墨東綺譚
「ぼくとうきだん」と読み、本来のタイトルは、最初の墨の文字に「さんずい」が付く。
2019年7月のブログで既に一度、それもたっぷりと思い入れを込めてこの作品に触れている。その時はネットフリックスであり、
何度見たかわからないくらい見たが、
一度は配信が終了している。
その頃から大好きで、評価は8点/10点とかなり高い。なんで今また触れているかと言えば、
UNEXTにあったから。
ただ、こちらも2023年9月30日で配信は終了してしまう。一応ダウンロードしたけど、配信が終わったら見られなくなってしまうだろう。
映画は1992年の物。永井荷風という作家のある種自伝的なフィクション。娼館で出会った「お雪」との出会いと別れを書いた作品を原作としている。映画は1960年に一度され、さらに2010年にもピンク映画として映画化されているらしいが、そのふたつとも見てはいない。
永井荷風は大正から昭和に掛けての作家で、舞台となる街並みもその頃のものと推測される。が、映画自体は1992年、僕が22歳でひとり暮らしをしていた頃の作品なので、
※もちろんカラー
全ては再現された「架空の街」だ。
既に一度は「これでもか」と作品に対する愛を綴っているので、もし気になる人はググって貰えば読むことは出来る。つか、今また同じことを書いてしまうのもどうかとは思いつつ、
今見ても、何ら色あせる事がない傑作だった。
まず何よりも、ヒロインであるお雪=墨田ゆきが素晴らしい。と言うか、当時のブログでもキレイとかカワイイとか書きまくっていたので、今回見返す前の「期待過剰感」がパ無かったのだけど、
見てみるとそこまでキレイでもないような、、、
だがしかし、ものの5分もすると僕の心はまんまと彼女に奪われ、ヒロインの評価だけで言えば、
★★★★★
と言ってもいい。
当時を思わせる(実際にその頃生きていたわけじゃないのであくまでイメージ)言葉遣いや所作、浴衣や着物の取り回し、おしろいで白く染めている顔にも厚化粧の野暮ったさはなく、かと言ってお嬢様のような場違いな感じでもない。
品があるのに娼婦という役柄がしっくりと来る演技をしている感じ。
特に笑顔は素晴らしく、劇中でも何人もの男が彼女の虜になっているのもまことに頷ける。その中にあって津川雅彦演じる主人公に特別な感情を抱いて、好意を高めて行く流れは、コメディではないラブストーリーとしても誠に素晴らしい。
綺麗な裸目当てで見始めても、気付けばそれ以外の彼女のシーンも全て、それも何度も見返してしまう。
拗ねた仕草やセリフもかわいいし、一挙手一投足全て監督の指示だったとすれば、監督のこの物語、このヒロインに対する理解度の高さを痛感せざるを得ない。
思わずDVDが出ていないか調べてしまったら、「無修正」で3500円ほどのものが出ていた。言っても1992年はそこまで古くもないのか、はたまた特定の「好き者」が居る作品だったのか。
※ちなみに無修正版は、劇中2度ほどぼかしが入るシーンのぼかしが無いだけとのこと。現行のAVだとヘアが解禁されていたりするので、その程度のものらしい。UNEXTもネットフリックスもぼかしは入っていたけど
前回の感想では触れなかったが、音楽も凄く良い。ある意味安っぽいAVのBGMと紙一重と思われるかも知れないが、とても情感があり、どことなく「モーレツ大人帝国の逆襲」や、「タイガーマスク」のような、昭和初期の雰囲気がある。どこかで耳にしたことがあるような気もするけど、存外それが何だったのか思い出せない。
少しサントラが欲しくなるほどだ。
・・・
今は、ニーズさえあればどんな似た作品であっても大量に量産される時代だ。異世界でもハーレムでも、類似品を探せば数限りないほどに見つかるだろう。
しかし、それはあくまでマンガやアニメ(あとラノベ)の話。実写映画ではそこまで似たものがあふれかえってるわけでもないし、言ってしまえば、
墨東綺譚のお雪のようなヒロインは、他に見かけない。
・よく笑い
・気さくで
・色白
・綺麗でかわいく
・人気の娼婦
・主人公が大好きで
※求婚するほどに
・品があり
・優しく
・嫉妬深くもある
・裸も綺麗でスタイルも良く
・キスシーンも情感がある
・別居していても両親と仲が悪いわけでもないし
・身を寄せている娼館の女将さんにも好かれていて、その息子にも好かれている
・言葉遣いもいい
※これは見て貰わないと伝わらないとは思うけど
およそ考えられる魅力的な女性のパーツを全てかき集めたような、そんなヒロイン。
もっとも、僕の年齢が主人公の58歳にかなり近いことが、より感情移入を高めさせた可能性もあるので、若い人にも額面通りにオススメ出来るとは限らない。ただ、
今見てもなお★★★★の満足感がある僕好みの傑作だったことは、強く伝えておきたい。
以前も何十回と見返したが、たぶん配信終了まで何度も見返すと思う。それほどまでに彼女の見た目と言葉は心地よく、津川雅彦の演技も紳士的で「居心地が良い」のだ。
ちなみに、ヒロイン役の「墨田ゆき」は、この映画から芸名をこれに変えている。それほどまでにハマり役でもあったし、思い入れも強かったのだろう。
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コメント
良いですよね〜
これは原作を先に読んでいましたが、より色濃く鮮やかに描いていて、何度も観たくなります。
墨田ユキさんは映画の前に大河ドラマにも出ていましたね。その時の芸名は忘れましたが💦
これを観ると流出したというAVさえ観たくなる魅力です。その時は雨宮時空子だったかなぁ……
あ、原作も良いので是非‼️
青空文庫とかで読めたかと。実体験をもとにしているので、玉の井の風景や雰囲気、描かれている風景も興味深いです。
投稿: 月ノ丞 | 2023年9月17日 (日) 00時37分
激しく同意です!AVとか写真集とかもめちゃ検索しました笑。でも多分この映画がピークだろうとも思って、限られた時間にしっかり目に焼きつけるかなって感じ。
原作にも興味がないわけではありませんが、文体が古いととても読めないだろうと思ってスルーです。ラノベみたいに気楽に読めるような「体」にしてくれたら、とも思いますが、それだと世界観が崩れますしね笑。
投稿: クリス | 2023年9月17日 (日) 08時38分