ペンギンハイウェイ考察~その2~
前回の考察で、自分なりにスッキリはした。だがしかし、肝心なところはスルーしてしまったとも言える。蛇足を承知で、ファンタジーに土足で踏み入ってみる。もちろんネタバレを含むので、まだ見てない人は読んじゃダメ。
●アオヤマ君はどうお姉さんを見つけるか
劇中最後には、前歯が生えそろっている彼が映る。永久歯が生えそろうには、2、3年掛かると言う話を、今ネットで調べた。実際は個人差があるだろうけど、お姉さんとの別離から、早くとも1年以上は経ってる「彼」が映っていたことになる。
その間も彼はお姉さんのことを考えていたわけだけど、具体的に何をどう研究していたのかは一切語られていない。対峙する謎があまりにも強大で、今の時点での彼には手に終えないと考えた結果、結局何もしてこなかった可能性も無くはないが、少なくともペンギンハイウェイでの彼のどん欲なまでの知識欲を鑑みるに、ずっと手をこまねいていたとは思いにくい。さらに言えば、
彼のお姉さんへの思いは、そんな簡単に雲散霧消するとは到底思えない。
ならば、劇中の彼に倣って、僕がもし彼だったら、どうやってこの謎にぶつかっていっただろうと考えてみる。まず何をするか、何を考えるべきか、どこに紐解く鍵が隠れているのか。
ちなみにこの研究に関しては、たぶんハマモトさんやウチダ君は巻き込まなかったと想像する。やはり前回の事件はとても危険であったし、特にハマモトさんに関しては、父親に情報が流れてしまわないとも限らない。本人がいくら警戒し、注意しようとも、一緒に暮らしている小学生では、なかなか全てを秘密には出来まい。
そう言う意味では、ウチダ君はむしろ同じような距離感で一緒に研究を進めたかも知れない。ただ、物語後半、アオヤマ君が真剣に考えているところに、ウチダ君が挨拶をし、生返事を返しているシーンがある。ウチダ君はアオヤマ君にとって大切な友達ではあるが、お姉さんの研究に関しては、そこまで協力者を募りたいとは思っていないと思う。これは彼の個人的な気持ちを多分に含む研究であるし、思春期に踏み込む年齢として、まがりなりにも異性の研究を第三者に共有する恥ずかしさみたいなものも、きっと芽生えていったと思うので。
と言うことで、彼はひとりでこの謎にぶつかっていくことになると思うが、まず現時点でわかっていることを書きだしてみる。
・お姉さんは原っぱ(草原)の真ん中で消えた。消え方は僕ら視聴者には見えていないが彼には見えていた。
・お姉さんが消えた場所とたぶん全く同じ場所に「ペンギン号」が落ちていた。またその場所は、喫茶店から黒白のネコを見た場所と合致する。さらに言えば、そのネコはもしかしたら本当にペンギンだったかも知れない。
・原っぱから森を見ることは出来るが、当然その向こうにあるであろう海があった草原は見えない。位置関係的に、緯度や経度が同じだったのか、また、その位置から本当の海はどの程度離れていて、どの方角にあるのかなどは調べられる。
・お姉さんの個人情報に関しては、現時点で子供である彼がどうこう出来る可能性は低い。だがしかし、残された一枚の写真から得られる情報を駆使することで、最終的に「海辺の街」がどこであったのか、お姉さんの実家がどの家であったのかを特定することは不可能ではないと思う。特にアオヤマ君の洞察力は高く、
お姉さんと一緒に乗った電車の行き先は、彼が当然記憶しているはずだ。
もっとも、お姉さんの性格を鑑みるに、「行き先は着いてのお楽しみってことで」などと、煙に巻いた可能性も相当高いとは思うけど。それでも切符を買うところなどで、横から覗いていただろうことは想像に難くない。さらに言えば、
「こら少年!行き先がわかっちゃったら楽しくないでしょ?」
「見てません」
「見てた」
「僕は見てません」
と言うくだりが、「いかにもありそう」であり、つまり実際はアオヤマ君は「電車の行き先を知っていた」と。
さらに言えば、
前回の僕の推論が仮に正しかった場合、お姉さんはいきなりお姉さんとしてこの世に存在したわけではなく、普通に幼少期海辺の街で過ごし、お父さんとお母さんが居て、アオヤマ君と出会うまでにも「人生を歩んできた」と考えられる。と言うことは、
これは、「失踪事件」と言うことになる。
マンションには当然契約している会社もあり、保証人も両親に関するデータもあるはずで、そちらからのアプローチも、中学高校と成長していくアオヤマ君ならば、「間違いなく」チェックしたはずだ。そんなのは初歩の初歩とすら言える。
相当勇気は必要になるだろうが、「お姉さんのご両親」にも直接会いに行くだろう。彼の研究熱心な気持ちは、僕が彼女の父親であるなら、決して嫌な気持ちにはならない。あくまで「僕がそうなら」なので、物語の中で一切出てこなかった「本当の彼女の父親」がそう考えるかどうかはわからないが。
だがしかし、その頃の記憶は特筆して今回の事件と直結していたのだろうか。結論を急ぐ必要はないが、「海辺の街」「ペンギン」「本当の海」と「丸い海」、、、。この世界が現実世界の「理(ことわり)」と同じであるなら、物理的現実的な正解は、絶対に出てこない。
問題はどう飛躍するのが、着地点として妥当であり、物語の整合性が取れるか、と言うこと。
僕はやはり「ネコ」そして「黒と白」「ペンギン」この三つのキーワードを掘り下げて行くと思う。あのネコは普通のネコだったのか、他に黒と白のネコを探し、あのネコとの違いはあるか、そもそもあのネコがどういう暮らしをしているのか、飼い猫なのか、普通のペンギンを何とかここに連れてくることは出来ないか、海があった場所は今どうなっているのか、そこにあのネコを連れて行くとどうなるのか、、、
前回の推論通りなら、お姉さんと並んで様になる年齢=25歳~28歳くらいだろう。彼の熱心さなら大学に入り、さらに大学院に進んで研究する可能性も非常に高い。父親を含め彼の生活水準は決して低く無いので、そこに金銭的な不安はない。
と言うことは、もし仮にネコが夢邪鬼であり、重要なファクターであることが事実であったとしても、「事件の時点で10歳だった彼が、25歳になるまで」つまり、15年間ネコは生きながらえる必要がある。長生きのネコなら十分視野に入る長さではあるが、
ずっと歳を取らずに生き続ける、それも何も食べずに
と考えると、これまたしっくり来る。ネコはネコなので、気まぐれでつかみ所がないし、さらに言えば、
(丸い)海が生まれたことで、ネコの方も「神懸かった覚醒」をした可能性がある。
つまり、海が消えてしまったら、ほぼほぼ普通のネコに戻ってしまう。でも普通のネコではない。となれば、、、
人工的に海を作ることが出来れば、それがそのままネコの「再覚醒」に繋がり、お姉さんとのワームホールを開く鍵になるのではないか。
そこで、小学生の頃の海の研究が再度脚光を浴びる。言ってもハマモト教授達よりも海に関するデータは豊富であっただろうし、教授たちが科学的な検証をそれほど行う前に事件は起こってしまったっぽい。
「卵が先かニワトリが先か」。
海を作ることが出来るのか、ネコが覚醒するのが先か。海辺の街に飛ばされたアオヤマ君とお姉さんが見た世界の果ては、リアルな南極のような果てだったのか。「ペンギンと世界の果て」の関係、本物の海辺の街と、あの日見た海辺の街の違い、水が鯨や鳥になっていた理由。
とても賢いアオヤマ君が15年掛けてたどり着く答えに、高卒49歳の僕がたどり着けるわけもなかった。
でも、彼なら(物語の中とは言え)本当にタイムマシンを作ってしまうかも知れないと思うし、「時空をゆがめる存在」≒「丸い海」≒「タイムマシンの原理」の論法及び、15年という長さは、発見して実現するスパンとしては、なかなかにリアリティがある。「リアルではないが、本物っぽさがある」。
ただ、
それらを研究することで、子供の頃の記憶があまりにも非現実的で、幻だったんじゃないかと何度も何度も振り返ることになりそうな気はする。それでも彼のお姉さんを思う気持ちが優っていることを僕は期待せずには居られない。
彼の信念が貫かれ、声変わりしたアオヤマ君がお姉さんと再会出来ますように。
「少年、随分がんばったね」
「お姉さん、、、」
「もう少年じゃないか」
「、、、はい。僕はオトナになりました」
・・・
「泣くな少年」
「僕は泣いてません。少年でも、、、ありません」
END
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