GUNZEホットマジックの話
これは僕の仕事に関係する話なのだけど、ちょっと面白かったので備忘録がてら書いておく。興味がない人はスルー推奨。
「GUNZE」とは、グンゼ肌着のグンゼのこと。昔プラモデルのラッカー系塗料「Mr.カラー」を作ってたグンゼ産業、現GSIクレオスの親会社。ホットマジックは、そのグンゼが開発した吸湿発熱生地のことで、ユニクロのヒートテックが一番有名だけど、つまりは、
着ると温度が上がる、魔法のようなインナー
ちなみにその仕掛けは、、、
あ、今回のネタは、多分に僕の勝手な想像というか補完してるところがあるので、もし間違っててもごめんなさいです。
その仕掛けは結構メカニカルというか、凄くて、
気化熱を利用して冷気を作ることの、真逆のことを生地でやっている。
体から発せられる僅かな発汗を、生地が吸湿し、吸湿後に液化する。水が乾くことで温度が下がるなら、気体が液化することで温度が上がるのも道理というわけ。
なので、もし非常に発汗の激しい人や、コレを着ることで汗をかいてしまったりすると、さらに温度が高くなりやすい、「暖かすぎる肌着」だったりします。まぁ寒がりの人が着ると、「ヒートテックとは比べものにならないくらい暖かい」と思えるほどの「ほぼ最強防寒インナー」だと僕は思ってますけどね。
で、話の本題は、そのホットマジックのインナーが、近年マイナーチェンジをしたわけです。自分も愛用している数年前のモデルでも既に十分過ぎるくらい完成されていると思っていたのに、「なぜ」組成やスタイルを変更することにしたのか。そしてその変更による具体的なメリットは何なのか。
結構気になってたわけです。
で、とりあえず去年ウチにその商品を卸してる問屋に「グンゼに訊いといて」と言ったのですが、全く鳴かず飛ばずでレスがない。でもやっぱ気になると思って、直接グンゼのサポセンに電話して訊いてみることにしました。
ちなみに古い方は「POLO」というブランドと契約していて、紙ラベルと商品タグにその名前が見られますが、新しい方はその契約が切れたのか、POLOの文字はなくなりました。
古い方の組成は、アクリル、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリウレタン。
僕がセールストークをする際には、
・アクリルの暖かさ
・ナイロンの丈夫さ
・レーヨンの肌触りの良さ
・ポリウレタンの伸縮性
・・・ポリエステルは、、、コストダウンのためかなぁ
何てことをお客様に申し上げていたりしたわけなのだけど、新ホットマジックは、そのレーヨンの部分が「キュプラ」に変更になったわけです。
※微妙に混率も変わっている
さらに身丈もかなり短くなりました。単純なコストダウンなのかなぁと思いつつも、天下のグンゼの冬のフラッグシップモデルが、そんな理由だけでマイナーチェンジするとも思いにくかったので、それも含めて疑問をぶつけてみたわけです。
まず最初に電話に出た女性は、一般の問い合わせ窓口だったこともあり、「その時その時でより良い物を作るために変更を、、、」等という、クソつまんねぇ返答。「それでご納得戴けませんでしょうか」と言われても、
「全くダメだね」
バッサリだ。こちらもお客様に納得戴く説明をするために電話してるのだし、自分が納得出来ない答えをお客様にお伝えするほど愚かでもない。「製造とか企画とかの話の人間、もしくは近い人と話させて欲しい」と言って一旦電話を切った。
数時間して今度は男性からTEL。果たして僕が納得いく答えを持ってきてくれたのか、、、
答えはYES。
凄くスッキリした。なぜレーヨンがキュプラに変更になり、丈が短くなったのか。
※ちなみに価格は据え置き。あと僕の浅はかな知識では、キュプラもレーヨンも植物由来の再生繊維で、どちらかと言えばキュプラの方が強度があると言う認識だったのだが、、、
まず、先に書いた「吸湿発熱」の部分に関して、「キュプラの方が吸湿性が高い」。つまり、キュプラの方がより発熱しやすいホットマジックになるから、と言うこと。そしてその強度もやはりキュプラの方が上だった。
ただ、同時にキュプラの方がわずかにレーヨンよりも柔軟性が低いらしい。
※実際はポリウレタンが入っているので、そこが伸縮のメインではあるのだけど
旧ホットマジックの特徴は、「かゆくない」「凄く伸びる」「めちゃ暖かい」「そこそこ丈夫」、そして、、、「ただし値段は高い」という肌着だった。
ただ、数年使っていると生地が「ダラリ」伸びてしまい、着古した(文字通り着古しているわけだが)Tシャツの襟ぐりのようにヘニャヘニャになってしまう。
キュプラにすることでその分の強度を確保するが、柔軟性、伸縮性が犠牲になるなら、、、
身幅を広くすることで対応することにした。
つまり、僕は「身丈」が短くなったことだけに着目していたのだけど、実は「身幅」は長くなっていて、
※具体的にLサイズで言えば、「身丈74.5→69.5cm」「身幅38→42cm」とかなり変わっている。さらに裄丈※首の裏のセンターから袖先までの長さも、71.5→73cmと伸びている。
着心地そのものは、キュプラにしてもあまり変わらないように配慮されているらしかった。
ではなぜ長さが短くなったのか。それは、「ダラダラと伸びてしまった時の印象」もあるが、メインは、
「他のグンゼ肌着との足並み」を揃える為だったらしい。
そのそもそのホットマジックのスタイルは、他のグンゼ肌着とは全く違うサイズ企画で作られており、他のグンゼがちょうど良いサイズの人に、「長すぎる」という違和感を感じさせてしまったっぽい。要は、他のグンゼに近づけるべきだろうと言う判断らしい。
個人的には、腰からおしりに掛けても暖かいから良かった気もするけども。
そこは(電話では言わなかったけど)もしかしたら、「身幅を広くする為に長さを短くしないとコストが合わない」と言う事情があったのかも知れない。
ちなみに編み方自体も変わっていて、「伸びるけどダラダラになりにくい」らしい。実際袖に手を通して「パー」に開いてみても、窮屈さ、堅さは全くない。むしろ旧品の方が伸びが悪いのでは?と思うほどだが、肌着は常に新品で着続けられるわけじゃないから、1年後2年後で比べたとき、キュプラにしたこと、身幅を広くしたことの影響があるのかも知れない。
・・・
こんなネタで一回分になるかと思ったけど、全然書くことがあったな。紳士物が一着税抜2600円。婦人が2300円。
※婦人は他に薄手で部分的にホットマジックが使われた「アウターに響かないインナー」もある
紳士色はブラック杢、ネイビー杢、オフホワイトの3色で、晩期(シーズンの終わり。冬物なら1月~2月)は売り切れてしまうことも少なくない。定価売りがほとんどの商品なので、安売りで見かけたら一回試しに買ってみるのもオススメ。特に寒がりの人が着ると、「世界が変わった」と思えるほどに暖かいですよ?
※本音はウチの店で買って欲しいけど!!
あーーースッキリした(^^! まぁ大人の事情で上手く言いくるめられただけなのかも知れないけど!
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