手持ちのマスクをどうするか
僕は衣料品店をやってるのだけど、使い捨てマスクもずっと売ってた。で、当然コロナの影響で一旦は品切れになったのだけど、とあるタイミングでたまたま国内に「2年前の中国製デッドストック」が見つかった情報が入り、
2週間前に作られた中国製より、2年前に作られた中国製のが、どう考えても安全で安心で、たぶん安価だわ。
※まぁ2週間前に作られた中国製品は、たぶん日本に存在しないのだけど
で、他の売り先との兼ね合いもあって、問屋に60ケース入った内の、子供1ケース、大人3ケースを分けて貰った。10枚入り一袋×300袋/1ケース。つまり合計で1200袋12000枚のマスク。売価は一袋180円+税。安くはないけど、決してボッタクリの売価を付けたわけじゃない。いつも通りの利率でこの売価なのだ。
ちなみに、その問屋にマスクを持ってくるメーカーは少なく無いそうだけど、その大半はボッタクリ価格で、実際に小売店が普通に売れる値段ではないそう。まぁ中にはネットで買ったものを転売するメーカーとかも居そうだし。ウチもちょっとやろうかと思ったし。
転売に関しては、大半の人が「悪いこと」と思ってるかも知れないけど、自分は過去やったことがあるし、
※つってもたぶん1回だけ。ポケットピカチュウの時
小売業をしている以上、「基本は転売」であるわけで、そこまで悪いとは思っていない。さすがに「盗んだ物を転売」とか「落札されてから盗む」なんてのは論外だけど、人によっては、人より高くても今欲しいって人も居るし、★凄く重要なことだけど、
強制されて買うわけじゃない。
AKBのCDを何百枚買うのだって、マスクを1箱2000円で買うのだって、誰かに命じられたわけでも、それを買わなきゃ死んじゃうわけでもない。スギ薬局の店頭で朝7時半から買えるか買えないかわからないマスクのために並んで買った1箱。例えばそれと同じ事をするのに「いくらならやれる?」と問うた時、その答えの額がそのまま目の前に出品された転売マスクの値段になっていても、それは責められるもんでもないと思うのだ。
でもだからこそ、仕入れることが出来たマスクをどう売るかは、大いに迷っている。
古くはガンプラ、たまごっちの時代から、抱き合わせ商法はダメと刷り込まれてはきた。だから、単純に「いくら買ったら、マスクも買える」はやるつもりはない。でも例えば、
・3000円買ったら一袋進呈
・出来たら何か買って貰えると嬉しいと伝える
特に後者は、問題ないだろうと思う。もちろん買う物がなければそのまま単品で販売もするし、切羽詰まってる人には、「お一家族様一袋限り」を取り払って売っても構わないと思っている。
さすがに「一日3枚ずつ使うからすぐ無くなっちゃって」なんて人には売りたくないけど。
前者は、まず原価が相応に掛かっているので、ただ差し上げてしまうことに抵抗があると言うのが一点。それ以上に、「今の季節だと特にお客様が買いたい物が店頭に無い可能性が高い」ことが大きい。7月や11月など、これから季節が大きく動くタイミングであれば、先を見越して買うのもやぶさかではないだろうし、そもそも店頭にある商品もバーゲン価格になってないので単価も伸す。今ウチ程度の店で3000円買って貰うのはなかなかに「苦痛」だと思うのだ。
さらに、この時期学生衣料の販売も併せて障害になり得る。数万円、高い人だと10万円を超える中学制服&体操服一式。これから支払われる人にはマスクを差し上げてもいいけど、既に代済の人にはそれがストレスになり得る。代済で品渡しがまだの人なら、取りにいらっしゃった時に差し上げることも出来るけど、既に品渡し済みの人にはそれがまたストレスになるかも知れない。
・・・
・出来るだけ多くの人に売りたい
・本当に困ってる人に売りたい
・出来たら店の売り上げにも(上手く)貢献して欲しい
マスクだけを買いに来るお客様、さらにその方が「家族じゃない」と偽って数名で来て、複数買われていくケースも少なく無い。「お一人様」とすればそんなウソをお客様に付かせなくて済むと思う一方で、緩くすればするほど「買える人が集中し、限られてしまう」。
それはそれで不本意。
で、昨日思い浮かんだ案は、自店が参加している第三セクターのカード事業に、マスクを買い上げて貰い、イベントで使って貰うという案。お買い上げポイントに対してマスクを進呈するのであれば、自店での買い物をされてらっしゃる常連さんに還元出来るし、特定のお客様が集中して手に入れると言う事態も避けられる。
と、思ったのだけど、、、
提案して返ってきた答えは結構意外なものだった。そのカード事業のチラシは、毎月1日に折り込まれるのだけど、
4/1号の時点では、マスクはもう潤沢に流通していると思う、、、と言われた。
つまり、この一ヶ月で、事実上のマスク不足が解消するだろうと。
どこにそんな根拠が?とも思いつつ、やはり現在様々な国内業者が、ラインをマスクに換えて大量生産しているという。それが落ち着くのが約1ヶ月後であろうというわけなのだ。
あり得そう。で、もしそうなったら、こうして売りあぐねている僕の手持ちは、実質死蔵することになってしまう。
・・・うーむ。
ただ、日本製のマスクに関しても果たしてそこまでニーズが(手持ちの中国製より)優るのかなぁとも思う。実は昨日、地元の問屋がユニチャームの日本製マスクを持って来てくれた。全部で5袋。一袋は7枚入りで、
ウチの売価は定価500円+税
「日本製である」と言う安心感はとても大きいけど、一方でその単価は、、、
※税別
・以前ウチが売っていた50枚入り199円・・・1枚 3.98円
・最近ウチが売っている10枚入り180円・・・1枚 18円
・ユニチャーム日本製7枚入り500円・・・1枚 71.43円
ここまで価格が違うと言うのは、正直どうなんだろうと思う。それでもその問屋いわく、
1600袋オーダーして、入ってきたのは80袋
と言うから、現時点ではまだまだ「売り手市場」。持っている人が強いのは間違いないところなのだ。
・・・
一方で、作りすぎ、在庫過多になった時のリスクに関しても、平行して懸案事項ではある。
SARSの時、「下代0円、送料だけ負担して!」と悲痛の叫びでマスクを処分した問屋がある。あまりに倉庫を圧迫しすぎて、タダでいいから持っていって欲しいと言うわけだ。
当然それはメーカーにも影響したはずで、当時痛い目を見たところは、今回の生産に凄く慎重になっているのは間違いない。さらに今回は、前回生産していた中国が震源で、日本製の高価格商品をリスクを負って作ると言う状況。
いつ買い手市場になるのか、いつ集束するのかによっては、「儲かるか、大損するか」が大きく変わる。
当たり前だけど、「要らなくなったら要らない」のだ。
ただ、SARSの時に「今日本には3年分のマスク在庫が溢れている」と言われたが、実際には1年で消費したと聞く。1日1枚使っていた人が、1日3枚食後に替える生活をすれば、単純に3倍になる。まぁ朝飯後に替えることも晩飯後にマスクをすることも無いだろうから、実際には2倍程度だろうし、たぶん花粉症やらインフルエンザやらで、それまでマスクをしなかった層がし始めた影響が大きいとは思うけども。
ともかく、当時はウチの店にも相当な数のマスクが在庫になった。1箱50枚入り84箱1ケースが6ケースくらいか。これが全て無くなるのにどれくらい掛かるだろうと思ったし、実際1年以上掛かったと思う。
でも今この瞬間はマスクが欲しい人の方が圧倒的に多い。
先に挙げたユニチャームのマスクも、SARSの残骸で、通常5枚入り300円売りの品を100円で売っていた品が、
コロナのニュースと共に、一瞬で売り切れた。
これも1年以上自店の店頭に滞留していたデッドストックとも言えるものだったけど、
※仕入れたのはSARSの頃じゃないので
今なら定価売りでも一瞬で無くなるだろう。
・・・
結局これも立場がポイントになる。子供が受験生、接客業、ニート、ホール担当、先生、医者・看護師、、、そして販売する側の僕らも、立場は違う。
ぶっちゃけさっさと無くすだけなら、お一人様に制限を付けずに店頭にダンボールでドーンと出してしまえば一瞬で無くなるだろう。でもきっと間違いなく、その後大量のフォロワーが現れて、
「ここでマスクが買えるって聞いたんですけど!」
と言う人たちに対応しなければならなくなる。そっとコッソリ売っていれば、たまにズルく買う人が居るかも知れないけど、大っぴらに声を荒げる人も出さずに済むはずだ。静かに売れば、商品が無くなっても静かに沈静化する。なおかつ最後大量に売り損じて損をする可能性も抑えられるだろう。まぁコッソリ売ろう。
まぁ最低限身内分は取っておきたいけど。
・・・
ちなみにウチの店では、昨日爆発的に売れたものとして「ガーゼの手拭い(日本製)」がある。例年は夏の首巻きタオル代わりでしか売れないのに、手作りマスクの材料として一気に。今朝問屋に訊いたら、「手持ちが3セット(80入)あるだけで、次回入荷は未定です」と。まぁラッキーだったと3セットとも注文。まぁ売れ残っても夏場ゆっくり売ればいいかな、と。
ちなみに平ゴムも、いつもは細い物が全然売れないのだけど、マスクを作るためにボチボチ売れてるし、白いガーゼハンカチも、プリントの内側に入れる用に売れてる。ガーゼマスクも中国製で入荷の目処が立たず、今は「お一人様一点限り」でちょっとずつ売ってる感じ。
・・・
ここにきてさらに、トイレットペーパーまで。
基本的には「マスクと材料が同じだからトイレットペーパーも無くなる」というデマが出所らしいけど、だからと言って棚にないものが湧いて出て来るわけじゃない。マスクはまだ作れるし、必需品じゃないけど、Tペーパーはそうじゃない。結局ホントにマスクと因果関係があるかどうかは関係無いんだよね。
無くなるなら買っておかないと。
それだけの話。オイルショックを僕は知らないのだけど、ここまで一瞬で情報が共有され、棚が空になるなんてことはなかったと思う。日本中で一気に品薄が進む感じ?
ウチの店は仲介問屋が入るので、いつもはTペーパーを置いておかないのだけど、朝イチで電話をしたら、「薄利で499円売り」なら何とか買えそうだったので、「12R入りW×120袋」を注文。金曜の時点ではまだ在庫があったとのことだけど、、、ホントに確保出来たかどうかは月曜になってみないとわからない。
僕は便秘で下痢なので、「便秘期」にはTペーパー消費が抑えられるけど、「下痢期」には爆増してしまう。消費を抑える為にも、下痢になりそうな飲み物、食べ物の摂取は抑えなければ。
・・・
いつもマスクを売ってる問屋にも情報を訊いてみた。
以前はベトナムで8月頃になる、と言われたが、どうやらそれも怪しいらしい。なぜかというと、「ベトナムで作るマスクの原材料も中国製」だから。そして中国はマスクに関係する物の輸出をストップしていて、さらにベトナム、台湾、韓国も、「自国優先」で輸出しないという。つまり、
マスクは自国でカバーしないとならない状況
でも、これまた驚くのは、その問屋に「日本製マスク買わないか?」と持って来た値段。
問屋「が」仕入れるのが1枚190円>小売り店頭50枚で15000円売価
それはさすがに無い。前述のユニチャームですら75円程度だったのが、1枚300円とか。どこの馬の骨ともわからない日本製が。
おーい、、って感じ。さらにバイヤーが萎えていたのは、
中国の港の倉庫には、「ウチのマスク」がコンテナで眠ってる
と言う話。コロナ前にオーダーし作られた品が、インフルエンザがあまり流行らず、「もうちょっと出荷を待ってくれ」と12月上旬に日本からストップを掛けたら、、、
まんまと中国の輸出制限に引っかかってしまったという。
中国政府から直接連絡が入り、「これを売ってくれ」と言われたとバイヤー。でもそれは話が違うと返答し、他の会社からも「何倍もの値段で買うから」と言われるらしい。他にもそう言う会社があるらしく、「コロナ前のものなら普通に売れるのに」って感じで悶々としているそうだ。
ちなみに、今、中国製のマスクは心配だと思ったけど、マスク工場自体は完全に無菌室で作られているので、安全面での心配は無いと言ってた。でも人情として「今中国製?」って感じは、どうしてもあるよね。
さらに言うと、使い捨てマスクに使われている不織布の原価も爆上がりしていて、さらに人件費もムチャクチャ上がってるのだとか。結局働ける人が少なくなれば、給料が高いところに行くのは道理。もしかしたら日本製マスク並の高額商品になってしまう可能性も、あるのかも知れない。
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深夜のコンビニ、3時のトラックに合わせて行けば買えるって話もあるし、ガーゼのマスクを洗って使う人も居る。一方でマスクは効果がない手洗いが何より重要って人も居るし、温度はいろいろ、対応もいろいろ。
でも、最後には「人間としてどうか」を忘れないようにしたい。
今朝若いお母さんが来てマスクはないかと尋ねられた。一応販売を止めていたけど、「今どのくらいストックがあるの?」と訊いたら、
「一枚もないので手作りをしています。せめて子供の分だけでも、、、」
確かにその方は手作りマスクをしていたし、言葉に偽りは見受けられなかった。おもむろに奥から「緊急事態用」を販売。たかが10枚だけど、気休めにはなる。
まぁ、何をするにしても、最後は自己満足、エゴでしかないことも、わかっちゃいるんだけどね。
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