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2019年12月 3日 (火)

珍しく仕事の話~あったかい衣類の話~

ブログのネタが乏しいので、今日行ってきた仕入れの話を少々。

僕は衣料品の小売りをやっているので、買うのは主に着るものなのだけど、この時期は当然のように防寒の衣類が中心になる。

大手だと、12月は既に春物や、下手したら来夏の仕入れをしたりするのだろうけど、ウチ程度では、直近で売れるものを仕入れる。それも、

 一番寒い時期で、かつ値下がり直前くらいのもの。

つまり、ほとんど安くはない。

安くはないけど、12月はそれでも売れる季節であるし、何より2月まではどんどん寒くなっていく。
※暖冬だとしても

なので、何はなくとも「暖かいこと」が重要なのだ。

「暖かい」と一言で言っても、その取扱品目やらお客様ご自身の「寒がり度」によって、視界に入る商品は全然違ってくる。あと、単価も。

ウチの店は安物中心、、、と言うより安物しか置いてないので、世間一般の「価格感覚」とはズレているかも知れない、、、と言うか、

 普通に自分の行きつけの店があった場合、そこで売ってる物の価格帯は、アマゾンやら楽天の値段より「安くて当たり前」と思ってる?

僕は思ってる。ネットは送料が掛かることが多いので、それを加えればギリ近所で買った方が安いってこともあるとは思うけど、

 大抵のものは普通に(送料入れなくても)、地元で買った方が安かったりする。

でもそれは、ウチの店が特別なわけじゃない。競合店だって、この地域の店はどこもそれなりに安いのだ。

例えば、こないだ入った「ゼログラビティクッション」。タマゴを置いて座っても割れないとか、落としても割れないとかテレビで宣伝してたらしいが、

 全然知らず、興味もなかったが、

ウチの店の売値は、カバー付で999円+税だった。そんなもんなのである。

てか、そんな話がしたかったわけじゃないのだ。僕がしたかったのは「防寒衣料」についてのあれこれだ。

●裏起毛

裏起毛とは、肌に触れる側が毛羽立っていて、あったかい素材のことだ。毛羽立っていると、肌に密着しづらい=外気との間に空気の層が出来て、その分暖かい。

その理屈で言えば、「密着しなければしないほど暖かい」と言っても、実は過言じゃない。

裏起毛には、「ピーチ起毛」と呼ばれる「産毛」レベルの薄起毛から、「裏シャギー」「裏毛布」と呼ばれる、毛布のような素材、「シープボア」「ボア」と呼ばれる、モコモコしてデコボコしたものまで様々あるが、

 個人的にはやはり裏ボア素材がこの時期のオススメだ。

それは一言で言って暖かいからだ。

ただ、もちろん難点もある。

ひとつには、「糸くずなどが付きやすい」つまり、汚れやすいと言うこと。僕みたいに「そう言うの気にしない」人なら問題無いが、気にする人は少なくないだろう。

また、「密着しなければしないほど」と言う事は、そのままつまり「厚い」と言うことにもなる。厚ければ厚いほどどうなるか。

 デブになる。

直球だが、つまりは「着ぶくれしやすい」と言うことになる。女性なら特にその点は気になるトコロだろう。もちろん「女性をやめてる生物学的なメス」も中には居るだろうが。

で、もし「着ぶくれはしたくないけど暖かい方がいい」と言う場合。次に着目するのは、、、

●混率

「混率」とは、それが何で出来ているか、どんな素材なのかという話。さっきも素材だったけど、あれはどちらかというと「表面処理」の話で、今度は「組成」の話だ。

一般に「ウールマーク」が付いているセーターとかが暖かいと思われているが、実際毛の混率が高いものは暖かい。これは今でも変わらない。

ウールにも、ラムウールやらアンゴラウールやらミンクやら何やらがあるが、
※羊じゃないから正確にはウールとは言わないかも知れないが

 総じて言えるのは、動物由来の素材は、「暖かいが痒い」と言う事。

綿やシルクと比べて、ウールは基本「かゆい」のだ。だから、言ってもそこまで優先して「多ければ多いほどイイ」とは思われないのが実情であり、さらに、

 値段も高くなりがち。

そこで、その欠点を補うのは、、、

 ポリエステル。

ポリ、もしくはエステルと言ったりもするが、これの代表格は「フリース」。裏起毛もポリのものが多い。この素材は、

 とにかく安いこと。

そこそこあったかく、ぼちぼち痒くない。

フリース以外では、「マイクロファイバー」とか言われるフワッとしてる素材もポピュラー。あと最近だと「フランネル」という、表面がちょっぴりヌメっとしたあったか素材もある。

 しかし、ポリはぶっちゃけそんなに暖かくはない。

「暖かいがそれほどでもない」のがポリエステルだ。てか、ポリが入るのは主に値段を下げるためで、

 あったかさを優先するなら、「アクリル」の方が暖かい。

そして、コストが高く、「毛玉になりやすい」。アクリルはポリエステルの親戚みたいなもんだから、値段はウールほど高くはないけど、それでもポリよりは高いのだ。

昔の毛布を持ってる人は、その製品表示を見ると多くがアクリル製だったりするのだが、最近のはみんなポリエステルばっかり。暖かさよりコストを優先した製品展開が多いというわけだ。

ちなみに、アクリル製よりポリエステル製の方が暖かい場合もある。単純なクイズだが、わかるかな?

 そう、厚ければいいのだ。

いくらアクリルでも、厚さが3倍もあるポリエステルの方が暖かい。あくまで同じ厚さ、同じ処理をした場合の差、と言うことだ。

主立った素材には他に、

・レーヨン シルクに似た手触りで、内側に使うと「かゆさが抑えられる」。値段は高めだけど、それよりも「シワになりやすい」とか「生地として弱い」という弱点があるので、レーヨン100とかだと、ぶっちゃけ見た目がくちゃくちゃになりやすく、あんま美しくはない。もちろんしっかり手入れをすればいいんだろうけど。

・ポリウレタン 一言で言えばゴム。伸びがある素材は、どの部分に使うにしても強力な魅力となりうる。靴下ひとつとっても、履くのに苦労する靴下が好きという人はそれほど多くはあるまい。

・ナイロン こちらも化繊だけど、ポリエステル=安い、アクリル=暖かい、レーヨン=手触り、ポリウレタン=伸びるとするなら、ナイロンは、、

 丈夫。

要は、いろんな素材にはいろんな善し悪しがあると言う話だ。

で、賢い人は居たもので、

 だったら、それらをみんな使えばいいんじゃないの?

ナイロンの丈夫さ、レーヨンの手触り、アクリルの暖かさに、ポリウレタンの伸縮性、、、それらを兼ね備えた素材が最強なんじゃないの?

 確かに。でも、当然そう言う素材には大きなネックが伴う。

 そう、値段が高いのだ。

いろんないいところを絶妙なバランスで使う場合、コストがどうしても上がってしまう。

 だから、安い防寒衣料の多くはポリエステル製なのだ。

しかし、そこにさらにもう一つ暖かさを決めるファクターが出てくる。

●吸湿発熱や遠赤、カプサイシン、とうがらし

よく見ると思う。ユニクロのヒートテックがその代表格だけど、つまりは「湿気によって熱を帯びる」という夢のような素材が発明された。

基本はポリエステルなのだけど、それなら着ぶくれせずに暖かいインナーになる、、、

 と思うでしょ?

でもさにあらず。

 着ぶくれせずに暖かくなる素材なら、それを厚くした方がより暖かいのは当たり前の話。

ユニクロはスタイルを重視する手前、そこまで厚いものはあんま無いんだよね。そこが競合店としてはありがたいと言えばありがたいとも言えるけど、さっきも書いたように、

 暖かさだけで言えば、やっぱりウールも暖かいし、

 厚ければ厚い方が暖かい。

 ボアや裏起毛の方が暖かいし、

 同じ吸湿発熱でも、メーカーによってその性能はピンからキリまである。

「湿度で発熱する」と言っても、「スゲェ発熱する」のもあれば、「ちょっぴり発熱する」のもあるのだ。当然のことながら。

ちなみに夏場だと、「接触冷感」という言葉に置き換わり、「Q-MAX」という冷たさを感じる指数があったりするのだけど、

 冬場のそう言う数値は、、、知らないなぁそう言えば。あるんだろうか。

さらに言えば、吸湿発熱や遠赤加工も、

 生地や糸を作る段階から練り込まれている物もあれば、製品として出来上がったものを液に浸けるだけと言う「後付け」のものもある。

液に浸けるだけだから、当然洗濯とかでも効果は落ちるし、そもそもそんなに強力じゃない。

 値段の安い吸湿発熱は、大抵それだから信じちゃダメ。

特に靴下とかに多い。

●強引にまとめ

こんなに書くつもりじゃなかったけど、とりあえず、、、

・肌着なら、グンゼの「ホットマジック」が一番オススメ。暖かさだけで言えば「もちはだ」と言うシリーズもあるのだけど、これは価格もさることながら、「いくらなんでも厚すぎる」。10年持つと言われるくらい丈夫だけど、見比べたときの厚さと値段の高さには、正直ちょっと引くくらいだ。

 ホットマジックは2600円+税なのに対して、もちはだは6800円とかだから。

ホットマジックは、婦人物も紳士物もあるけど、婦人物には、さらにその中でも薄い版もある。吸湿発熱部分が限定されているけど、生地が薄く、ヒートテックよりあったかく、

 ヒートテックより値段も高い。

ただ、ホントに寒くなったら値段より暖かさを優先したくなるのは当然のことだと思うので、「寒がり」の人は、チェックしてみるのもいいと思う。ちなみに婦人の全面ホットマジックは2300円+税が定価。冬場のグンゼ肌着一番人気だと思う。

・靴下なら、「ウール効率混」「アクリル裏起毛」「厚地パイル」この三つのキーワードで探すのがオススメ。あとは「口ゴムがゆったりしてるか、実際に指で開いてチェックする」。

 「口ゴムゆったり」と言うタグは、非常に多くの商品に付いているが、これもほとんどはウソである。

「ゴムなし」は信じてイイけど、「口ゴムゆったり」は、それを付ければ売れるから付けているだけという商品が非常に多いのだ。

軽くチェックするのに有効なのは、「口ゴム部分の幅」。短い物だと1cmほどしかないが、長いものだと「下から上まで全部口ゴム」みたいなものもある。そう言うのは大概緩い。あと「口ゴム改革」というロゴが入ってるヤツは、ポリウレタンの使い方が上手いのか、イイ感じに緩い。

ちなみに、緩い靴下は履きやすいが、当然ゆるゆるになりやすい。アクリルは毛玉になりやすく、パイルの厚地は靴が履きにくくなる。

 ホントの寒がりは、冬場1サイズ大きな靴を履く。

僕は面倒なので、「がんばって履く」だけだけど。

そして、そんな条件を満たした靴下を履いてもなお寒い場合どうするか。

 2枚履く。もしくは3枚履く。

さすがに厚いのを重ねて履いたりはしないが、世の中には最初から「2枚重ねてある靴下」もある。内側がシルク混で、外側がアクリルの「シルク混二重編み」というヤツ。

僕も以前は好んで履いていたけど、この靴下の最大の欠点は、

 洗濯すると2枚がズレるので、履くときに一回手を突っ込んでズレを直さないとイケナイ

と言うこと。つまりは面倒なのだ。

もっとも、いくら面倒だろうと毛玉が出来ようと、靴がきつくなろうと見た目が悪かろうと、

 寒いよりマシ

そう考える人が僕は大好きだし、それが正しいと思う。うがいとかマスクとかで風邪対策をする人は多いけど、ぶっちゃけ、

 寒さで風邪を引くことが一番多いと思う。

少なくとも僕はそう。最強の風邪対策は、「暖かくすること」。これは風邪を治す時にも言える。寝る時ゆるい靴下を履いて寝る人も少なくないし、

 暑ければ脱げばいいのだ。

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