ダークナイト
世間では本作によってクリストファー・ノーラン監督の名が広まり、遺作となったヒース・レジャーが助演男優賞を取ったりもしたが、当時から時を経て見直した今日も、僕のダークナイトに対する評価はほとんど変わらない。
つまんなかった。
人によって映画を評価するポイントは全然違う。完成度という括りで見れば、ある程度は標準的なジャッジに近づくかも知れないが、評価には往々にして「嗜好」が含まれる。そしてその好き嫌いこそが、本人にとっての評価を最も左右すべきだと僕は思う。みんなが面白いと言ったからその映画は面白いなんてことはない。自分以外の全ての人が高い完成度に賞賛の拍手を贈ったとしても、自分が面白くないと感じたらそれは面白くないのだ。当たり前のことなのだ。
では何がそんなに面白くなかったか。
主人公が置いてけぼり。
これはぶっちゃけヒース・レジャーのジョーカーが素晴らしいからでも、アーロン・エッカートの存在感が大きいからでもなんでもない。
ただ脚本家がそう書き、監督がそう撮った。それだけのこと。
僕は正義の味方が報われない話が嫌いだ。善行を積むものがバカを見るのが大嫌いだ。自分が悪者になってもいい?バカなことを言うな。正義を行使する者には力が不可欠だろう。それはお金とか筋肉だけじゃない、信頼や社会的な地位も含めてだ。
パワーレンジャーがどれほど街を壊そうと、彼らは一切責められなかった。
トランスフォーマーだってシンゴジラだって、悪いヤツを倒す為なら全てが許される。当然「許さない人が居る」ことも承知でそう思う。もし自分の肉親がヒーローに殺されてもそう思うのか?
ヒーローはそんなことしない。
なぜなら、
ヒーローはモニターの向こうにいるんだから。
そこに理由を持って来ることにイラっとする。そんなのはリアルでも何でもない。時代に即した監督のテクニックで、「それっぽいウソ」がより多くの人の心を掴んだってだけの話だ。
前回とキャストは違うものの、ヒロインが心変わりして主人公から離れてしまうのもとても気に入らない。主人公は常にかっこよく、強く、誠実で、そしてモテて欲しい。それこそが僕の期待する主人公で、気持ちいい展開だからだ。
末節の部分では、ジョーカーの存在も大いに気に入らない。彼は精神異常者で、理念や信念で動いてるわけじゃない。残忍ではあるが、それすらも「壊れているから」という理由で全てを押し切れるとでも思ったか。何が計画しないだ。
計画なしで爆弾をあそこまで緻密に設置できるものか。計画なしで窓のシェードと双眼鏡を繋げるか。計画無しで人質にピエロの格好させて銃を持たせるのか。
適当なこと言うな。「さも適当でいい加減で衝動的な犯罪者」を仕立て上げるのに、都合のいい設定で丸め込もうとしてるだけだろうが。
あのしゃべり方も表情も「オレは狂ってるからテンプレは通じねぇよ?」とアピールしてるようにしか見えない。まるで犯罪者が精神病患者を装って罪を軽くしてるかのようだ。
ただ気持ち悪いだけだ。気持ち悪い演技が上手いわけじゃない。ただ、人のゲロを見て感じるのと同じような気持ち悪さだ。ジョーカーに対する憎しみや恐怖が湧くのでもなく、ヒース・レジャーに対する感嘆を抱くのでもない。ただただ「作られた気持ち悪さ」に辟易するだけだ。
今作のジョーカーは、美しくない。
ジャック・ニコルソンが最高だったとは言わないけど、スーパーマンのジーン・ハックマンの方がずっと悪役としてしっくり来た。
ブルースがレイチェルの死に対して感情的にならないのも腹が立つ。確かにエッカート演じるハービィの憤りの強さ、ダークサイドに転げ落ちる理由付けの必要性を考えたら、過度にブルースが悲しんだりキレたりするのはおかしな感じになるのはわかる。でもこれじゃあ、
全然ブルースはレイチェルのことが好きじゃなかったみたいじゃないか。まるで「過去の女」の死に向き合ってるだけみたいじゃないか。
辻褄を合わせるためにこうなったのもわからなくはないけど、だから納得出来るかって言われたらそんなわけにはいかない。つまり、
脚本が好みじゃないって結論にぶち当たってしまう。
と言うか、
一体何が撮りたかったのか、見せたかったのか、見る側の僕はこの映画に何を期待すべきだったのか、どう楽しむべきだったのかがわからない。
これは、同じノーラン監督のインセプションを見たときにも感じた。価値観のズレなのか、経験の差なのか、
面白くない映画になっちゃってた。
戦車のような車も前作ほど惚れ惚れするシーンはなかったし、バイクは、飛び出した瞬間こそ「おおっ!」と思ったものの、障害物を破壊しながら走る意味がわからない。「壊すだけじゃ壊された物がまだそこにあるだろ」と思ってしまう。「壊すのではなく吹っ飛ばさないと」。
バットマンの秘密道具的な物も全然説明もなく、効果もピンと来ない。
※ビル内を透視出来るやつとか、撮り方が悪いのか「バットマンにその情報が伝達されてる感」が全然無かったし、携帯から居場所を探すのも、メカニック担当のモーガン・フリーマンが「辞表代わり」というには余りにも軽薄な扱い。あの装置の「重み」がない。見た目はカッコ良かったけど。
新しいスーツにした意味もわからないし、
※おもちゃメーカーに対する契約内容か?
剣とか銃に対する耐久力が落ちてるって言う割に、レイチェルと一緒にビルから落ちても平気なのはなぜ?
側近みたいなラミレス刑事があっさり裏切って「お金のためにレイチェルを誘拐する」っってのも「なんだかなぁ」って思ったし、
ああでも、エッカートの「右目」はスゲェ良く出来てるって思った。初代ターミネーターのシュワルツネッガーとは比べものにならないそれっぽさ。あと全然終わらないなぁって思ったし。無駄に長ぇよ。
クリス評価は当時も全然だったと思うけど、今見ても☆。全体的にかなりつまんなかったな。好きな人の評価を否定するわけじゃないけど。
三作目はどうなんだろうなぁ。このストレスが解消されればいいけど、、、。
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コメント
こんちは!クリス!!
僕なんかさ、ビギンズすっげー面白くて、そのあとダークナイトでしょ、見る前から色々情報入って来ちゃうしいやが上にも期待もふくらむわで、
んで知り合いと二人映画館で観たら、まさに、何処をどう楽しめば良いのか、どのポイントが感動する人のポイントなのか?あの前評判、世間の評価が高いってなんだったんだ?ってしばらく?????
が頭をぐるぐるしてたよ。いや、いまだにもってわかんないし。
投稿: nori | 2019年3月17日 (日) 00時58分