逃走迷路
かなり前にnori君に勧められたヒッチコックのモノクロ映画。原題はサボタージュ:破壊工作。1942年の映画だから、
結構古い。
まぁモノクロという点で推して知るべしなのだけど。
航空機会社の工場に勤める主人公バリーが、冒頭勤める軍事飛行機工場を爆破、親友の殺人犯という濡れ衣を着せられ、手がかりを頼りに警察の追っ手を逃れつつ真犯人を追う。
昔の映画というととかくテンポ、展開の遅さが気になったりするものだが、本作はかなり濃密かつハイテンポで場面が移り変わり、飽きさせない。ところによっては「(展開が)早すぎるだろ」というところも無くはないが、
・意外と派手な工場の爆発
・短時間で伝わる「悪者」のディティール
・結構派手な橋からのダイブ
・緊張感から安堵へ変わる老人との出会い
・グラビアヒロインとの出会い
・個性的なサーカス団
・ヒロインとのダンス&キスシーン
・クライマックスの舞台が自由の女神
つまり、モノクロではありながら当時の「売れ筋」をこれでもかと押し込んでいるのがよく分かる。
派手で、緩急があり、美人のヒロインと恋に落ち、めまぐるしく舞台が変わり、悪いヤツは落ちて死ぬ
たとえて言えばそれはインディジョーンズやダイハード、ハムナプトラのようなアクションシリーズと共通した構造で、
上手く焼き直せば十分現代でも通じる内容。
それをよしとするかどうかは人によるとは思うけど、僕的には、
さらにもう一段「スゲェ良かった」にさせるだけの魅力が欠けていた気がする。
具体的に言えば、
ローマの休日の方が上。
展開が早いのは魅力であるものの、もう一つ説明不足な感が否めず、シーンごとの記憶はあっても、「流れ」「繋がり」がほとんど思い出せない。ブツ切りな感じだった。
主人公もヒロインもイケメンと美女ではあるものの、ローマの休日や裏窓の2人と比べるとちょっと落ちる。実際本作のロバート・カミングスとプリシラレインより、ローマの休日のオードリー・ヘップバーンとグレゴリー・ペック、裏窓のグレース・ケリーとジェームズ・スチュワートの方が「聞いたことがある」と思うし、
オーラがあった。
これも人によるとは思うけど、僕はキャストのウェイトが結構高いんだよね。キャストが良ければ(声優と置き換えてもいい)、多少脚本や演出がしょぼくても評価が高まる。逆にキャストが今ひとつだと、作品全体が微妙になってしまう。まぁ多かれ少なかれみんなそうだとは思うけど、僕はそのウェイトが高い。
クリス評価は★★かな~。
オススメされたこともあって期待が過剰になってた感はあるけど、もう一歩「スッキリしたかった」気がする。クライマックスも「あと5秒」追加してキスシーンを入れて欲しかったし、変に無音部分が差し込まれてて、マシントラブルとかを疑ってしまったりもした。
一番良かったのは前述した「老人との出会い」。盲目の老人は、手錠をしたバリーを暖かく迎える。ほっとしつつ気を許すバリー。そこに現れる姪のヒロイン:パット。手錠に気付くパットと焦るバリー。老人が、
そんなの最初から気付いていたという。
「犯罪者は警察に通報するのは国民の義務だわ」というパットに老人が言う、
「罪が決まるまでは疑わないのも国民の義務」みたいなセリフ
それ、スゲェ僕もそう思う。
何つかワイドショーを例に挙げるわけじゃないけど、「周りが」「テレビが」そう言ったからってそれが真実である保証なんてない。重要なのはその人がどんな人であるか、自分の心でジャッジすること。
荒れ気味の掲示板とか見てるとホントそう思う。
「見せしめ」や「槍玉に挙げる」のは、確信と証拠があってこそやっていいことだろう?10人居て9人がYESでも、残り1人がNOであるなら、その1人を無視すべきじゃないと僕は思う。「大多数の意見は概ね正しい」は、正しいではない。あくまで「概ね正しい」だ。
・・・
結構ネタバレ書いちゃったし、そもそも古いモノクロ映画なんてみんな見ないとは思うけど、決して悪い映画ではないし、展開の密度は十分オススメに値すると思う。「名作」として見るのではなく、「古いエンターテイメント作品」として見る分には、時間の無駄にはならないと思うな。
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