ベイビードライバー
他のDVDで何度かトレーラーを見て、「結構面白そう」と思って借りた一本。主人公ベイビーは、両親を幼い頃事故で亡くした若者。弱みを握られた窃盗犯のボス"ドク"のチームの逃走用ドライバーとして、神がかり的なドライビングをこなす。ある日、行きつけのダイナーにバイトで入ったデボラに一目惚れ。何とか足を洗おうとするが、、、。
こんな感じのあらすじでいいんだろうか。
てか結構いろんな要素がてんこ盛りで、ベイビー本人はあまり見覚えのない俳優
※ダイバージェントに出てたらしい
だったものの、脇の二人が超大物のケヴィ・スペイシー&ジェイミー・フォックス。スペイシーはいつも通り「スペイシー役」だったけど、ジェイミーは「悪い方」のジェイミー。ホワイトハウスダウンの大統領みたいな「善玉」ではない。まぁ彼はどっちもこなせるけど。
ついこないだ見た「スクランブル」も、カーアクションを題材にしたサスペンスタッチの映画だったが、あっちがイケメンと美女メインだったのに対し、こちらは至ってマジメなサスペンス。アクション要素もあるし、ヒロインもかわいいけど、基本は、
窃盗団から抜け出したい若者と、優秀なドライバーを手放したくないそのボスとのやりとり。
いわゆるベッソン系「スタイリッシュアクション」と言うより、きっちりとした脚本と、しっかりとした演技、卒のない伏線で丁寧に丁寧に仕上げた良作という感じ。軽さは一切無く、
※トレーラーやタイトルだけ見ると他のありきたりなカーアクション映画みたいだけど
伊達にスペイシー&ジェイミーが出演しただけのことはあるな、と。
ヒリヒリした場面も少なくないし、かといってテンポの悪さにイライラすることもない。主人公のキャラ設定に「常に音楽を聴いてないと落ち着かない」という要素も、しっかりその理由、そしてその効果が活きていて、「上手いなぁ」と感心する。「超上手い!」ってほどじゃないけど。
こういう映画にありがちなハッピーエンドは、ワイルドスピードに代表される「気持ちよく大金をせしめてウハウハ」が多いが、本作はそれに対するアンチテーゼ的アプローチで、文字通り「キレイに」終わる。そこもかなり新鮮だったし、あまり見かけないメインのカップル二人の容姿がともに「誠実さ」を感じさせるところも、ある意味この物語にピッタリフィットしてたと思う。
まぁ男の子の方はともかく、彼女の方は「普通に彼氏居るでしょ」ってレベルにカワイイ子ではあったけど。
トマトの評価も98%と非常というより「異常」に高く、名も知らぬ監督と主役の、ありきたりを思わせるカーアクションとしては、異例の好評価。
僕自身はそこまで超絶に高い評価ではないけど、
※面白かったし、キレイだったし、上手いとは思ったけど、
★★★は手堅くあるかなって感じ。てか、
上手いんだけど、爆発力というか、「僕の中の6点を超えさせる何か」が無い感じ
だったかな。これと比較するのはどうかとも思いつつ、こないだ見た「ハードコア」の方が、インパクトも新鮮さも強くて、点数的には上にしたくなる内容だったかな、と。
短いので、ネタバレの感想を箇条書き。見るつもりの人はここで読むのを止めて、借りてこよう!トレーラーを見ると、いかにもカーアクション映画って感じに見えるとは思うけど、実際は「サスペンス:アクション=9:1」くらいの内容だったと思うので、「良く出来たサスペンス」が見たいと言う人にオススメかな。
・・・
以下ネタバレを含む感想箇条書き。ホントにタダの感想も多いけど。
・育ての親である口と耳が不自由なおじさんが凄くイイ。見た目や性格だけでなく、彼の存在のおかげで、ベイビーが「音楽を常に聴いていても口を見て何をしゃべってるかわかる」裏付けになった。それはつまり、常に音楽を掛け続けて居ても不自然じゃない設定を作ることにも繋がったし、さらにその音楽に対するこだわりを、亡くなった母親が唯一残してくれたカセットテープや、誕生日プレゼントにくれたi-Podに対するこだわりにも連動させた。
その縦横無尽に巡らされた関連性にグッと来る。
・ヒロインがとてもかわいい。「コケティッシュ」ってこういう子のことを言うんだろうなぁと思いつつ、とても素直で、「闇がない」感じ。実際の彼女の人柄がどうなのかはわからないけど、映画の中で、「ルックスに違和感を感じるような演技」は全くなかったと思う。なんつか「イノセント」な感じ?犯罪の片棒を担いでる主人公が惹かれるだけの魅力がある感じ。
ウィキペを見ると、シンデレラや、舞台でロミオとジュリエットのジュリエットをやってたりする、「真性ヒロイン」。写真を見ると、なんだかオードリー・ヘップバーンにも似てて、
※本作では全然そんな感じはなかったけど
ここまでクリーンなイメージを出せる子はそうそう居ないな~って思った。
・一方で、窃盗団のひとりには、「お色気担当」も居て、
※つっても脱いだりするわけじゃないけど
ある意味「ワイルドスピードの車と女」目当ての客にも多少なり「言い訳してる」感じはした。
・裁判の時、ベイビーを擁護した3人は、正直「厳しいなぁ」と思ったけど、あそこまで行くとしょうがないのかな、とも思った。実際彼は一人しか殺してない
※もちろん悪いヤツ
のだけど、同じグループの連中が大量殺人をしてるのも事実だし、どこまでがんばっても「無実の罪」にはならない。最後「彼女と大金を持ち逃げして」終わる選択肢もあったと思うけど、それをあえてやらず、きっちり罪を償って終わる選択をしたことを評価したい。その為には「厳しい」と思いつつもあの3人に擁護させる必要が、言い換えれば、映画のどこかで「擁護する余地のある3人」を作る必要があったってことなんだけどさ。
・ジェイミーのキャラも凄く立ってて、正直スペイシー:役名ドクがちょっとかわいそうだった。ジェイミーは「キレやすく、殺人も平気だが、仕事中はそれに集中するし、洞察力も凄くある」と言うキャラで、きっちり見てる側にもキャラが流れ込んできたのに、スペイシーの方は、最後「なぜか」友情を持ち出してベイビーを苦そうとする。
オマエそんなキャラだったのかよ!
思わず突っ込みたくもなったが、彼は彼なりにベイビーを唯一信頼に足るチームメイトって思ってたのかも知れない。関係は脅しであっても、過去何度も何度も同じチームで仕事をやり遂げてきたと言う事実もまた真実。それがわかるのは、ベイビーがドクに「一切ドクに得がないとわかっていても、カセットを返して欲しいと直談判した」こと。一切話しが通じないレベルの「雇い主とドライバー」であるなら、あそこでお願いするより先に銃を出したと思うしね。
そう言う意味では、「上手く隙が埋めてあった」とも言えるかも。てかホント上手いなぁ。
・・・
何にせよ、ハッピーエンドで良かった。「面白い」とか「イイ」とかではなく、「キレイな映画」って感じだったな。
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