グリーンブック
僕は基本ヒューマンドラマと言われる映画が好きじゃない。お涙頂戴とマイナスの溜めの繰り返し。不遇じゃなきゃ主人公じゃないとさえ言えるステロタイプの展開には、正直早送り以外の選択肢がないほどだ。
でもだがしかし、時折自分の心に軽く引っかかる時がある。
友情。
どうやら僕はこの言葉にひどく弱いらしい。
友情。
立場が違う二人が出会い、時を重ね、最後には永遠の「友情」で結ばれる。
友情を定義するなら、それは損得も利害も越えて、相手のことを考える関係だ。時には性別も越えるし、年齢ももちろん関係無い。僕はそんな「無償の思いやり」を見るのが、どうやら好きらしいのだ。
グリーンブックは、事実を元にして作られたヒューマンドラマだ。レンタルの棚の一番上にあり、いかにもな話題作と言った風体で鎮座していた。
いつもなら借りたりしない。
でもだがしかし、この時僕の心に軽くフックする何かがあった。
それが友情。
パッケージを裏返すと、人種差別が色濃く根付いていた時代に、黒人のピアニストがさらに黒人差別の激しい地区へとツアーをしたいという。その時に雇った白人のドライバー。強面でバーの用心棒をしていた彼。彼もまた黒人が好きじゃなかった。
最後には仲良くなるのがわかりきった話。
最後のハッピーエンドが約束された話。
僕はヒューマンドラマが好きじゃない。が、ハッピーエンドは大好きなのだ。途中のマイナスの溜めは嫌いだけど、それを越えたカタルシスが待っているなら、何とかガマンも出来る、、、かも知れない。
ちなみに、主人公の用心棒は見覚えがなかったが、ピアニストの黒人は見たことがあった。「アリータバトルエンジェル」でマフィア的な何かのボス的な役で出てたマハーシャラ・アリという役者だ。ウィキペを見たらプレデターズにも出てたらしい。言われて見ればそんな気もする。
それほど見た作品が多く無いのに覚えていたと言うことは、それだけ魅力のある演技をする役者だということだ。
実際彼は、このグリーンブックでアカデミー助演男優賞を受賞してた。
てか、
グリーンブックが作品賞も主演男優賞も、この作品が取ってた。
主演のヴィゴ・モーテンセンは、いくつかの出演作を見ていたが、記憶にはなかった。ジョンブック目撃者、クリムゾンタイド、デイライト、ロードオブザリング、、結構前の作品が多かったせいかもしれない。
だがしかし、マハーシャラ:役名シャーリーが助演男優賞を取ったのなら、主演のヴィゴ:役名トニーも当然取ってるだろ、と思えるほど、
彼の演技は良かった。
無骨で粗野なところは、「最強のふたり」の黒人サポーターを彷彿とさせる。あれとこれでは白黒が逆の立場だけど、
ぶっちゃけやってることは同じ。アレが好きならコレも好きという話だ。
自分に正直で、気に入らないことは気に入らないとハッキリ言うタイプ。だがそれが元でいざこざに巻き込まれることも少なくない。その上で、
彼は奥さんを凄く愛していたし、奥さんにも愛されていた。
ここがこのドラマの隠れた魅力だったと思う。
基本は白人の黒人差別にフォーカスして話が進む。それをトニーとシャーリーが何とか乗り越えていく展開だ。だから、下手に家族と不仲だとか、大きな借金があるみたいな余計な情報は乗せず、
割とキレイに展開する物語に仕上げてくれた。
そこがとても良かった。マイナスの溜めは当然あるのだけど、それを「上手く抑えること」に腐心されてたと思う。
でなければ僕は早送りボタンから指を離せなかったと思う。
紙一重で、ムカ付く白人と気持ちいいトニーの対応でバランスを取ってた。
こういう映画は、「この瞬間に気持ちが切り替わった」というポイントがある。つまりはシャーリーがトニーを認める瞬間が。本作にもそれはあったが、その後もちょいちょい揺り返しがあって、
意外としっくり収まらない「緊張」が終盤までずっとあった。
好みとしてはそう言うのはあんま要らないのだけど、この映画ではなかなか上手く機能していて、結局最後までそれなりに気持ちよく見ることが出来た。
ただ、、、
本音を言えば、もう一声爆発的なカタルシスが欲しかったと言うのが正直なところ。とてもキレイに終わっているし、文句というほどのストレスではないのだけど、
「最強のふたり」や「マイインターン」にあるような、繰り返し巻き戻してみたくなるようなシーンは、正直本作には無かった。
そこがどうしても惜しかったかな。
クリス評価は★★★。友情が好きな人、マイナスの溜めが平気な人には、結構オススメ出来る。主人公トニーは腹も出てるし、決していわゆるイケメンではない。でも、
見ていてつい「トニー、カッケーな!!」と口からこぼれたことが何度もあった。
こういう気持ちになるのは、嫌いじゃない。
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