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2021年11月 6日 (土)

ジオラマとデジラマ

「ガンダムジオラママスターズ」という古本をポチり、今日届いた。

ジオラマと言えばある種プラモの到達点であり、ガンプラブーム初期の頃から、その素材や技法を含め、羨望の眼差しで見ていた「様式美」だ。

事実、今でも心に残る作品は多く、当時のコンペでグランプリを飾った整備中の1/60ガンダムや、3分もシャッターを開けっ放しで取ったガンキャノン。迷彩のズゴックやザクのジオラマは、当時エアブラシ塗装も「未知の領域」だったキッズ達にとって「夢の作品」だったと思う。

最近では、なんと言っても「まんねん工房」さんのビグザムのジオラマが衝撃的で、

 感動すらした。

なので、1000円程度のこの本を僕が衝動買いしたくなるのも無理からぬことであったと思う。「最近」のプラモ雑誌にはとんとご無沙汰だったけど、

 どのみち20年くらいプラモを作ってこなかったのだ。

ちょっとやそっと昔の本でも、「僕にとっては十分最近」になると思った。

思ったのだが、、、

うーむ。

何というか、、、

一言で言えば、

 感動しない。

決して僕の作るデジラマが世界一優れていると言うつもりはない。プラモだってフォロワーさんの素晴らしい作品をお借りして作ったりもするし、合わせ目すら消してないものを使うことだってある。

でもなんだろ、「プラモなんだ」と思ってしまう。

今の僕は「リアルな情景」を「プラモを使って作る」のがトレンドだ。「リアルな情景模型を作る」のではないのがミソ。情景模型=ジオラマでは得られないリアリティを、フォトレタッチや高画質な壁紙、実際に撮影した風景写真を駆使して「演出する」。

 この本に載っている作品は確かに素晴らしい。でもそれは「素晴らしいジオラマ」であって、「素晴らしくリアルな情景写真」ではない。

載っているプラモはどこまで行ってもプラモで、本物には見えないし、実際の海を模したところでそれは海ではない。それっぽい塗装や加工をして「プラモの世界に再現した海」だ。

木々も然り。自然の素材を使うにしろ、人工で作るにしろ、1/1スケールの「実写背景」とは、その質感やスケール感は等しくはならない。

 ジオラマは、どこまで言っても「偽物の枷」を逃れられない。

もちろん世界がそれだけだったころは、それで何も問題はなかった。と言うか現状でもジオラマ作りを楽しんでる人は「デジラマ作りを楽しんでる人の何万倍も居る」だろうし、ミニチュアだからこそ得られるカタルシスも絶対にある。

 どちらが良い、悪いと言う話ではない。

ただ、

 自分にとってどっちが楽しめるか

と言う観点で言えば、正直ジオラマを以前ほどは楽しめなくなってしまったなぁと、この本のページをめくりながらシミジミと感じてしまった次第なのだ。

・・・

僕がデジラマを作り始めた当初、まだデジラマと言う言葉すら知らなかった頃、カトキ先生のガンダムフィックスのことを思い出し、

 今ならネットを探せばそう言う写真を投稿してる人も少なからず居るのではないか。

と思って見つけた写真が2枚ある。

一つはザクで、森の中を進軍している写真。もう一つはガンダムで、金網の向こう側を、これまた歩いている写真だ。

どちらも、「本物にしか見えない」点で共通していて、さらに「プラモの手前に物がある」点でも共通している。

ジオラマでは手前に物があるのはごく当たり前だが、実写を絡めてそう言う加工をした写真を見たことは無かったので、結構な衝撃を受けた。

思えば「その時」が僕の中で「ジオラマが崩れた時」だったのかも知れない。

価値観の中で「かっこいいと思えるガンプラを絡めた情景」が、完成度を高めたミニチュアから、実際の世界に居る「本物に見えるプラモ」に変わってしまった。

もう一度言うが、どちらが優れていると言う話ではない。

 誰にとってどちらが楽しめるか、と言う話だ。

正直インスタにジオラマを投稿されている人はそれほど多く無い。インスタに限って言えばデジラマの方が多いかも知れないくらいだ。

でもだからと言ってジオラマよりデジラマが優れているわけもない。技術と素材とセンスで仕上げられた最高のジオラマは、今の僕ですら「デジラマが追いつけない領域」を感じる。

 でも、作る為のコストは全く比較になるまい。

数年掛けて仕上げるジオラマと、長くても数十時間で仕上げられるデジラマ。お手軽な割に効果が高いと言う点で、非常に僕好みであり、また「伸ばせば手が届く」感じもイイ。

この本は2007年に発刊されていた。価格は税抜2000円。当時なら2100円くらいか。

今の流れがもし加速していくとしたら、あと数年でデジラマを題材にした本が発売されるかも知れない。てか僕が知らないだけでもう出てるのかも?

ただ、ジオラマと違ってデジラマにはひとつ大きな枷がある。

 背景写真に版権が存在するケースが多い。

自分で背景も撮っていれば問題はないのだろうが、宇宙だとか廃墟だとか、シチュエーション次第では自分で用意することがほぼ不可能な写真も少なく無い。商業利用でリリースする際に、それが問題になる可能性も少なからずあるだろう。

 デジラマは、インスタ程度の非営利だからこそ楽しめる娯楽なのかも知れない。

それでもそうした「本気のデジラマ写真集」とかがもしあるなら、3000円くらいまでなら出せるかな~なんてことを思ったりもするんだけどさ。

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