道徳の時間
インスタに流れてた動画。それを文字で説明するのは難しいと思いつつ、、、
●あなたはどう思いますか?
山の麓にある城塞都市。都市目がけて山の頂上からひとつの巨大な岩が転がってくる。その岩をどこからか現れた巨人が食い止めようとするも、衝撃と重さで、ズリズリと後退(都市側に)してしまう。そして都市の一部を巨人の背中が破壊。それを見た都市の住人は、巨人に砲撃。巨人はカチンと来て岩を支えるのを止め、巨岩は都市を直撃。都市は全滅してしまう。
前にも見たことはあったけど、何となく考えるのが楽しそうと思ったので考えてみることにした。
・善悪
まず巨人は少なくとも善意で岩を止めようとした。これは間違いない。しかし、善戦むなしく都市は一部破壊されてしまう。「相手の善意に気付いたか気付いてないか」。
巨人が善意でやったことだとしても、言葉も通じない、得体の知れない巨大な「異物」が動いているだけで、そこに幾ばくかの恐怖、脅威は感じる。結果だけ見れば、「攻撃しなければ良かったのに」と思うかも知れないが、
相手が「都市を守るために岩を抑えているのか」は、都市の住人からは判断が付かない。
例えば、その岩を巨人が持ち上げ、都市の方に投げつけてくる可能性だって、きっと都市の人間は考える。
巨人を「巨大な悪」だと判断されたら、「善悪の意思がない岩」よりも、人間から見たら「危険分子」と受け止められかねない。
たまたま都市の一部が破壊され、何らかの人的被害があった分より「敵視」してしまった可能性はあるものの、もし壊されて無くても、人間達は巨人を攻撃した可能性がある。
言い換えれば、一部が巨人の体によって破壊された時点で、人間が巨人を攻撃「しない」と言う選択肢は、事実上無くなったと言ってもいい。
だが、
結果として巨人の機嫌を損ね、巨岩は都市を押しつぶしてしまう。文明の度合いは曖昧になっていたが、もし最新鋭の近代兵器を兼ね備えた「未来都市」であったなら、「巨人を破壊し、巨岩に押しつぶされる」という未来もあったかも知れない。ただ、少なくとも巨岩を防ぎきることが出来ない程度の文明レベルであったことは間違いないので、そこまで強力な武力、「巨人の力を借りなくても自分で自分の身を守ることが出来る程度の武力」を持っていたとは考えにくい。
逆に言えば、「自分達を守ることが出来ないレベルの災害」が「ふたつ」同時に訪れたとも言える。自分たちの武力で破壊不可能だった巨人と、一瞬にして押しつぶされてしまうほどの巨岩。お互いのコミュニケーションは難しく、意図が見えない巨人の行動。巨人は何もしなくても巨岩は都市を押しつぶしたし、
巨人に為された攻撃は、巨人を傷つけるには至らなかった。
ここでもし巨人を倒し、結果その向こうにあった巨岩が都市を押しつぶしたとしたら、人間の行為は、「人外生物の殺害」で、巨人の親切心は、自らの首を絞める自殺行為だったことになるが、巨人とて巨岩を抑え込める望みもなく、縁もゆかりもない(と思われる)人間達を助けようとはしまい。
巨人側の誤算は、抑え込めずに一部とは言え都市を破壊してしまったこと。
もし巨人が都市を壊さずに抑え込んだ場合、人間は先ほどとは違い選択を迫られる。
巨人の行動は「善意によるものかも知れない」。少なくとも敵意・悪意があるのなら、都市を襲う巨岩をせき止めたりはしまい。
ここでも文明のレベル、リーダーの判断力が問われる。
僕は政治にはとんと疎いが、もしリーダーがプーチンであったなら、彼は迷わず巨人を攻撃したのではないか。そして巨岩に押しつぶされたのではないか。
少なくとも巨岩は転がり始め、それを防ぐための手段を人間は講じなかった。それを踏まえた上で「都市から逃げない」というのも愚かと言えば愚かだが、その程度の文明レベル、判断力しかなかったと考えれば、、、
巨人が善意で巨岩をせき止めているとは考えないのではないか。
どのみち、
都市は破壊され、人類は滅亡する未来しか無かった。
これは誰が悪いと言うわけではたぶんない。
で、これは、今の地球に起こってる惨劇を「示唆している」可能性がある。設問は、
あなたはどう思いますか?
だ。相手の悪意善意を問わず、相手を攻撃することで結果自らの滅亡を招いてしまったと言うこの結末が、今の地球に対する人類の行動、例えば地下資源の採掘や、大気汚染、環境破壊が、地球に対する破壊行為だと「地球側が判断していたとしたら」、人類には滅亡の一途しかない。
戦争であっても、意図の見えない相手の行動に、自己判断で悪意を汲み取り、自らの首を絞める選択肢を選んでしまう。
巨人と都市、地球と人類、ロシアや北朝鮮、、、
コミュニケーションの取れない、価値観の違う者同士は、最終的にはわかりあえず、破滅を選んでしまう可能性が高い。
道徳の授業の着地としては、正直夢も希望もない。もしここから「希望のある未来」を目指すことが出来るとしたら、都市に住む人間たちはどうすべきだったのか。岩を攻撃?岩の足場を攻撃?巨人に流れ弾が当たれば同じことだろう。巨人を応援したとしても、その意図が敵意の現れと受け取られ兼ねない。
巨人と共に巨岩を押し返す手伝いが出来れば、、、
だが、一瞬で壊滅させるだけの「力」に、人間が出来ることはほとんど無いだろう。それでも、「岩をせき止めて人間たちの町を守ってあげよう」と「善意で動いた巨人」には、
大きくプラスの印象を与えるかも知れない。
人間は「蟻(アリ)」の巣を守るために何かしてあげることはない。蟻もまた人間の意図を汲むことはない。でも、もし人間が蟻のために何かをしてあげたとしたら、蟻もまた人間のために何かをしてくれるかも知れない。
自然界にはそんな共生関係を構築する生物が居る。
もし事前に巨人との共生関係が成立していたとしたら、何らかのコミュニケーションを取ることに成功していたとしたら、もしかしたらこんな結末にはならなかったかも知れない。
が、
残念ながら、今回それは叶わなかった。
もし次回があるなら、コミュニケーションを取れない相手に対して、問答無用で敵意を向けるのではなく、「歩み寄る努力」をすれば、もしかしたら違った未来に向かったかも知れない。
道徳の授業なら、それがたぶん「正解」だと思う。
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