訊く。誰も何も言わない。
「だったらオレが出してみる」
委員長自ら買って出て、廊下側の出入り口に近づいていく。
「もし何かに引っ張られたりしたらイヤだから、反対の手、しっかり持っていてくれ」
「何かって何だよ?」
「んなもん知るか」
クラスの半分ほどの人間が委員長の半身を引っ張りつつ、委員長がチョップするように、廊下の闇を切る。
横から見ていたら、まるで「黒い紙から手が生えている」かのような映像。
手は何も問題なく、教室に戻ってくる。
安堵しつつ同時に詰め寄るみんな。
「どうだった!?」
「・・・よくわかんね」
急激に熱かったり冷たかったりすれば、その感覚は残るはずだし、何かに当たったり触れたりしてもわかるはず。わかったのは、「この闇の向こう側が存在する」ということ「その空間が意外と普通だということ」。逆にわからなかったのは、
この闇って、厚さがあんのかね。
黒い霧のように見えたが、いざ手を出してみた時の状況を思い出すと、「霧のようなぼやけた状態はなかった」。「ゼロかイチか」。もしかしたら厚みは無いのかも知れない。
・・・覗いて、、、見る?
「オレ無理、絶対無理」「私も怖すぎる。誰かお願い」。みんながみんな口々に言う。委員長ですらも、
「さっきオレやったんだから今度は別のヤツやれよ」
と言う。クラスが騒然となった瞬間、部屋の電気が消え、世界が完全な闇に包まれる。
「うわっ!」「暗っ!」「電気は!?」「なんで消えたの!!」
一人残らず喚き散らしているように聞こえる。「一人残らず!?」。
誰かが消した訳じゃないのか。
手探りで部屋の中を移動する。途中「キャッ」と女子の声がする。「わざとじゃねぇよ」「そんなのわかってるわよ!」
スイッチのところに移動し、おそるおそるスイッチを探る。
「教室のスイッチって、下がオフで上がオンだよな?」
「たぶん」「そうだと思うけど・・・」
「スイッチ、全部オンなんだけど・・・」
教室から一切の声が止まる。光も音もない部屋。一瞬「僕一人になったんじゃないか」と不安な気持ちが襲ってきて、
「オレ、居るぅぅぅ!!」
大声を出してしまう。でもみんなもその気持ちが伝わったのか、「わたしもいる!」「3年5組新井友之居る!」口々に声を張り上げる。
「全員居るか確認しよう」
委員長がみんなを制しつつ、点呼を取る。「1番、、」「2番、、、」「3番、、、」順に言っていくが、途中で声が止まる。「36番って、、、永井?」。「永井居ないの?」「ミキー!いないのぉ!?」
「あ、ゴメン、ミキ、今日休みだった」
一気に空気が和む。「つかこんな日に学校休むなんて、どんだけラッキーなんだよ」。友達の一人が本気7割の声で言う。
「あ、でもそれ、ホントにラッキーかどうかなんて、わかんねぇんじゃね?」
そうなのだ。今のこの世界が「本当にここだけ別」なのか「ここだけ残ってる」のかは、誰にも分からない。「幸か不幸かわからない」のだ。
「でもいざここまで暗いと、エッチなことしたいとか思わないもんだな」
なんだか急に素になって僕が言う。「サイテー」「今言う!?」女子から非難を浴びつつ、
「でも手とか繋ぎたいって思ってるの、ワタシだけ?」
クラスの中のかわいい方から数えて一人目(オレ基準)の高橋が言う。でも僕の学校の中三は、ここで「だったらオレが繋ぐ!」とはならない。田舎はそんなもんなのだ。
「みんなで繋ごう!」
上手く行けば僕が高橋と手を繋ぐことも出来るかも知れない。幸いにしてさっきの声は近くから聞こえたし。
暗闇の中、ひとりひとり手を繋いで輪になる。
「明るかったらウチら間抜けだよね」
「明るくないから間抜けじゃない!」
「そりゃそうだ!間抜けじゃない!っていうか心強い!」
「うんうん」
「吊り橋効果って言われてもしょうがない。ちょっと隣の男子好きになりかけてるもん」
暗闇の中で、みんなの空気が少しだけ穏やかになるのが分かる。
でもいつまでもこうしているわけにはいかない。
「オレ、出てみるわ」
思わず口にする。「でも手は離すなよ」
「わかった」
高橋の声。
ちょっと嬉しくなると同時に、「こいつまで犠牲にしちゃダメだろ」と、変な正義感が沸き、
「あ、何があるかわかんねぇから、やっぱオレだけで行くわ」
「何かっこつけてんの?」
「いや、実は手汗が凄くて・・・」
「だったらひとりで行って」
僕はひとり孤独に踏み出した。
そこは光だけじゃなく、音もしない世界で、自分の心臓の鼓動すら聞こえない、ちょっと変な世界だった、、、いや、「かなり変」か。
真っ暗なまま廊下を歩いて、隣のクラスのあった場所に行ってみると、、、引き戸がない!いや開いてただけかも知れない。でも真っ暗!、、はウチのクラスも同じか。「おーい誰かいるーー?」。教室なのか「そうじゃないところ」なのかもよくわからなかったけど、ふと気づいて足踏みをしてみたら、、、
ここだと足音が聞こえる。そう言えば自分の声も聞こえてた。
明らかに廊下とは違う。「教室があった場所」にはどうやら教室があるっぽい。でも生徒の気配はない。「体育だったか!?」ボケでもなんでもなく自問自答。でも、
隣も、その隣のクラスもずっと人の気配がしない。
・・・なんだかヤバイ感じ。
自分たちのクラスだけが「闇に飲まれた」っぽい。でも「教室があるなら外にも出られるかも知れない」ちょっとだけ希望が見えて、気分が軽くなる。真っ暗だから「早足で」とは行かないまでも、気持ちはダッシュで自分の教室のあったところまで戻る、、、
「たでーまー」ムリしてちょっと明るく振る舞う。
僕に反応して、みんなが声を掛けてくれた。
「おかえりー」「どうだった!?」「無事だったぁ~よかったーー!」「生きてる方のクリスだよな?」
死んでる方のオレが来たのかよ!?つかそいつ誰よ?
聞けば、僕が出て行ったすぐ後に、何か別の人?が入ってきてすぐ出ていったらしい。なんだかんだ言って3つ向こうの教室まで見てきた<暗いのに!?ので、戻るのに数分は掛かったはずだから、「別の人」は僕じゃない。
怖ぇぇな!
「だろー」「オレなんてちょっとしょんべんチビりそうになった」
「でも無事でよかったわ」
外の状況を説明し、みんなでどうするか話し合う。
まず、「明かりになるものを探す」案。少なくとも廊下は闇でも、教室はまだ「明るくできる可能性」がある。懐中電灯かマッチかライターか、、、何でもいいから電気を使わずに明るく出来る道具を探す。
虫眼鏡で黒い紙を!
あぶなく口にしそうになったが、よかった言わなくて。言ったら心まで真っ暗にするとこだったわ。
そして「他に人がいないか」手分けして探す。今いるのが4階建ての校舎の3階。職員室は2階だから、それほど遠くない。そこなら何か灯りが見つかるだろう。真っ暗闇でもたどり着けない距離じゃないし。
・・・廊下に階段がつながっていれば、だけど。
「それよりも外に出た方が早くね?」
ここは3階だが、窓の外がどうなっているのかはまだよくわかってない。ただ、闇は闇としての怖さはあるものの、それ以上の害は今のところなさそうだ。
「カーテンで命綱を作って、ひとまず屋外へ出てみるのも良いかもしれないな」
僕が神妙な面持ちで(<見えないけど)言うと、
「いや、階段で普通に降りて出ればいいだろ」
そりゃそうだ。ひとりで勝手に「廊下に階段がつながって、、、」の下りを引きずってたわ。
こういうとき、映画だと安易に「じゃあ手分けして」みたいな話になるのだが、リアルにこういう状況になると、案外そうは思わない。離ればなれになるのはやっぱり怖いし、さっきの「別の人」のこともある。明かりは欲しかったが、どっちみち教室にないなら、みんなで一緒に外を目指そうという話になった。
みんなで手をつないだところで、僕が思い出したように言う。
「廊下に出たら、音は一切聞こえなくなるから」
つないだ手がビクッとするのがわかる。「え?」「じゃあ話とか出来ないわけ?」
「出来ない」
手に抵抗が掛かる。「私ムリ」「ウチもちょっと、、、」「ここならまだみんながいて心強いし、、」
「でも隣のクラスに入ればたぶんまた話せるはず」
「そういうシステムなの?」
「そういうシステムらしい」
階段は一クラス隔てた右側。まずは全員で隣のクラスに移動しようということになった。
隣の女子が大きく息を吸って止める。
「あ、空気あるから」
「あ、そうなの?」
クラスの雑然とした空気が、一歩踏み出すだけで完全な無音になる。i-Podのイヤホンが抜けたときのような、テレビを見ていて停電になったような「痛みを伴う静けさ」に包まれる。順番に隣のクラスに移動する中で、男子のひとり近藤が、
消しゴムあるかな、、、
と手を離し、廊下の窓の方へ歩き出した。当然周りには何も聞こえない。手を繋いでいた女子はすぐさま元いた教室に戻り、前の子は隣の教室へ走り込む。
「近藤がいきなり手を離して、、、」
「っだよあいつ」
しばらく待っても入ってくる気配がなかったので、僕は元の教室に戻ってみた。
「近藤居る?」
「あいついきなり手を離して、、、」「そっちにいないの?」
「居ない」
凄く嫌な予感がして、廊下の方をにらむ。
「様子見てくるわ」
「気をつけてね」
ちなみに高橋ではない。高橋は既に隣の教室だ。ちぇっ。
僕はこれ以上ないくらいゆっくりとそれもすり足で廊下を移動してみた。
「!!」
ヤバイ!
廊下が、、、途中で終わってる!!
いきなり崖になってるかのように、足の下から感触が消え、すぐさま横になって手探りで壁を探すも、
壁どころか床もない、、、。
2mほどの長さで、廊下の向こう側の壁が全く無くなっていた。さっき早足で移動したときのことを思い出し、ドッと冷や汗が出る。
教室に戻って事情を話し、注意を促しつつ隣のクラスに全員が集まる。
「この感じだと階段がどうなってるか、わかったもんじゃねぇな」
「でもだからと言ってここでこうしてるわけにはいかないだろうよ」
「助けとか来ないのかな」「そうだよ来るよ!もう少し待とうよ!」
明るい声がする一方で、僕は隣にいた高橋に小声で話しかける。
「来ると思う?」
「わかんないわよそんなこと。でも今それ言わない方がいいんじゃない?」
「だね」
声を張り、「オレ、ちょっと階段の方行ってみるわ」とみんなに告げた。職員室行けばなんか灯りになるものがあるかも知れない。「マジで気をつけろよ」「やばそうならすぐ戻って来いよ」「わかった」
僕はほふく前進で廊下に出て、すぐ隣の「階段があったはずの場所」に手を掛ける。真っ暗なので、それが「段」なのか「崖」なのかわからない。だが、
滑り止めの手触りはある。
おそるおそる手を伸ばし、「1段下」があるか確かめると、、、
とりあえずある!!
でももしかしたら「1段下まで」かも知れないと思い、今度は体勢を逆にして、ひとつひとつ段の存在を確かめながら降りていく。ああ階段って何段あったっけ?パイナツプル、グリコ、、そんなんじゃ思いだせねぇよ!
職員室は、手前に「校長室」「応接室」がある向こう側。手前の部屋は鍵が掛かってることが多いし、そもそも人がいることの方が少ないので、まっすぐ職員室を目指す。
うー誰かに付いてきて貰えば良かった。
悔やんでもしょうがない。真っ暗な中、壁伝いに引き戸を開けようとした際、軽い違和感が僕を貫く。
あれ?職員室の戸って、こんなだっけ?
気のせいかも知れない。たぶん気のせいだろう。いや絶対気のせいだそうに違いない。僕は暗闇の中で、職員室の中を探索することにした、、、のだが、、、
なんか違う。
ここは、職員室じゃないっ!
いつもの教室のように机と椅子が並んでいる感じ、人の気配はないが、さすがに教室と職員室を間違えるほどバカじゃない。僕は大急ぎでみんなのいる教室に戻った。
「まだみんな居る?」
「ビビッた~!」「脅かすなよ!」「ホントマジビックリした」
「で?どうだった!?」
正直に事情を説明するのもためらわれるレベルだったが、ウソを付く意味がわからないので、ありのままを言った。
「なわけあるか!」
「間違って2階分降りたんじゃねぇの?」
それこそ「なわけあるか」だ。お前が行ってみろ、絶対間違えねぇから。
ただ、それがホントだろうとウソだろうと、状況が好転しないことには変わりない。ひとつだけ言えるのは、
ここは普通じゃない
ってことだ。原因とか理由とかは全くわからない。ともかく、「職員室なら灯りが、、、」という望みは絶たれてしまった。丸ごと無くなっちゃったんだもの。
「うわー」
「どうするのよ?」「どうするのよーーー!!」
ヒステリックに大声を出す女子も出てきたが、それまで黙っていた委員長がボソっと言った。
「そこって何組なんだろ」
俺たちのクラスの真下は、本来は職員室があった場所だ。だがそこが教室になっていたということは、「何かがズレている」。
問題は、「どう」ズレているかだ。
委員長はオレを呼び、みんなに聞こえない声で言った。
「二人で上に行ってみよう」
「!?」
もしかしたら「職員室は上にあるのかも知れない」そう口にしかけてやめた。この状況で下手な推論は余計な混乱を増やすだけだ。
「もう一回委員長と見てくるよ。もしかしたらオレの勘違いだったかも知れないし」
「わかった、気をつけろよな」
教室を出たら声は聞こえなくなる。手を繋ぐだけでなく、シャツの袖をきつく結び、体に縛る。もし何かあったら、引っ張って近くの部屋に入るなりここへ戻るなりしようと約束を決める。
既に階段に慣れているオレが先導する形で、上の階へ向かう。教室を出たら音は一切聞こえなくなるので、教室にいる連中に俺達が上に行ったか下に行ったかはわからない。
廊下を上り、3-5の真上のクラスの前に来たとき、足下に何かが当たる。
「!?!?!?!?!?!!!!!!!」
死ぬほどビックリして大慌てで教室に入ると、
居るはずのない人の気配がする!
声に鳴らない叫びを上げながら廊下に戻り、委員長を引っ張りながら階段を駆け下り、教室に戻る。もはや半泣きどころか全泣き状態だ。高橋に見られなくてよかった。
「どうしたどうした!?」「何があった?」「つか泣いてんのお前?」
アウアウなってるオレに、委員長がゆっくり口を開く。
「これは、オレの推論なんだけど、、、あ、その前にもう一回オレ一人で行ってくる」
そう言い残して委員長は教室の外に出て行った。
しばらくして戻ってくると、
「みんな無事だったーーー!!」
近藤がどう控えめに考えても泣きまくりながら入ってきた。もちろん委員長も一緒だ。
「さっき、クリスがぶつかったの、アレ、コイツ」
はぁ?お前が黒幕なの!?
「なわけあるか」
心の声が漏れていたらしい。
・・・
委員長が言うには、理由とかはわからないが、階段の移動が時間をズラしてるんじゃないかってことだった。もちろん自信はなかったが、「4階の3-5」でオレが泣きわめきながら駆けだした時、既視感を感じ、確信を得たらしい。近藤は、階段を使わず廊下から落ちたことで、逆に過去に飛ばされるように上の階に「落ちた」んじゃないか、と。
「ってことは、、、」
委員長はかっこつけて上を指さしたが、もちろん僕らには見えてない。
・・・
僕らが「5階の3-5」に入った途端に聞き覚えのある大きな音がして、まぶたの向こうが一気に明るく、そして赤くなるのを感じた。目を開けると、、、
「おはよう」
高橋が笑顔であいさつしてくれた。そして、、、
「夢じゃないからね、アレ」
おしまい。
前回のままのがよかったって言われそう。読んだ人は。つか「便所ラクガキ指数」がより上がった感じだよな。まぁ本人が楽しければいいんだけどさ。▲▲▲。
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