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2023年4月30日 (日)

自社が大きめな出費をするらしい

仕入れとか人件費とかは別として、普段使わない経費を使う話。つってもウチは地元密着の小さな服屋なので、「大きめな出費」と言っても100万円そこそこだ。

 ネーム刺繍の機械を買うことになった。

「ネーム刺繍」とはつまり、「学生用の体操服等に入れる名字の刺繍」のこと。ウチは学販もそこそこやっていて、同規模の小売店はほぼほぼ機械を導入しているという。

以前から問屋に「機械を入れてくれ」と言われていたが、そのための手間やリスク、当然コストを考えて、のらりくらりと回避していた。単純計算で10000枚分のネーム入れをしなければ元は取れず、例えば1人あたり長袖長ズボン半袖半ズボンを各2枚ずつ買ったとして8枚。小学生は長袖長ズボンの購入率が下がるので6枚平均として、ザックリひとり7枚とした場合、1428人分。一年間で注文頂く人数は、400人くらい?とすれば、3年半くらい掛かる計算だ。

 全てが順調だった場合だけど。

※学校がネーム刺繍を継続し、機械に大きなトラブルがなく、使いこなせる人間が健康を維持し、学校からの指定店としてシェアをキープし続けられた場合

さて、普通の人はそんな物を買おうとは思わないだろう。なので、それについて詳細に書き記すことは、「ほぼ全ての読者諸氏にプラスにはならない」わけだが、

 読者諸氏がひとりも居ない場合は、結果プラスにならなくても問題はない。

なので少し掘り下げて書いておく。備忘録的な意味会いもあるし。

メーカーはブラザーで、型番はPR680Wという。ネーム刺繍に特化したミシンで、特殊な行程とスキルがなければ、かわいらしい動物のアップリケを刺繍したりは出来ない。ただ、校章などのマークに関しては、販売店の協力のもと、刺繍できなくはないそうだ。

ちょっと面白いと思ったのは、「ネーム刺繍」と「通常の刺繍」の違い。前者は名前、後者は何でも刺繍出来るのだけど、ソフトウェアは前者の方が3倍近く高額
※30万と13万の違い
だったりする。なぜか。

 ネーム刺繍、つまり名前の刺繍は、「文字を文字として刺繍する」為。

絵柄の刺繍の場合、複数色を使うと使わざるとに関わらず、基本は「水平の繰り返し」で絵面が完成する。

しかし、ネームの場合、たとえば「十」という文字ひとつ取っても、「縦棒と横棒をそれぞれ刺繍する必要がある」らしいのだ。上から水平に文字を完成させると、それは「絵であって文字ではない」。簡単に言えば、

 文字としては汚いものが出来上がる。

当然画数が多く複雑な漢字であれば、その手順も複雑になるし、ソフトの負担も大きくなる。高いのには理由があるのだ。

刺繍ミシンはざっくり3段階あり、

・50万円コース 糸が一色しかセット出来ない、タッチパネルが小さい、本体の耐久力が家庭用ベースなので低い、張る糸のテンションが高く、生地が引きつりやすい、レーザーポインターが「点」

・100万円コース 糸は6色セット可能(+下糸)、タッチパネルが大きい、耐久力が高く本体の大きさも大きい、張る糸のテンションに柔軟性がある、レーザーポインターが十字なので位置を間違えにくい

・150万円コース 糸が10色。レーザーポインターが「シールで指定する」タイプで、生地の向きを合わせなくても(シールが合っていれば)、機械が自動的に角度を調整してくれる機能がある。他は100万コースと同じ

こんな感じらしい。一応ウチの店で使う可能性がある糸は6色だったので、必然的に100万円コースになるのだけど、機能的にもかなり魅力的に映る。

ちなみにこれらの説明は、販売店の社長がしてくれたのだけど、口調や知識全てひっくるめて、かなり信頼出来る感じだった。
※近隣の小売店はほぼその店で購入してるというのも頷ける

僕は疑り深いし、情報は徹底的に訊くタイプなので、事前に訊いたことをスッと応えて貰える人が販売店に居る、と言うだけでも、かなり心強いし、

 ネットで安く買うより「正解に近い」印象を持った。

・・・

刺繍にはパソコンが必須で、そこで文字を決め、USBなりWi-Fi経由なりで刺繍ミシンに転送する。生地に「枠」をはめ、セットして、あとはボタンを押して完成を待つだけ。

時間的には、刺繍だけで2分ほど。文字入力から出力終了まで5分ほどで出来るようになるらしい。1枚当たりの原価コストは1円未満で、今までネームを個別に依頼していた場合、税込で440円をお客様にご負担頂いていたことを思えば、
※ちなみに店の原価は440円ではない念のため。上の方で書いたのは120円計算だけど、120円と440円の間には「問屋のマージン」や「消費税」も含まれているし、「ミシン本体の価格以外にもソフトや備品も入る。あと3年の保守とかも。

既にお袋は買う気になっているのだけど、実際の運用には「パソコン」も必要になる。と言うことで、

 それは僕が考えて決めなければならない。

久々のパソコン購入。ちなみに刺繍ミシン側の推奨OSはWindows10か11。11の方が寿命は長そうだけど、PC側への要求スペックも高まる。実際やるのは「データを入力してミシンに送る」程度の作業なので、そこまでハイスペックなものは要らないはずだけど、

 だからって1万円の中古で大丈夫とも思いにくい。

まぁ安ければ壊れても気楽に買い換えればいいとも言えるけど。

ってことで、今視野に入れているのは、

●パナソニック レッツノート SV7

発売は2018年で、デフォルトのOSはWin10。ただ、11にもアップグレード出来るレベルのスペックらしい。中古の中には既に11にしているものもある。

画面は12.1インチで、重さが999g。光学メディアは使わないのであってもなくても構わない。個人的には無い方がいいけど、あればあったで使うこともあるかも知れないし、基本は据え置きでミシンの横に置いて使うので、他の用途はたぶん問われない。

 なぜレッツノートにするかと言えば、「丈夫で落としても壊れにくく、軽いから」。

職場で机からPCが落ちる可能性は低からずあるし、取り回しは絶対的に軽い方が良い。安いノート≒重いので、その一点だけでもレッツノにする意味がある。

問題はその価格とどこでどれを買うか、という選択。普段なら10円でも安い仕入れに一喜一憂するのに、分母が130万円だと、5万のにするか7万のにするかの違いが薄れて感じてしまう不思議。まぁそれなりに長く使いたいからこそとも言えるけど。
※ミシンは20年くらい使ってる人も多いので、それの相方もまた相応に長く使えるのは大前提なのだ

いろんな店があり、いろんな品が出品されているけど、当然「6万円」の中にも良い物も悪い物もある。表面にキズが付いているものもあれば、画面にキズが付いているものもあるし、バッテリーは80%以上と書かれていても、タバコを吸ってる人が使っていたかもわからない。分母からしたら誤差のレベルでも、

 PS5くらいの出費ではあるのだ。

SV7とは別に、タブレットとしても使えるものもある。重さは重くなるけど、タッチ画面ならマウスの需要を下げられるかも知れない。キーボードは名前入力上必須だけど、例えば読み方がわからない文字を手書き入力する場合は、マウスより確実にタッチパネルの方がやりやすい。

 ネーム刺繍をするのに特化したノーパソである必要があるのだ。

・・・

ちなみになぜ今になってネームを自社でやる気になったのかと言えば、

 最も多く学生衣料を取り扱っている問屋の、2社あるネーム依頼先が、3月に1社廃業し、さらに1学期で残る1社も廃業することが決まったから。

つまり、「ネームを入れてくれる人が居なくなる」可能性が高まった。

探せば地元でもネームを入れてくれるお店はあるかも知れないけど、毎回そこまで持って行ってやってもらう、待っててやって貰える時ばかりじゃないだろうし、毎回毎回行っていたらガソリン代だって無視出来なくなる。今後、通常の小売り業務が先細りしつつある中で、「大きな出費ではあるものの」、「必要な出費」と言えるかも知れないのだ。

てか、ここから先は余談だけど、、、

刺繍が自由にできるようになるなら、例えばTシャツやタオルに入れるのも有りかも知れない。自分で使えるロゴを作るのは容易ではないだろうけど、例えば「竈門丹治郎」と入れるくらいは出来るハズ。昔アイドルの名前のステッカーを学生カバンに貼るブームがあったりしたけど、例えば学生用のリュックに名前刺繍を入れるとか、これまでは入れてなかった給食白衣に入れるとかも、お客様が望むなら、やってやれなくもないかも知れない。

もう少し軽ければ(本体だけで38kg)、気楽に持ち運んで空いた時間にネーム入れとかも出来たんだけど、まぁそれはそれって話か。

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